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 webnews 04/11/07 (日) <前へ次へindexへ>
10人のハンデを乗り越え、死力を尽くしたFC東京がPK戦の末に初栄冠に輝く。
2004Jリーグ ヤマザキナビスコカップ 決勝 FC東京vs.浦和レッズ

2004年11月3日(水・祝) 14:07キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 観衆:53.236人 天候:晴
試合結果/FC東京0−0浦和(前0−0、後0−0、延前0−0、延後0−0、PK4−2)


取材・文/砂畑 恵

 29分、エメルソンを引っかけたジャーンに吉田主審が2枚目のイエローカードを突き付けた。早過ぎるこの退場劇。FC東京の初タイトルに向けた長く苦しい闘いが始まった。

 選手入場には青と赤のボードでスタジアムを彩ったサポーターを背に、FC東京の滑り出しは順調だった。石川が積極的に攻撃を仕掛けゲームの流れに乗ると、15分辺りからはルーカスとケリーのコンビプレーで崩しや後ろから加地が攻撃参加するシーンも見られるようになる。21分にはFKからルーカスが反転シュートで惜しい場面を作る。この時間帯、ゴール前への進出頻度ではFC東京がやや優勢だった。

 だが退場者を出しチーム編成の変更を余儀なくされる。33分、三浦を下げて藤山を投入。今野のワンボランチとする。あくまで原監督は攻撃を優先させた交代だった。その指揮官の意を受けた選手達は攻めの姿勢を貫く。浦和の高い位置からの守備を意識し、早目に後ろから右サイドへとロングボールを放り込む。そのボールに石川が、時に戸田が走り込みゴール前にセンタリングを入れた。しかし単純なクロスでは浦和の守備は崩せない。上背のある3バックに入れては跳ね返されを繰り返し、全くシュートには持ち込めなくなる。

 対する浦和も相手の守備に手を焼いた。ジャーン退場後、浦和はバックの安定と数的優位に立ったこともあって、徐々にFC東京陣内に侵攻し始めていた。だが志半ばでピッチを去った仲間の無念を慮る気持ちが、FC東京の選手一人ひとりにプラスαの運動量を産み出していたのだ。4バックはマークを受け渡し、1対1の局面ではタイトな守備を見せる。浦和が中央突破に掛かると今野を筆頭に2人、3人と囲み込んでくる。浦和の苦闘の例に37分のシーンが挙げられよう。鈴木からフリーでパスを受け取ったエメルソンだが、藤山、茂庭、今野と囲まれて、シュートはGK土肥の腕に収まるような弱いものとなってしまった。

 とにかく両チームともにゴール前にボールを運びながらも相手の最終ラインを崩すことが出来ず、結局、決定打を欠いたまま前半を終了した。



 後半に入っても試合は互いに一進一退。だが53分、浦和に転機が訪れる。鈴木がファウルを受けて倒れ、アウト・オブ・プレーとなった際のことだ。ブッフバルト監督は選手に何事か伝達する。それは山田がトップ下に入り、永井が右に開く別バージョンの布陣へシフトすることだった。その効果は直ぐに表れた。55分、相手CKから鈴木のパスを受けたエメルソンが加地、藤山をことごとくかわしてゴールへ迫る。左を駆け上ったフリーの永井にボールが渡りシュート。しかしGK土肥に足で防がれた。

 また長谷部がゲームを組み立てる場面が目立ち出したのもこの頃。56分には自らシュート。通常は浦和のボランチ2人はあまり入れ替わりがないのだが、この日の長谷部は右に左にとエンドを変えて攻撃へと絡む。57分には長谷部が右サイドを突破し永井にスルーパスを出す好シーンを演出。60分には左エリアで相手ボールをカットしてエメルソンにスルーパスを送り、エメルソンはGKと1対1になる。それでもこの日の浦和は決めきれない。

 その理由にFC東京の気迫がそうさせなかったと言える部分もある。何しろGK土肥は当たっていた。エメルソンと1対1の場面を迎えた時のGK土肥の対処も怯むことなく思い切り前に飛び出し、それ故にエメルソンはシュートを噴かしてしまったといった感じだ。また55分の永井のシュートシーン。少し遅れてはいたが茂庭の必死なスライディングもあった。こういうファイトのあるプレーは浦和とすれば嫌なものだし、味方を鼓舞する効果もある。

