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 頑張れ!女子サッカー 04/10/06 (水) <前へ次へindexへ>
高槻イレブンと子供たち
TASAKIイレブンと子供たち

 笑顔無き勝利、手応え感じる敗戦。
 L・リーグ第10節 スペランツァF.C.高槻vs.TASAKIペルーレFC

 取材・文/西森彰
2004年10月2日(土)16:30キックオフ 万博記念競技場 観衆:1,500人 天候:曇
試合結果/スペランツァF.C.高槻0−3TASAKIペルーレFC(前0−2、後0−1)
得点経過/[TASAKI]柳田(13分)、鈴木(42分)、土橋(50分)


 一方的な試合展開になった大阪ダービーの試合後、ガンバ大阪の選手たちがファンからの歓声に応えて挨拶する。ホームチーム快勝の余韻が残る万博記念競技場のピッチに、スペランツァF.C.高槻、TASAKIペルーレFC両チームの選手たちが姿を現した。ブルーの高槻、ピンクのTASAKI。奇しくもユニフォームは大阪ダービーと同じだ。

 なでしこジャパンブームの余燼だろうか。Jリーグの試合からそのまま居座ったメインスタンドの観客に、ゴール裏やバックスタンドから階段を上って移動してきた人波が加わり、中央部分から埋めていく。公式発表観客数は約1,500人。この人数カウントがどの時点でのものかは分からないが、キックオフの段階ではもう少し大勢いたようにも思う。Jリーグの後座試合としては、まずまず及第点の入り。

「ちょっと緊張している子もいました。若い子とかが『またこういう場所でやりたい』と思ってできたら良いなと思います。本当に良い経験をさせてもらったと思います」(福永亜紀ヘッドコーチ・高槻)

 両チームの選手たちと入場してきた子供たちも嬉しそうだ。



 和やかなセレモニーの終了後、ピッチ上の22人はスイッチを切り替える。3試合連続で零封負けを喫している高槻。連覇に向けて、もう1つも落とせないTASAKI。どちらも尻に火がつけられている。

 立ち上がりは互角に渡り合った両チームだが、10分過ぎからTASAKIがペースを掴んでいく。攻撃の起点になったのは、トップ下で先発した柳田美幸。TASAKIの仲井昇監督が「もう少し、意識を前向きに持ってもらえれば良いんですが…」と評した佐野弘子の前にあるエリアに流れ、高槻DFの連携をかく乱する。先制点も柳田が入れたボールを土橋優貴が拾っての二次攻撃から。最後は柳田が決めて、TASAKIが13分という早い時間帯で1点目を入れた。

 その後も土橋が積極的に駆け上がる右サイドと、前線の選手が代わる代わる流れこむ左サイドからアーリークロスを放り込み、高槻ディフェンスをガードの上から殴りつける。カウンターで対抗する高槻は、攻撃時には1トップの上辻佑実の横まで、右の鳥越恵が上がって変則2トップのような形を作る。2トップがTASAKIの3バックを釣って、19分には中鍋美里からトップ下の阪口夢穂まできれいなスルーパスが通った。しかし、ここはTASAKIのGK・大西めぐみが好セーブで難を逃れる。

 逆にTASAKIは、42分、右CKのチャンスからリバウンドを2度3度と拾った波状攻撃を展開。最後は鈴木智子が2点目を叩き込む。「前半、ウチのほうにも1、2本チャンスがありましたし、決して悪くありませんでした。それを継続してやれることと、最後のフィニッシュまでいける精神力ですね。最後は決定力の差です」と福永ヘッドコーチ。前半は逆転優勝に向けて可能性の糸を紡ぐTASAKIが「最後の一歩」の違いを感じさせた。


柳田(10)対下小鶴(4)。なでしこジャパンメンバーの対決。
突如として巻き起こった拍手が高槻を後押しする。

 このゲームでは勝ち点3だけでなく、圧倒的なゴールディファレンスも記録しておきたいTASAKI。後半も左右にボールを散らしながら、高槻のゴールに迫る。そして完全に相手陣内でのハーフコートゲームに持ち込み、50分、左サイドからのクロスをファーに詰めた土橋が決めて3点目を奪う。「今季の中では一番良かったと思います。ただ、得失点差で追いついておかないと…」(磯崎浩美・TASAKI)

 昨シーズンまではTASAKIが消耗戦に持ち込むと、足が止まってしまった相手はズルズルと追加点を加えられていっていた。しかし、今シーズンはそういった場面が減ってきている。「(『対戦相手も良く走りこんできているようです』)はい、それは実感しています。間違いなくそれはあると思います」(仲井監督)。フィジカルの差を諦めず、各チームが地道なトレーニングを重ねてきた結果だろう。

 この日も今シーズン、再三見られるパターンになった。「攻め疲れですね。3点目を取ってから、なかなか点が入らなくって、みんなが焦って前にかかったから、しょうがないです」(磯崎)。後半も半ばを過ぎる頃から、徐々にTASAKIの運動量が落ちていき、逆に高槻の選手の動きが良くなっていく。福永ヘッドコーチも67分に小中山咲子、73分に小野村亜矢と次々にアタッカーを投入し、ゴールを狙う。

