topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 頑張れ!女子サッカー 04/06/10 (木) <前へ次へindexへ>

 さらなる高みを目指して。


 文/西森 彰
アメリカ女子代表vs.日本女子代表
2004年6月6日(日)16:00キックオフ パパ・ジョーンズ・カーディナル・スタディアム 観衆:7,525人 天候:晴
試合結果/アメリカ女子代表1−1日本女子代表(前0−1、後1−0)
得点経過/[日本]荒川(20分)、[アメリカ]ワンバック(59分)


「また、30人くらい呼ぶんですか?」

 第1回SAITAMAフェスティバルを視察に来ていた上田栄治・日本女子代表監督に、5月合宿のメンバー構成を尋ねると「いや、20名。すぐにアメリカ遠征になるから、そんなに多くを選ぼうとは考えていません」という返事が返ってきた。故障中の澤穂希、それにU-19アジア選手権に転戦した永里優希のふたりが抜ける。そこに加わるのは予選前に行なわれたJヴィレッジの長期合宿に参加した25名のうちの誰かだろう・・・。

 アジア予選直前の合宿で最後の22名まで残り、アメリカ遠征のメンバーでもあった近賀ゆかり(日テレ・ベレーザ)の再選は、その意味で順当に映った。しかし、上田監督が「秘密兵器」として、北本綾子(さいたまレイナスFC)を抜擢することまでは読めなかった。予選を通じて期待以上の活躍を見せたFW陣の競争を、さらに活性化させる必要があるのだろうか。それとも、中盤以降のディフェンスが完成されている自信の裏返しなのか。



 今回の遠征ではFIFA女子ランキング2位で、昨年のワールドカップでは大本命として支持されたアメリカとアウェー戦を戦う。2日(水)に行なわれた練習試合では、選手交代無制限の30分3本を戦ってスコアレスドロー。小手調べを終えて戦う第2戦こそ、「強国と戦うために採用した」(上田監督)4バックが通用するかどうかの試金石だ。北朝鮮戦と同じ、4−4−2。澤の代わりに安藤梢(さいたまレイナスFC)がトップ下に入る。

 中盤の人数が一人多い日本は、各選手がバランスの良いポジショニングをとって、アメリカの3トップを後方の8人と寸断することに成功。序盤から優位に戦いを進める。16分、右コーナーキックから安藤のボレーシュート。19分にも右サイドを川上直子(TASAKIペルーレFC)と、荒川恵理子(日テレ・ベレーザ)のコンビネーションから、大谷未央のシュートを生み出した。

 完全にペースを掴んだ日本にゴールが生まれたのは20分。中盤でボールを持った宮本ともみ(伊賀FCくノ一)が、アメリカ最終ラインの裏を狙っていた荒川へ見事なピンポイントパス。完全に1対1となった荒川が右足で冷静に流し込んだ。オフサイドギリギリのポジションで我慢した荒川のポジショニングと、ボールを受ける前からこれを確認していた宮本の好判断が強豪からの先制点を呼び込んだ。

 1点をリードされたアメリカは、それほど焦った様子も見せず、左右の大きなサイドチェンジで日本の選手を走らせながら、機を伺う。日本は守備ブロックを左右に動かしながらこれにきっちりと対応して、前半終了の笛を聞いた。日本は1点のリードを守ったまま後半に臨む。



 アメリカは後半開始から4人の選手を代えてきた。両サイドバックにランポーン、チャスティンが入り、このふたりの攻撃参加でチャンスを増やし始める。これに対して日本は57分、安藤から、小林弥生(日テレ・ベレーザ)へのリレーが1枚目の交代。上田監督はテストを行ないながらも、勝負に拘った選手交代で、アメリカ戦初白星を取りにいく。

 しかし、そこはさすがにアメリカ。右サイドからのクロスを中央でミア・ハム、そしてワグナーとつなぎ、最後はワンバックがゴールをつなぐ。決してきれいな形ではなかったが、球際でふたつみっつと競り勝つことでこのゴールを生み出した。北朝鮮戦、そしてこの日の試合と日本の選手たちもボールへの一歩は明らかに早くなってきているが、本大会ではこのあたりが一層重要になるはずだ。

 同点に追いつかれた直後の決定機を大谷が外し、その後しばらくアメリカに押し込まれる時間帯が続いた。荒川から丸山桂里奈(日本体育大学)、山本から柳田美幸(TASAKIペルーレFC)といつものリレーを行ない、とにかく勝利を目指す。途中から入った選手を生かすよう、指示を送る上田監督。一番試したかったはずの北本は、試合終了直前の88分での投入になった。

 アメリカもミア・ハム、ワンバックに代えて、マクミラン、パーロウと前線のプレーヤーを入れて逆転ゴールを狙う。ロスタイムに放った酒井與惠(日テレ・ベレーザ)のシュートがゴールバーを直撃するなど、双方、幾度か勝ち越しのチャンスを迎えたが、1対1のドローという結果が残った。



 さて、今回の引分けをどう評価すべきか。シュート数で12対8(枠内シュート数は7対3)と上回り、試合内容でも五分以上に戦えた。アメリカのメンバーは、ほとんどが昨年のワールドカップに出場したメンバーで「二軍」ではない。5年前まで0対9とか0対7というスコアで負けてきた相手に、3戦連続の引分け。トップクラスとの差は詰まってきている。

 ただし相手に「テストマッチ」の意識が強かったことは否めない。ハーフタイムに行なわれた4枚の交代には、ゴールキーパーも含まれていた。単に勝利を狙うだけなら、こんなテストはしてこない。本気で勝ちにいった日本に比べて、まだまだ余裕を残しての引分けなのだ。それでも、勝ちきることはできなかった。五輪で1勝もしていないチームが、ひとつの親善試合の結果だけで「金メダルの可能性」を云々することはできない。

「もっと詰めていって、メダルを狙えるところへ行けたら良いと思う」

 現状を正しく認識しているような、ゲームキャプテン・磯崎浩美(TASAKIペルーレFC)の試合終了後の言葉に、ちょっぴり安心させられた。自分たちの力を正しく認識してトレーニングに向かえば、頂を目指す戦いに加わることもできるかもしれない。何しろ「アメリカとの引分け」という過去最高の高みに、以前よりも楽に到達したのは確かなのだから。


(アメリカ女子代表) (日本女子代表)
GK: スカリー(46分/ラッケンビル) GK: 山郷のぞみ
DF: ミッツ(46分/ランポーン)、ファウセット、レディック(46分/チャスティン)、マークグラフ DF: 川上直子(88分/山岸靖代)、磯崎浩美、下小鶴綾、矢野喬子
MF: ファウディー、ボックス、リリー MF: 酒井與惠、宮本ともみ、山本絵美(75分/柳田美幸)、安藤梢(57分/小林弥生、88分/北本綾子)
FW: タープレイ、ワンバック(72分/パーロウ)、ミア・ハム(72分/マクミラン) FW: 荒川恵理子(68分/丸山桂里奈)、大谷未央
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送