 ただ攻撃という面ではFC東京はひずみが生じる。守備に追われる時間の長くなってサイドアタッカーの疲労が出始めた。更にケリーが交代するとボールの落ち着きどころがなくなり、ルーカスもゲームに埋もれてしまう。FC東京には手詰まり感が漂った。



 だがひたむきなプレーを続けていればチャンスは必ず巡って来るというもの。62分、スローインから戸田のグラウンダーのパスがゴール前を横切り、逆サイドでノーマークとなっていた石川に渡ってシュート。浦和、絶体絶命かと思われたがGK山岸がミラクルセーブ。その1分後のCKでは石川のキックがGK山岸を越え、ファーの茂庭に届く。ところがカバーに入った田中がシュートを阻止。FC東京は最大の好機も浦和の固い守備に活かせぬまま。

 その後は浦和がFC東京にシュートの雨霰を浴びせる展開となった。何せ、75分以降、延長戦の前後半を合わせ、シュート数は18本にも上る。それに対しFC東京は足が止まりそうになりながら、中にはつってしまうほどの状況に面しながらも死力を尽くす。81分のCKはアルパイにドンピシャだったが、戸田が身を挺しクリアー。89分の田中のヘディングはポストまでもがFC東京に味方する。延長に入った91分のエメルソンと田中の連続シュートもGK土肥が神懸かりセーブを連発。他にも筆舌に尽くし難いピンチがFC東京を襲うが、最後までゴールを割らせず120分を終了。そしてPK戦に両チームの命運は委ねられた。

 両者1歩も譲らず迎えた浦和3人目のPKキッカーは田中。渾身を込めたシュートは無情にもクロスバーに阻まれる。だが歓びも束の間。FC東京の4人目の梶山はシュートコースGK山岸に読まれる。これで息を吹き返す浦和。そして浦和のキャプテン・山田がペナルティースポットに着く。山田の放ったシュートは低めのド真ん中。土肥の意地が優り足で止めた。そしてFC東京5番目キッカー・加地はきっちりネットを揺らし、FC東京にとっては嬉しい初タイトル、浦和にとっては連覇と今シーズン2冠の夢が潰えた瞬間となった。



 チーム一丸となり苦境を乗り越えたFC東京。本当に惜しみない拍手を送りたい。たが人間は欲張りだ。タイトルという蜜の味を知れば2連覇なり、次はリーグ戦と、選手、フロント、サポーターも次々と欲が出てくる。ただ忘れてはいけないのはチームは勝者の階段を登り切り、踊り場にいるということ。更なる高みに続く階段を登るか、下ってしまうかはこれからのFC東京に拘わるすべての人の在り方次第。今後も弛まぬ研鑽を積んで欲しい。

 さて敗れた浦和。確かによく攻めた。だが、いつもとは何かが違った。ボールを持てることもあり、各々のボールキープが長くなったり、ゴール前にパスを運ぶのに手数を掛け過ぎていた。つまり通常よりもゴール前に攻め込むスピーディーさに欠けたきらいがある。またFC東京以上には優勝への飢餓感も足りなかったようにも思えた。タイトル戦では普段通りに闘うだけでも難しい。ましてや連覇となれば生半可では達成できないことを知ったであろう。悔しさを噛み締めたまさにこの時が雌雄の分かれ目。揺るがぬ自信と強靭な意志を持つことがチームをより羽ばたかせるはずである。

 表彰台でカップを掲げる選手を見詰め、喜びに沸き返るFC東京サポーター。そして2年前と同様に立ち尽くしそれを黙って目に焼き付ける浦和サポーター。喜びを知り、辛い憂き目を経験して華開く未来はやってくる。何となくそう思いながらスタジアムを後にした。


(FC東京) (浦和レッズ)
GK: 土肥洋一 GK: 山岸範宏
DF: 加地亮 茂庭照幸 ジャーン(29分/退場) 金沢浄 DF: アルパイ 田中マルクス闘莉王 ネネ
MF: 石川直宏 今野泰幸 三浦文丈(33分/藤山竜仁) ケリー(71分/梶山陽平) MF: 山田暢久 長谷部誠 三都主アレサンドロ(64分/平川忠亮) 鈴木啓太
FW: ルーカス 戸田光洋(84分/馬場憂太) FW: 田中達也 永井雄一郎(110分/岡野雅行) エメルソン
SUB: 塩田仁史 阿部吉朗 SUB: 都築龍太 内舘秀樹 酒井友之
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