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 webnews 03/12/17 (水) <前へ次へindexへ>
明暗を分けた「間」、10人のスペイン延長でカナダを下す。
FIFA World Youth Championship UAE2003 準々決勝 カナダvs.スペイン

2003年12月12日(金) 18:00キックオフ モハマド・ビン・ザイード・スタジアム(アブダビ) 観衆:15.000人 天候:晴
試合結果/カナダ1−2スペイン(前1−0、後1−0、延前1−0)
試合経過/[ESP]イニエスタ(35分)[CAN]ヒューム(53分)[ESP]アリスメン
ディ(95分)


文/砂畑 恵

 スポーツには「間」の生じるものがある。例えば野球、打者がバッターボックスに立つ時、投手と捕手がサイン交換する際の「間」があり、通の人にはそこに心理劇があり、楽しいのだと言う。サッカーにもセットプレーや選手交代などで「間」が生まれる。そしてその「間」は時として、「魔」に姿を変え密かに登場シーンを待っていたりする。



 準決勝のカナダ対スペインはモハマド・ビン・ザイード・スタジアムにて行なわれた。大会用に新設されたスタジアムには、同時刻にラシッド・スタジアム(ドバイ)で地元UAEの試合が行われていたにもかかわらず、多くの観客が詰め掛けていた。
 カナダというと元レッズのオジェック監督が代表を率いたこともあり、外国人指導者を招聘するなど、サッカーでは歴戦の勇士というより、技術向上に努めている発展途上の国。C組で3位となり、各組3位の成績上位に残された予選通過の椅子を16番目ギリギリでゲットし、ラウンド16ではブルキナ・ファソに1点を守り切り準々決勝に駒を進めた。

 対するスペインはこの大会の優勝候補とされるチームの1つ。グループリーグでは、優勝候補として名が挙がるアルゼンチンと初戦で当たり1−2で落としたものの、それ以降は失点を許さず順当に勝ち星を重ねてB組2位でリーグを終える。決勝トーナメントのパラグアイも1−0で、ヨーロッパ勢で唯一、ここまで辿り着いた。

 これまでの闘い振りから断然にスペインが有利で、カナダに対しては守りがどこまで通用するものかと懐疑的な意見がほとんど。ただ国歌斉唱の合間、カナダ選手はウインクする者もいるほどで自然体だったが、スペインの面々が表情が硬いことに気掛かりだった。



 表情から伺い知れたように、キックオフからカナダがスペインに攻め込むシーンで試合は幕を開ける。左アウトサイドのシンプソンがスペインDFに思い切りよくチャレンジ。実はウインクした張本人で、バックラインでパスを回す相手に高い位置からプレッシャーを掛け、ブゾンにミスを誘発させる。そのボールを拾ったヒュームのスルーパスにシンプソンが反応し、CKをもぎ取った。4分、CKの流れからディトゥーリオがファーストシュートを放った。

 スペインは相手のシュートに動揺をみせたわけではないだろうが、なんとなくプレーに腰の落ち着かないものがあった。芝の荒れもあってか、時折パスの繋がりが乱れる。ボールポゼッションこそ時間を追うごとに高くなるが、試合序盤は気持ちは乗り切れていなかった。しかし19分、ファンフランのドリブル突破からセルヒオ・ガルシアがきわどいシーンを作ると、堰を切ったようにカナダゴール前でのプレーが多くなる。

 25分、ガビのロングボールに対し、飛び込んだセルヒオ・ガルシアがGKと交錯して倒される。ペナルティーエリア内、しかもGKが決定機を阻止したかに思えたが、判定はエリアの外、GKカリムはイエローカードで済んだ。カナダベンチはホッと胸をなで下ろしただろう。

 しかし、セルヒオ・ガルシアは怖い選手だ。27分にもガビランの足の長いパスを右足でトラップしボールを左に落とした。目の前のハッチソはセルヒオ・ガルシアに逆を取られる。バランスを崩した相手を横目に、セルヒオ・ガルシアは間髪入れずに左足でキック。惜しくもシュートはバーを越えた。この頃になるとスペインの一方的な展開になる。30分にはファンフランのマイナスのパスをガビが綺麗にインパクトしたが、味方のセルヒオ・ガルシアに防がれるアンラッキーな場面も。けれどゴールは遠からず来るといった雰囲気だった。



