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 webnews 05/01/10 (月) <前へ次へindexへ>
先制ゴールを決めた森野(14)を祝福するチームメイト。
自由を奪われた鵬翔、市立船橋の戦略に敗れる。
第83回全国高校サッカー選手権大会 準々決勝 鵬翔高校vs.市立船橋高校

2005年1月5日(水)14:10キックオフ 三ツ沢球技場 観衆:約11,000人 天候:晴
試合結果/鵬翔高校0−3市立船橋高校(前半0−1、後半0−2)
得点経過/[市立船橋]鈴木(24分)、オウンゴール(62分)、壽(78分)


取材・文/西森彰

 Jリーグなどと比べて、全国高校サッカー選手権の公式記録は配布されるまでに時間がかかる。試合終了後、ゲームを観戦したサッカー部の先生が記した短評が加えられるからだ。ミクスゾーンでひととおり、監督や選手のコメントを拾った記者が、公式記録の配布場所に集まる。コピーされた記録が、運営担当の学生によって運ばれてくる。

 記録に目を通した報道陣の間から、苦笑が漏れた。「少ないとは思ったけれど、こんなに少なかったんだ」。シュート数である。前後半80分、両軍合わせても10本に満たない。市立船橋高校は4本、鵬翔高校は5本。それでも最終スコアでは3対0の大差がついていた。それは自分たちの土俵に持ち込んだ市立船橋の戦略的勝利だった。



市立船橋の堅い守備ブロックは、鵬翔から自由を奪う。
森野(青・左)が持ち込み、鵬翔にダメを押す。
 鹿島アントラーズへの入団が内定している興梠慎三の連続決勝ゴールで勝ち上がってきた宮崎県代表・鵬翔。そして伝統の堅守で守りきってきた市立船橋。全国制覇を視野に入れて戦ってきた両チームは三ツ沢球技場で矛先を交えた。この試合の最大のキーポイントは、やはり鵬翔の興梠を、市立船橋がどう封じるか。

「興梠君をはじめとする鵬翔の攻撃陣はパスワークもありますし、興梠君は個人での打開能力という点では、今大会でもナンバー1候補。そこでマンマークではありませんが、うちの中村(勇紀)に『しっかり視野に入れておくように』と。『中村がコースを限定したところでDFが取るということを試合を通じてやらないとダメだ』と試合前に伝えていました」(市立船橋・石渡靖之監督)

 興梠がボールを持つと、ワイパー役の中村がまず当たってスピードを鈍らせるとともに、進行方向に選択肢を与えない。仕方なく、そのポケットに入り込んだところに、渡邉広大率いる市立船橋自慢の4バックが挟撃する。そして左サイドから決定的な場面を演出する入船和真の攻撃参加は、右サイドハーフに小山泰志を起用して受ける。キーポイントを潰された鵬翔の攻撃は、中盤でもプレスによって寸断され、決定的な場面を作れなかった。



 まず絶対に点を取られない体勢を作り上げてから、市立船橋は攻撃に転じる。狙いは、鵬翔のフラット4ディフェンスの裏にできるスペース。事前研究の結果、「鵬翔の最終ラインのカバーリング能力は、それほど高いと思えなかった」という石渡監督は、榎本健太郎、森野徹の2トップを選択した。そのスピード、ドリブル能力を買ってのものである。

 早速、その策が当たる。24分、壽透が榎本へ入れた楔のパスから始まり、最後は鈴木智博がドリブルからシュート。これが相手GKの股間を抜けるゴールへとつながる。市立船橋が前半記録したシュートは、鈴木が放ったこの1本のみ。1点を奪った後はゲームプラン通りに、時計の針を進めていく。

「1点だと終わらない。1対1になることも考えて。1対1になっても負けた訳じゃない。もう1回取れば勝ちだ」。最悪の状況も考えて、ハーフタイムには選手たちにそう言い聞かせていた石渡監督。ビハインドを背負っている鵬翔は、市立船橋がカウンターを狙っていることを百も承知の上で、それでも前に出ざるを得ない。青いプレスの海に次々に飲まれていく鵬翔イレブン。人数が足りない。さらに前傾姿勢になった。

 それを市立船橋のカウンターが捉えた。62分、縦パスに反応した森野徹が、右サイドを独走。ペナルティボックスに入る辺りから放ったシュートは、懸命に戻った鵬翔DFのオウンゴールを誘った。堅守を誇る市立船橋にとって、この時間帯での2点リードは磐石といって良かった。何とか1点を返したい鵬翔から、試合終了間際の78分に壽が3点目を奪ってダメを押す。



互いに健闘を称えあう市立船橋(青)、鵬翔(白)の選手たち。
 鵬翔は苦しい時に必ず結果を残してきた興梠が、市立船橋のディフェンスに封じられた。2枚、3枚がかりのプレスの中で、それでもキープする興梠の能力自体は疑いようがない。ただし、その「個の力」を生かすための工夫ができなかった。いや、鵬翔の選手に、興梠に預ける以外の手段を見出させなかった、市立船橋の恐るべきプレスディフェンスを褒めるべきか。

 起用した選手が結果を出しての3得点に、石渡監督も「(3点取ったのは)県大会の1回戦以来じゃないかな?」と笑った。今大会の市立船橋は例年にも増して守備の意識が高い。石渡監督が、準決勝で戦う星稜の本田圭佑対策を訊かれて「それぞれのチームに核となる選手がいますね。(いないのは)ウチくらいかな?」と答えたように、絶対的なエースはいない。しかし、PK対策をも施してきたこのチームには「取られなければ負けない」という自信が漲っている。









(鵬翔高校) (市立船橋高校)
GK: 川添卓 GK: 中林洋次
DF: 池田卓弥(65分/村上達哉)、宮路洋輔、酒井剛、入船和真 DF: 谷津寛治、渡邉広大、森下宏紀、薬袋克己
MF: 金久真也、木下大輔、堀田裕章(34分/山本郁弥)、熊元敬典 MF: 中村勇紀、小山泰志、壽透、鈴木智博
FW: 興梠慎三、木村太輔(62分/角島康介) FW: 榎本健太郎、森野徹
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