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 webnews 04/10/26(火) <前へ次へindexへ>
「守備に対する意識の差」。浦和が苦手・鹿島に競り勝つ。
2004Jリーグ ディビジョン1 2ndステージ 第10節 鹿島アントラーズvs浦和レッズ

2004年10月23日(土) 16:04キックオフ 県立カシマサッカースタジアム 観衆:31.965人 天候:晴のち曇
試合結果/鹿島アントラーズ2−3浦和レッズ(前2−2、後0−1)
試合経過/[浦和]田中(10分)、[鹿島]岩政(22分)、[浦和]田中(28分)、[鹿島]小笠原(44分)、[浦和]エメルソン(84分)


取材・文/砂畑 恵

 それは異様な光景だった。選手入場に合せ、鹿島サポーターがメインスタンドをとりどりの図柄が描かれた5枚の大旗で演出をしようとした時のことだ。アウェイ側寄りの席の2枚の旗がなかなか広がらない。メインに陣取った浦和サポーターがその傘下に収まることを断固拒否したからだった。意地とプライドを懸けた1戦。鹿島と浦和の両選手、スタッフだけでなく、サポーターも含めたスタジアム総てが闘いの場であった。



 火薬庫のようなスタジアムを最初に揺るがしたのは田中だった。永井からのスルーパスに対し、深い鹿島DFの裏に出来たわずかスペースに飛び出した田中がGK曽ヶ端の鼻先でボールをちょこんと浮かしてゴール。先行主導型の浦和が今日も10分で先制する。

 だが早々の失点にも鹿島は自信に溢れていた。過去、カシマスタジアムでの浦和戦はカップ戦も含め15戦の内、負けたのは2度。断然の勝率がバックボーンにある。ワインレッドで染まるゴール裏の大声援を背に受け、鹿島は雄々しく攻め込んだ。そして22分、GK山岸も飛び出しを迷うほどの低くてスピードのある小笠原のCKを岩政がきっちり頭に合せる。両チームの監督が「セットプレーが鍵」との言葉通り、鹿島はセットプレーで同点とした。

 しかし浦和もそのセットプレーから追加点を奪う。同点にされた6分後、三都主のFKがクロスバーを叩き、跳ね返りを田中がヘディングシュート。ポストに当てながらも鹿島ゴールにねじ込む。再び相手を引き離した田中に真紅のスタンドはコールで賛えた。

 もちろん鹿島も黙ってはいない。35分頃から浦和に傾きかけたゲームの流れを、徐々に引き戻し、44分に獲得したFKの流れから小笠原がゴールを決めてまたも追い付く。落ち着いてシュートを流し込んだ小笠原は素晴らしかったが、逆サイドでフリーの小笠原に向けられた内田のクロスもまた絶品だった。両者1歩も引かない互角の前半は終了した。



 ところが一進一退のゲームが後半になると状況が一変。浦和が一方的に押す展開になり、鹿島は自陣にこもって、時折、カウンターで反撃するのみとなってしまった。その構図が浮き彫りになったのは、両者の守備に対する意識の差にあったのではないかと思う。

 この日、浦和は布陣をマイナーチェンジした。変則的な3−5−2。鹿島の強力な左サイド攻撃に対し、右アウトサイドには山田を配置。永井はトップ下へ移動した。永井はトップ下から右サイドをプレー範囲として、エメルソン、田中と3トップを形成する。エメルソン、田中に永井を加えた攻撃陣の高い得点力は浦和の魅力だ。

 だが好調・浦和のキーワードは「攻撃の第1歩=高い位置でのプレス」。攻撃型の選手であろうと前線からの守備に手抜きは許されない。鹿島戦では自軍が守備に回った際は主にエメルソンがトップに残って、田中と永井はさっと2列目に下がった。

