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 webnews 03/06/04 (水) <前へ次へindexへ>
チームの色を出したサッカーと自信
2003Jリーグ ディビジョン2 第15節 大宮アルディージャvs.水戸ホーリーホック

2003年5月31日(土)14:00キックオフ さいたま市大宮公園サッカー場 観衆:1.357人 天候:雨
試合結果/大宮アルディージャ1−3水戸ホーリーホック(前0−0、後1−3)
試合経過/[水戸]フランク(52分)、トゥーリオ(54分、PK)、樹森(78分)、[大宮]斉藤(81分)


取材・文/砂畑 恵

 季節外れの台風の影響で大粒の雨がピッチを叩く。湿度もかなり高いのか、カッパの下は仄かに汗ばむほど。観戦には到底よい条件とはいかないが、この試合を私は楽しみにしていた。なぜなら大宮に別の台風・ホーリーホックがやってきたからである。

 昨年までのホーリーホックと言えば、J2の下位に沈んで、ことさら目立つチームではなかった。今シーズン前にしても、サポーターを除けば、そのサッカーに期待を抱く人も少なかったに違いあるまい。だがホーリーホックは第14節を終って、首位独走のサンフレッチェを追う第2集団に、アルビレックスやフロンターレといったチームと名を連ねているのだ。ホーリーホックの活躍はいい意味で周囲の予想を裏切り、リーグ前半戦の台風の目となって楽しませてくれている。

 そのホーリーホックが大の苦手としているのが、この日の対戦相手であるアルディージャなのだ。過去の対戦成績は11戦して2勝8敗1分。アルディージャのホームである大宮サッカー場では5戦して、ただの一度も勝っていない。しかし、そのアルディージャも現在7位。本来の実力から言えば、ホーリーホックのいる順位にいなければならぬようなチームであるが、怪我やサスペンデッドによりベストメンバーが組めず、不本意な成績に甘んじている。

 そんなアルディージャにすれば、お得意さんのホーリーホックに勝って大宮不敗神話を継続し、ここまでの悪循環を断ち切りたいはず。そしてホーリーホックにとっては苦手意識があるアルディージャに勝ってこそ、これまでの成績がフロックでないことを証明する機会となる。そんな意味がこもった試合だった。



 ところが前半の両チームの闘いは拍子抜けするくらいに凡戦だった。この大宮サッカー場は芝を長めに刈っていることもあって、水を含んだピッチは重馬場状態。横殴りの雨も足を引っ張り、選手の動きは鈍い。9分に小野のミドルシュートがポストに阻まれ、ホーリーホックが先制の機会を逃せば、アルディージャは33分に氏家のクロスからのこぼれを斉藤がゴールしたかに見るも、GKの前に味方が残っていてオフサイドとなり取り消される。それ以外は見どころらしい見どころはなかった。

 ただ試合展開を振り返れば、ホーリーホックはトラップミスやオフサイドでチャンスをフイにはしたが、小野がポストになり、樹森がDFの裏を狙うなど、手数を掛けずにゴール前にボールを運ぼうとする意図が感じられるサッカーをしていた。

 それに対して、アルディージャはボールポゼッションは高いが選手の動き出しがない為、ボール保持者はパスの出し所を捜して悪戯に時間を掛けてばかり。結局はホーリーホックが守備を整えてしまい、横パスや後ろに戻すしかなくなるといった状況に陥る。チームとしての攻めのコンセプトは不明瞭。同じく内容に不満は残ったと言っても、質的には両チームは対極にいた。



 ホーリーホックの前田監督は、後半の頭からフランクを投入して打開策を探る。そのフランクは投入されてから7分後、いきなり結果を出した。トゥーリオのパスを受けた小野が右サイドの秦にボールを預ける。その秦が素早くクロスを入れる。前線に上がったトゥーリオを警戒するアルディージャの選手に対し、フランクがスルスルとニアに走り込み、ちょこんコースを変えてゴールを決めたのだ。

 このフランク、得点を決めたばかりではなく、他にもチームに効果をもたらした。ホーリーホックは小野のワントップなのだが、山崎と樹森を高めに張ることで実質的には3トップとなる。よって後方からのロングボールをこの3人でゴール前へと運ぶシンプルな攻めとなるわけだが、時に単調なリズムに陥る欠点も内在する。その欠点をフランクが未然に防いだのだ。

 山崎からスイッチしたフランクは、前線から引いてボールを受けてワンクッション置くことで、回りの選手が動くタメを作った。これによりディフェンシブハーフのパンチョや秦が上手く絡んで攻撃の幅が広がったからだ。その上、前でキープ出来る分、ディフェンスラインも押し上げやすくなり、守勢に回っても早目にアルディージャの攻撃の芽を摘むことに成功。トゥーリオを中心とした手堅い守備がより一層、強固となる。