 そして高槻の選手の背中を押すように、ファンの歌声に合わせて万博記念競技場の観衆から手拍子が起こった。確かに高槻のジュニアチームの女の子たちもいた。選手の家族もいただろう。だが、そのほとんどはL・リーグを初めて見る人たちだった。(女子サッカーを見始めて年数が浅い私が言うのもなんだが)あれほど多くの人たちから手拍子が起こったのは記憶に無い。

「(『公式発表は1,500人でした』)そんなに入ってましたか。嬉しいですね。良いプレーをした時に、『わー』とか、スタンドから大きな声援があがったり、拍手が起こったりすると、やっているほうも張り合いがありますから。あれだけ足を運んでもらったので、もう一回来てもらえるようにプレーできたらと」(下小鶴綾・高槻)。

 何とか声援に応えたい高槻は、TASAKIのゴールを1度ならず脅かす。79分、後方から送られたループ気味のパスが、TASAKI最終ラインの裏に落ちる。死角になった左サイドから中に流れた相澤舞衣がフリーで放ったシュートは僅かにゴールの外へ。85分にも、左からのセンタリングを受けた阪口が、TASAKIのDFを引き付けておいてフリーになった小野村へはたく。しかし、この1対1も最後は当たりまくるGK・大西の餌食に。終盤の猛攻及ばず、高槻は4節連続の完封負けを喫した。



高槻も終盤には数回の決定機を得た。
メインスタンド中央部から埋め尽くされていった。
 高槻の福永ヘッドコーチは開口一番に「やっぱりTASAKIは強いですね」。そして「体力で負けている部分があります。ただし、やっているサッカーは間違いないと思う。それを継続して90分できるようにならなくちゃいけませんね。確かに試合スケジュールは立て直しにくいものになっていますが、それは決まっていることなんで」とこの4連敗で自分たちのサッカーを見失わないよう、自分自身にも言い聞かせている様子。

 最終ラインから、きちんとビルドアップする今年のスタイルは見る側も面白い。後は福永ヘッドコーチが言うように、90分間続けられるかどうかだ。良い時間帯、悪い時間帯の波が激しすぎる。逆に言えば、まだまだポテンシャルを秘めているはずだ。庭田亜樹子、久山暖香ら、戦線離脱中の攻撃陣が下位チームとの対戦に復帰してくれば、あと2つ3つ白星を積み重ねることは決して難しいことではない。

 そして、レベルの高いプレーを追い求めるのと同じくらい、多くのファンに足を運んでもらうことが重要だ。この日、ナイター照明が入るまで残ってくれたファンをどこまでリピーターとして取り入れることができるか。数百人の手拍子はあくまで「第一歩」である。



 敗れた高槻に幾つかの好材料が見えた一方で、勝ったTASAKIには重苦しいムードが漂っていた。「(『後半、ポンポンと2つ勝ちましたが』)いや、全然ダメですね…。今日は90分できるかどうかだったんですが、それができた以外には…。全くチームに貢献できなくて申し訳ないです。内容もイマイチなんで」。負傷明けのコンディションもあって納得いくプレーができなかった川上直子は、厳しい表情で自分を責める。

「だんだん意識も揃ってきていると思う。3点目から止まっちゃったんで。ただ勝つだけでなくてどれだけ得失点差を詰めるかもあったんで。ただ勝ち点3を積めば良いっていうのなら、それでも良かったんですけれど。すべて、前期に私たちが自分で苦しくしちゃっているんで」(磯崎・TASAKI)

 対戦相手も60分間くらいは、TASAKIと五分に走れる持久力が付いている。序盤のラッシュをやり過ごし、足が止まったところから反撃。どのチームも狙いは一緒だ。TASAKIが苦しいのは、相手の狙いが分かっていても、キックオフからフル回転しなければいけない勝ち点状況に追い込まれていること。磯崎が言うように「ただ勝ち点3を積めば良い」なら、充分にこなせるのだが…。

「明日、(日テレ・ベレーザが)コケてくれんかな?(笑) YKKさんも、伊賀さんもそれを期待できるだけのものは持っているし」とTASAKIの仲井監督。10月17日(日)にさいたまレイナスFC、10月31日(日)に日テレ・ベレーザと、直接対決を残している。だが日テレがこのまま着実に勝ち点を上乗せしていけば、最終戦の直接対決が消化試合になってしまう。それでも、追う側は相手がどこかで取りこぼすと信じて、自分たちにできることをやり遂げるだけだ。待つ身は辛い。


(スペランツァF.C.高槻) (TASAKIペルーレFC)
GK: キャロライン・メリー・ウォルシュ GK: 大西めぐみ
DF: 中鍋美里(86分/中江真紀)、奥田亜希子、下小鶴綾、高見恵子 DF: 磯崎浩美、白鳥綾、甲斐潤子
MF: 鳥越恵(73分/小野村亜矢)、高倉麻子、松田望、相澤舞衣、阪口夢穂 MF: 土橋優貴、川上直子、新甫まどか、佐野弘子(74分/渡辺千尋)、柳田美幸
FW: 上辻佑実(67分/小中山咲子) FW: 山本絵美、鈴木智子
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