 それこそが綿密に練られた鹿島攻略のポイントだったのだ。鹿島の攻撃の起点はフェルナンドと中田のボランチから繰り出される正確なパスにある。そこを封じることが田中と永井の指命であった。ボランチの鈴木、長谷部も素早くバックアップし、相手のボランチ囲い込んだ。すると鹿島は中盤の底にボールの落ち着き所を無くし、サイドにボールを預け出す。それに対し、田中と永井は今度はライン際へとボールホルダーを追い詰めアウトサイドと縦に挟み込む。田中と永井はその守備を反復し、ピッチ狭しと走り回った。

 チーム全体で連動する浦和の守備は試合序盤は甘さもあったが、時間の経過と共にアグレッシブさを増した。攻撃陣の献身的な守備は後半になっても衰えを知らない。例えば田中は64分に味方がピンチとなったシーンでは最終ラインで本山の突破を食い止めほど。もちろん攻撃となるとエメルソン、田中、永井は爆発的な加速で鹿島陣内に攻め込んだ。



 この攻守一体化した一気呵成の浦和の攻めに鹿島の4バックが押し負けズルズル後退してしまう。特に後半にはそれが顕著だった。ボランチも攻撃より守備に割く時間が増え、次第に鹿島の2列目と3列目の間は大きな溝が出来る。それ故、セカンドボールはことごとく浦和に拾われた。また攻撃参加した長谷部には幾度も決定的な仕事をされた。

 しかし、鹿島がその悪循環を断ち切れなかったのは何も守備陣だけのせいばかりではない。浦和とは違い2列目、トップの選手の運動量はあまりにも少なかった。先にも書いたが、長谷部は攻撃に絡んでいたとはいえ、本来のポジションはボランチ。その長谷部に対し、鹿島の上がり目の選手達はアプローチが足りなかったことも簡単に突破を許した原因だ。

 それにしても鹿島のDFはよく耐え抜いたと思う。バックラインを下げ過ぎたことは問題はあるにしても、再三、再四、訪れるピンチにも身体を張って最後の牙城を守り抜いた。その中でも岩政の守備は特筆もの。57分の田中のシュートは岩政が身体を寄せていたためにゴールはならず。62分、長谷部のスルーパスに反応したエメルソンがGKと1対1となるような場面を紙一重でオフサイドに仕留めたのも、岩政がステップを踏み直し、わずかにラインを上げたことによるものだ。それ以外でも浦和の絶好のパスやシュートコースには「岩政あり」と、その表現が過言ではない働きをしていた。



 この状況に鹿島のトニーニョセレーゾ監督は守備のてこ入れを考えると同時に、勝ちにこだわる思いが交差したであろう。72分に本田を投入。フェルナンドと新井場をアウトサイドに移動させ、小笠原をトップ下据え、本山をFWとする3−5−2で浦和に対峙した。また32分には本山から中島スイッチ。その2分後には金古を投入と次々と策を打った。

 だがその鹿島の交代も浦和に流れたゲームの歯車を止めることは出来なかった。84分、ギリギリまで大岩を引き付けた長谷部がエメルソンにスルーパス。エメルソンの前に岩政が塞がる。中田もフォローに駆け付けた。だがエメルソンが放ったシュートは岩政と中田の間を通り抜け、右ポストを巻くようにネットに吸い込まれる。粘り続けた鹿島の砦はついに落城。これが決勝点となり浦和は苦手・鹿島から勝ち点3を手にした。


(鹿島アントラーズ) (浦和レッズ)
GK: 曽ヶ端準 GK: 山岸範宏
DF: 内田潤(79分/金古聖司) 岩政大樹 大岩剛 新井場徹 DF: アルパイ(45分/堀之内聖) 田中マルクス闘莉王 内舘秀樹
MF: フェルナンド 中田浩二 小笠原満男 本山雅志(77分/中島裕希) MF: 山田暢久 長谷部誠(89分/酒井友之) 三都主アレサンドロ 鈴木啓太
FW: 深井正樹(66分/本田泰人) 鈴木隆行 FW: 田中達也 永井雄一郎 エメルソン
SUB: 小沢英明 青木剛 SUB: 都築龍太 平川忠亮 岡野雅行
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