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 頑張れ!女子サッカー 04/10/14 (木) <前へ次へindexへ>
熊本イレブンと女の子たち。
岡山湯郷イレブンと男の子たち。

 岡山湯郷、熊本を大差で降し、L1へ向けて加速。
 L・リーグ2部 第12節 ルネサンス熊本FC vs. 岡山湯郷Belle

 取材・文/西森彰
2004年10月10日(日)12:00キックオフ 七城町運動公園 天候:晴
試合結果/ルネサンス熊本FC0−9岡山湯郷Belle(前0−4、後0−5)
得点経過/[岡山湯郷]泉(3分)、中田(16分、60分)、佐藤(28分)、宮間(44分、54分、72分)、中川(55分)、加戸(89分)


 2000年は12試合、2001年は13試合、昨年は16試合を戦って全て黒星。2002年に10試合中YKKフラッパーズとジェフユナイテッド市原レディースからもぎ取った2つの引き分け以外は黒星で塗りつぶされたルネサンス熊本FCの星取表が今年は賑やかになっている。第4節、市原を相手に初勝利を挙げると、市原、清水第八に勝利を重ねて既に4勝。「女子サッカーのハルウララ」と揶揄された面影は薄れつつある。

 サッカーは番狂わせが起こりやすいスポーツ。かなり力に開きがあっても、長期間の負けっぱなしは滅多にない。熊本に欠けていたのは「勝利」という成功体験。1つの白星が自信をつけさせ、新たな勝利を呼び込む。そしてその積み重ねがチームをさらに強くさせる。1ヶ月の中断期間が明けると、昇格戦線を戦うアルビレックス新潟レディースに1対2、ASエルフェン狭山にも0対0。完全にサッカーの試合になっている。

「上の3つには5バックで戦って、何とか引き分けを拾う。互角の力のチームと対戦する時は4バックで勝利を目指す」と、新潟戦後に説明してくれた熊本の山形秀晴監督。だが、ここ数戦の試合内容に手応えを感じていたのだろうか。L2のトーナメントリーダー・岡山湯郷Belleに対して4−3−2−1で立ち向かったのだ。しかし・・・



 勝負事はある程度、自信を持って戦うことで好結果が生まれるケースが多い。林田美由紀を先頭に、寺澤希、佐藤恵理子が3トップ気味に挑む熊本に、岡山湯郷のディフェンスはキックオフ直後、戸惑いを見せた。ただし、それも試合開始から15分程度のもの。泉紀子の先制点に続き、16分、中田麻衣子の追加点が記されると、熊本の選手から積極性が影を潜め、重心がどんどん後ろにかかってしまう。岡山湯郷は、宮間あやの配球で左右のスペースに飛び出す泉と安田邦子から、いくつもの決定機が生まれた。

 だが、28分に宮間の左コーナーキックから佐藤シェンネンが得意のヘディングで3点目を奪っても、岡山湯郷の本田美登里監督は不満だった。表面上は快調に攻めているように見えても、選手のプレーから違和感を感じ取っていた。「(田中)静佳は中田(麻衣子)にパスを出すんだけれど、中田は静佳に出さないんですよ。だから試合中にコーチと言ってたんですよ。『まとめていっぺんに代えるか? そうしたらどっちからも文句は出ないだろう』って(笑)」。

 前節、新潟に勝って昇格を決定的にした岡山湯郷は、得点王争いのタイトルも前線の選手が競っている。名門・常盤木学園に入学後にサッカーを始めた中田は、勝気な性格のストライカー。大柄な体でポスト役もこなす田中はやや控えめな性格らしいが、それでも個人タイトルが欲しくないわけがない。そんな空気が伝染したのかもしれない。エースの宮間は気を遣ったのか、他の選手にひたすらスルーパスを通し、自分で打てるシーンでも横に叩く。

「(気を遣っていた?)うーん、まあそうですね。自分の中では、試合の前半、自分で得点するイメージが全然沸かなかったんですよね。だから周りにはたいて」(宮間あや・岡山湯郷)



