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 webnews 03/12/24 (水) <前へ次へindexへ>
南米の両雄の対決はブラジルに軍配。
FIFA World Youth Championship UAE2003 準決勝 ブラジル代表vs.アルゼンチン代表

2003年12月15日()18:00キックオフ アブダビ(モハマド・ビン・ザイード・スタジアム) 観衆:16,000人
試合結果/ブラジル代表1−0アルゼンチン代表(前0−0、後1−0)
得点経過/[ブラジル]ドゥドゥ(65分)


文/中倉一志

 南米の両雄、そして世界トップの実力を誇るブラジルとアルゼンチンが準決勝で激突した。両チームのワールドユースの決勝トーナメントでの対戦は5度目。過去は2勝2敗の成績が残っている。南米の両雄、そして世界トップレベルの争いを繰り広げる両国の関係はユース年代であっても変わりはなく、どちらにとっても敗れること許されない。互いの高い実力と強烈なライバル意識。地元メディアからは「事実上の決勝戦」と評されている。

 さて、ブラジルのフォーメーションは4−4−2。両SBが高い位置から攻撃参加するのは伝統のスタイルだ。注目選手は右SBのダニエルと、2列目を自由に動き回るダニエル・カルバーニョ。この2人を軸に分厚いサイド攻撃を展開する。一方のアルゼンチンは3−5−2。局面での細かなパス回し。ワンツーを多用しての中央突破と、こちらもお馴染みのアルゼンチンスタイル。高い得点能力を誇るカベナギに注目が集まる。



 試合開始直後、いきなりダニエルが右サイドからドリブル突破を図る。しかし、アルゼンチンもこれに落ち着いて対処、無難にブラジルの攻撃の芽を摘む。互いに高い集中力を保持する上々の立ち上がり、白熱した好ゲームが展開されることを予感させる。互いに簡単にはボールを奪われない。しかし、簡単には突破させない。高い技術が作り出す攻撃の形と、それを危なげなく守っていく守備は緊張感十分。早くも、ぴりぴりしたムードがスタジアムを包む。

 そんな立ち上がりを経て最初に攻勢に出たのはブラジル。攻撃の中心は右SBのダニエルだ。DFというポジションにありながら、そのプレースタイルは極めて攻撃的。ドリブル突破あり、鋭いクロスあり、さらには裏への飛び出しも見せる。プレーエリアも右サイドに限定せず、いたるところに顔を出す。そんなダニエルにボールを預けて起点を作り、そこから攻撃を膨らませようというのがブラジルの狙いだ。そして22分にはダニエルの裏への飛び出しから決定機を作った。

 一方のアルゼンチンも負けてはいない。続く24分、お返しとばかりにフェルナンデスが決定的と思われるシュートを放つ。どちらかというと受けて立つアルゼンチンだが、決して押し込まれているわけではない。中盤ではしっかりとプレスをかけてブラジルのパスコースを限定。その動きに合わせて後方でバランスを取りブラジルが決定的な仕事をする前にボールを絡み取っていく。その守備網に穴を見つけることは、さすがのブラジルも難しい。



 互いにしっかりとした攻めの形を作り出し、しかし、相手の攻めをきっちりと押さえ込む。高いレベルでの膠着した状態が続いていく。本当にぎりぎりのところでの勝負。ほんのわずかでも攻め急げば裏を取られ、ほんの少し引いてしまえば攻め込まれてしまう。そんな試合の3度目の決定機は54分。ペナルティエリア左側に入り込んでフリーになったカベナギにボールが渡った。しかし、わずかにボールコントロールに時間がかかり、GKのファインセーブに会いゴールはならなかった。

 その後も高いレベルでの膠着状態が続く中、先に動いたのはブラジル。57分、二ウマールに代えてアンドレジーニョを投入。そしてゲームの流れを引き寄せるべく勝負をかける。これが功を奏したのか、次第にブラジルの攻勢が目立ち始めた。アルゼンチンは前半同様、よく守っているが攻めの形が作れなくなっていく。そして65分、遂に均衡が破れる。左からのCKのシーン。ニアサイドに飛び込んだドゥドゥのバックヘッドがゴールマウスに吸い込まれたのだ。この後はブラジルが一気にリズムを掴んだ。

 1点を追うアルゼンチンをペナルティエリアの中にいれず、効率よく試合を進めるブラジル。流れから見て、このままブラジルが逃げ切るかと思われた。しかし、最後の数分になって山場が訪れた。実力伯仲の両チーム、やはり簡単には終わらない。90分、カンベレのシュートが左ポストを直撃する。さらにロスタイム、ペナルティエリア内の混戦からボールがコラセの前にこぼれた。至近距離から右足を振りぬくコラセ。ブラジルは肝を冷やした。しかし無情にもボールはクロスバーの上。そして、激戦の終わりを告げるホイッスルが鳴り響いた。



 生まれた得点は1点だけ。攻撃的な両チームの対戦の結果としては意外な気がしないでもない。しかし、その内容は緊張感あふれるピリピリしたものだった。攻めあぐねたわけでも、引いて守ったわけでもない。チャンスの場面こそ少なかったものの、ほんの少しでも傾けば一気に崩れ去るようなギリギリのところでの攻防は、見ているものを引き込み、そして目を釘付けにしたことだろう。勝ったブラジルは見事。そして敗れたアルゼンチンもまた見事だった。

 両チームの戦いぶりを見ていると、2大会ぶりにベスト8に進出した日本代表と同じ年代のチームとは思えなくなる。技術レベルに差があるのもその理由だが、何よりも勝負にかける姿勢と、ギリギリの勝負を平常心でこなしてしまう精神的な逞しさに大きな違いを感じるからだ。置かれている環境の違いから来るものもあるだろうが、日本と世界のトップとの間には、まだまだ大きな壁が存在しているようだ。


(ブラジル代表) (アルゼンチン代表)
GK: ジェフェルソン GK: エベルト
DF: ダニエル アウシテス・エドアルド アダイウトン アドリアーノ(87分/ガブリエル) DF: ロメロ フェルナンデス ガルシア
MF: カルロス・アウベルト ドゥドゥ ダニエル・カルバーニョ(93分/ダゴベルト) ジュニーニョ MF: サパレタ(74分/モンティージョ) コラセ カルスカ(69分/エレイラ) マスチェラノ フェレイラ
FW: ニウマール(57分/アンドレジーニョ) クレベル FW: カンベレ カベナギ
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