 そのスペインが35分にようやく先制する。バックラインにいたメッリだったが、誰もプレスに来ないとみるや、ずんずん相手陣内までドリブルで侵入。メッリがカナダエンドに入ると、イエニスタはゴール前にスタートを切った。カナダ選手はボールウォッチャーになってイエニスタに気が付かない。メッリはゴール前に走るイエニスタにスルーパスを送った。イエニスタのシュートはGKカリムの脇を抜けてゴールに転がり込んだ。

 しかし、失点をしたカナダだったが意気消沈したりはしなかった。スペイン陣内に入る機会を待ちながら、ロングボールを駆使して相手のDFの穴を探る。42分にはガビランのシュートに肝を冷やしたが、ポストが弾くという運にも恵まれた。ベンチの動きも迷いがない。ハームセの動きが悪いとみれば、43分にはレミラにスイッチする。

 ともかくベンチも選手も前向き。その気持ちが後半に結果をもたらした。53分、アサンテがロビングのパスに、戻りながらの守備をしていたペーニャは無理な体勢でボールに足を出した。それがヒュームへのサービスパスとなる。ヒュームは力強いドリブルで相手を躱しながらミドルシュート。閃光一撃、カナダは同点に追い付いた。ヒュームの風貌やプレーは、リュングベリに似ている。そのヒュームがその1分後にも、スペインのど肝を抜かす。ゴール正面のFK。3枚の壁では足りないぞとばかりの強烈なキックを見せる。ポスト直撃したボールにレミラが詰めるもバーの上へ。勝ち越しの惜しいチャンスを逃した。



 スペインは底力を振るうカナダに浮き足立つ。65分には相手の突破をファウルで止めたビトロが2枚目のイエローを貰い退場となってしまった。だがこのことでスペインは開き直り、自分達のサッカーを押し通す切っ掛けを掴んだ。怯むことなくショートパスで相手に攻め込み、多少は強引と思われる位置からもシュートを放つ。特にガビランに交代して同じポジションに入ったヌマは、本来はFWということもあって、内に切れ込んでミドルシュートを打ってきた。セルヒオ・ガルシアに代わってワントップを張ったアリスメンディは足もとの柔らかさを武器に、カナダDFが固めるペナルティーエリアへの侵入を試みる。それでもあと1歩が及ばず、勝負は延長戦にもつれ込んだ。

 延長戦が4分を経過した時だった。カナダはスペインにFKを与え、ゲームは一時ストップ。その間にカナダベンチは、それまでボランチとして守備に貢献していたディトゥーリオをベンチに下げて、ブルーノを投入する。ブルーノは回りに声を掛けながらピッチに入ってきた。それはちょっとした「間」であるはずだった。FKをアランゴが頭で跳ね返した。そのボールにアリスメンディが突っ込み、身体を寄せるハッチソンに競り勝つ。だがボールはアリスメンディの足から離れ、転々とゴールに向う。クリアーしようとしたアサンテの足が空を切る。ボールに追い付いたアリスメンディは、倒れ込むGKカリムの手を避けて、冷静にゴールへ流した。95分、「間」が「魔」に変って明暗を分けた試合だった。


(カナダ代表) (スペイン代表)
GK: カリム GK: リエスゴ
DF: マーシャル ハッチソン アランゴ アサンテ DF: ペーニャ メッリ カルロス・ガルシア ブゾン
MF: チーン ディトゥーリオ(95分/ブルーノ) シンプソン マトンボ ハームセ(43分/レミラ) MF: ガビ ビトロ(65分/退場) ガビラン(77分/マヌ) ファンフラン(66分/コロミネス) イエニスタ
FW: ヒューム FW: セルヒオ・ガルシア(85分/アリスメンディ)
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