 そんなホーリーホックの78分の3点目は圧巻だった。自陣深い位置でのアルディージャのFK。ゴール前でトゥーリオがヘッドで跳ね返す。ボールを拾ったフランクは一目散にアルディージャゴールを目指してドリブルを開始。パンチョもフランクに平走する。フランクはアルディージャの選手2人に囲まれながら粘ってパンチョにボールを渡すと、アルディージャゴール前で内から外に開くようにしてパンチョのスルーパスを受けたのだ。
 後追いのDFの注意はフランクにだけ向けられ、引き寄せられる。が、フランクは中央にボールを折り返す。樹森がフリーでそのボールを待ち構えていた。その後、アルディージャに1点返されたが、ホーリーホックの完勝。大宮サッカー場での初勝利を挙げた。



 この試合を通して感じたことは、調子が振るわない前半も、交代により活性化して3得点を挙げた後半も、ホーリーホックは一貫して自分達のサッカーの色を出そうとしていたということである。出来るだけタッチ数を少なくしながら、相手ゴール前にボールを運ぼうとする姿勢。前線に顔を出す選手のタイプもそれぞれが違っていて、役割分担がはっきりしている。特にこの日、PK奪取に加え、1得点を記録した樹森のDFの裏を取る動きは、とても興味が引かれた。また小野というチームの得点を稼ぐ大黒柱のFWもいる。トリッキーさはなくとも、単純なその型に相手をはめてゴールを奪う壮快感がこのチームにはある。 

 更に守備は統制が取れており、高さもあってそう簡単には崩れない。その中でも、リベロを務めるトゥーリオのポジショニングの良さと、機を見た攻撃参加には胸がときめく。チームもトゥーリオを自由にさせて、その特徴を存分に引き出そうとしているようだ。ただ敢えて苦言を呈せば、島田の動きに釣られて外に引き出されてしまったことが原因の一端となって失点を喫したり、敢えてリスクを負う必要のない時間帯で攻撃参加を試みたりと、まだ若さが見受けられる部分もある。試合を積み重ねていくことで、さらに大きく羽ばたいて欲しいものだ。



 さて、負けて大宮サッカー場での不敗神話が潰えたアルディージャ。後半の終盤は斉藤のゴールに伊藤の惜しいヘディングシュートもあって、得点を取ろうとする意地は見せたものの、最後までアルディージャらしいサッカーを感じることは出来なかった。
 3ラインの独特な陣形に、守備は大崩れせずに、かといって大勝もしない。勝っても負けても1点差ゲームが多く、派手さはなくともコツコツと積み上げるサッカー。それが、ここ数年のアルディージャらしいサッカーだった。

 しかし、この試合を見る限り、ボールを持ったもの任せで、周囲の選手の動きが少な過ぎる。今のアルディージャは迷いの中にいて、誰かを活かそうとか、ここで自分が踏ん張ればといった気持ちが伝わってこなかった。なにも昨年までと同じフォーメーションのサッカーをしろとは言っていない。ただ、昨年までは3ラインを保つ意識を常に持ちつつ、各々の選手が献身的に攻撃に守備にと動き、自分達のサッカーに自信を漲らせていた、あの心の踏襲をして欲しいのだ。

 ホーリーホックの選手は自分達のサッカーに自信を持ち始めている。しかし、その自信を維持する為に、自分がなすべきこと、そして回りの選手がどうして欲しいのかを理解して、懸命の努力を払っている。それならば、アルディージャのサッカーはどんな色であるのだろう?それは考えるだけでは見つからない。がむしゃらに動いてみて初めて見える色もあるのではないだろうか。アルディージャらしい色を取り戻せば、そのあとにきっと自信も蘇る。J2は長丁場、アルディージャらしいサッカーを復活させ、リーグをもっと面白くしてもらいたい。


(大宮アルディージャ) (水戸ホーリーホック)
GK: 安藤智安 GK: 本間幸司
DF: 氏家英行 トニーニョ 木谷公亮 岡本隆吾(69分/島田裕介) DF: 小川雅己 トゥーリオ 森直樹
MF: 大塚真司 安藤正裕 斉藤雅人 原崎政人(57分/黒崎久志) MF: 秦賢二(82分/木澤正徳) パンチョ 栗田泰次郎 冨田大介 樹森大介(86分/上園和明) 山崎理人(45分/フランク)
FW: 伊藤彰 磯山和司(82分/横山聡) FW: 小野隆儀
SUB: 荒谷弘樹 松本大樹 SUB: 鏑木豪 吉田賢太郎
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