得意のヘディングで佐藤(白・19)が3点目をもたらす。
岡山湯郷の攻めと熊本の守り。一方的な展開になった。
 得点王争いの当事者でもある宮間だが、タイトル争いには拘らないかのようにシュートシーンを見送り続け、観戦者と相手の裏をかいた好パスをチームメイトに通しまくる。宮間自信は「それが取り柄なんです。それくらいしかできないんで」と謙遜していたが、隣で観戦していた鈴木保L・リーグ事務局長の「全く別のレベル」という評価に頷くばかり。それゆえに、指揮官のフラストレーションは頂点に達しようとしていた。

「ハーフタイムに戻ってきたら、一言、彼女に言おうと思っていたんですよ。そうしたら、前半の最後にあのシュートを打ったでしょ」(本田監督・岡山湯郷)

 本田監督の怒りを冷ましたのは、ハーフタイム直前、センターサークル付近から放った超ロングシュート。「ツツツと行ったら、誰も寄せてこなかったんで。ゴールキーパーの位置を見て打ちました」という宮間。左足で放ったシュートは、ゴールの右隅にきっちりと飛び込んだ。「得点王にはこだわりがありませんね。変な人間なんで(笑)。『(タイトルには)こだわれ!』って言われるんですけれどね」。

 1つ決めて吹っ切れた宮間は、後半54分、右サイドのスペースを20メートルほど持ち上がり、ドリブルシュートで自身2点目。その1分後には交代出場の中川理恵が、相手のお見合いをさらって流し込む。60分には中川が右からアシストしたボールを中田がこの日2点目をゲット。72分に混戦のリバウンドを叩き込んで、宮間がハットトリックを達成する。試合終了直前に、北岡幸子と奥村紗代が頭をぶつけて負傷退場し、変な間が生まれた後のロスタイムにも途中出場の加戸由佳が決めて、岡山湯郷のスコアは9まで積みあがった。



 中断以降の4試合で好結果を積み上げていた熊本にとっては、お灸を据えられたような大敗だった。ゲーム終盤に佐藤恵理子、寺澤からいくつか良い形が生まれていたが、つけられた点差を考えれば、合格点を与えられない。2点目を奪われてから顔をのぞかせたメンタルの弱さを克服できればL2中位の定着、そしてL1昇格戦線への参入も見えてくるだろう。

 熊本の強みは、この日、声援を送り続けた子供たちを含めて、未来を担う若い力が芽生えていること。4年間、片目が開かずとも戦い続けたことが、今年大きな報酬につながった。次は、もう一歩上に目を向けよう。この日、稽古をつけてくれた岡山湯郷は、目指すべきモデルケースだ。



 岡山湯郷にしても上で戦うためにはまだまだ必要なものがある。「今年の大原(学園JaSRA)を見ていると『いきなり上がらなくて良かったのかな』という思いもあります。とにかくL1の戦いに慣れるまでの一巡目が大変だと思います」。そう本田監督が言えば、「このままL1に上がっても5位か6位。4位を目指したいので、そのためにはしっかり良い準備をしなければ」と宮間ら選手たちもよりいっそう努力する必要性を感じている。

「がんばりなっせ!!」の声も大きくなってきた。
 L1とL2の最も大きな違いは個々の戦闘力だ。激しい当たりに倒れなかったり、倒れてもすぐに追いかけたり。体力面だけでなく、ひとつひとつのプレーへの執着心が違う。「TASAKI(ペルーレFC)と練習試合をすることだったり、男子の高校生と真剣勝負をしたり」(宮間)一歩ずつ、差を詰める岡山湯郷は、シーズン終了後の11月に宝塚バニーズレディースSC、さいたまレイナスらL1勢と、毎週のように練習試合が組まれている。このチャレンジシリーズをクリアして全日本女子で好成績を残し、その余勢を駆って・・・。そうなれば、面白い。












(ルネサンス熊本FC) (岡山湯郷Belle)
GK: 野添七美(63分/河島佳奈) GK: 福元美穂
DF: 倉本直子、安部友美、奥村紗代、松元ゆみ子(51分/倉本慶子) DF: 赤井歩、藤井奈々、佐藤シェンネン
MF: 高橋桃子、島田佳由子、橋田実佳(72分/田代弘美)、佐藤恵利子、寺澤希 MF: 安田邦子(46分/中川理恵)、福原理恵、北岡幸子、泉紀子(76分/杉本あすか)、宮間あや
FW: 林田美由紀 FW: 中田麻衣子(60分/加戸由佳)、田中静佳
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