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 webnews 05/01/10 (月) <前へ次へindexへ>
スタンドに描き出された人文字。9年ぶりの優勝を後押しする。
鹿児島実業、国見に国立で恩返し。九州代表として決勝の舞台へ!
第83回全国高校サッカー選手権大会 準決勝 国見高校vs.鹿児島実業高校

2005年1月8日(土)12:10キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:約16,319人 天候:晴
試合結果/国見高校0−2鹿児島実業高校(前半0−1、後半0−1)
得点経過/[鹿児島実業]西岡(15分)、赤尾(72分)


取材・文/西森彰

「完敗です」

 記者会見場に現れた国見高校の池田亮司監督はそう言ったきり、口をつぐんだ。そして新聞記者からの質問が「鹿児島実業高校との差がついた原因」に及ぶと、「おそらく実力の差だと思います。少しどころではない、完璧に大きな差がありました」。連覇を逃したショックだけではないだろう。「自分たちのサッカーで打ちのめされた」。そんな思いがあったのではないか。



徹底してロングボールを放り込む鹿児島実業。
 長崎県代表・国見高校と鹿児島県代表・鹿児島実業。九州の常連校同士の対決に「九州人としては決勝で見たかったな」と中倉編集長が漏らした。もちろん、互いに手の内は知り尽くしている。

 国見が、鹿児島実業の栫大嗣、山下真太郎の2トップに吉住貴士、藤田優人を張り付かせて比嘉隼人が余る、いつものフォーメーションをとる。これに対して3バック、4バックの両方を練習してきた鹿児島実業は「相手も3−5−2だから」(松沢隆司総監督・鹿児島実業)、この日は3バックでミラーゲームを挑む。1対1で勝てることを前提にした戦術。指揮官には選手たちへの絶対的な信頼があった。

 そして「国見には連覇へのプレッシャーがあったと思います。少しひとりひとりが固くなっていた」(松沢総監督)という序盤戦に、右から渡邊辰巳、左から岩下敬輔がロングスローをゴール前に放って、国見の選手たちのプレッシャーを増大させる。準々決勝の盛岡商業戦では連携ミスから失点を重ねた国見も、キックオフから続く鹿児島実業のペースを15分間は耐えた。

 国見のディフェンスが渡邊辰の決定的なシュートを防いだ1分後だった。鹿児島実業は3バックの左に起用されていた西岡謙太が「DFラインの裏を狙った」(西岡・鹿児島実業)。しかしこのロングボールが、強い追い風にあおられて伸びる。国見高校のGK・原田和明が捕球体勢に入ったが、慌ててバックした。しかし、ボールはさらに伸びて、原田の手を掠めながら国見のゴールに飛び込んだ。



山下(鹿実・中央10)の突破を3人がかりで止めにいく国見。
 ビハインドを背負ってハーフタイムに入った国見の小嶺総監督は「あの失点は忘れろ!」と選手を鼓舞した。風上に立った後半、国見は渡辺三城の連続シュートを皮切りに反撃する。42分にはエースの渡邉千がゴール左で決定機を得たが、鹿児島実業もDFとGKがシュートコースをしっかりと限定する。69分には城後寿の入れたハイボールを鹿児島実業GK・片渕洋平が、前半の原田と同じように強風を読み間違えてファンブル。だが、これもDFがしっかりとカバーした。

 国見の攻勢が続く中、カウンターから生まれた決定機を栫が何度か潰して、止めの1点がなかなか奪えなかった鹿児島実業だったが、選手たちに焦りは無かった。「3枚でしっかりと守る意識はあったし、相手どうこうではなく自分たちがやってきたことをしっかり見せる」(岩下・鹿児島実業)。これまで積み上げてきたものは確たる自信になっていた。

 試合を決する追加点が生まれたのは72分、山下真太郎が左足で蹴ったコーナーキックから。小さいクリアボールを拾ったのは3−5−2システムの採用で出番が回ってきた赤尾公の元へ。ボールをコントロールした赤尾が思い切り蹴ったボールは、国見DFの体へ当たって、原田の後を受けたGK・菅貴裕の手が届かないコースへ逸れていった。



「今年の国見は昨年のエース級が随分抜けたので、今年は苦しい状況だった。例年に比べると、ちょっと駒不足だったのかも知れません」。敵将が「失礼な言い方ですが」と付け加えて行なった戦力分析は当を得ているのかも知れない。3回戦以降の国見から「とても適わない」というオーラを感じることは一度も感じなかった。

してやったりの鹿児島実業・松沢総監督。
 だが、それ故に「自分たちにできることは全てやろうとする」真摯さを感じた。ボールポゼッションで完全に上回られた藤枝東高校戦は、体を張った守りでPKまで持ち込み、盛岡商業高校戦では1点差とされた後に、泥臭いまでのボールキープで時間を稼いだ。後輩への置き土産「シード権の確保」も果たした。胸を張って帰ってほしい。

「年齢では私のほうが上ですけれども、サッカーでは小嶺先生が先輩。私は小嶺先生の努力している姿や、やっていることを見て勉強してきました。今はプリンスリーグがありますが、昔は年に2、3度練習試合を組んでもらって、自分たちの力を確かめてきました。国立で2回やって2敗。松井の時に2対0で勝たせていただきましたが、この国立の大舞台でようやく恩返しができました」(松沢総監督)

 勝った鹿児島実業は九州代表として、市立船橋高校との決勝戦に臨む。「11人では全国を取れない」と嘆いた前回大会から、選手層はアップ。「今年は中の上が15人、16人はいる。飛び抜けた選手はいないけれども、各ポジション、バランスが取れていて、穴が無い」とチームとしてのまとまりが強みだ。

「いろいろなところから注目を浴びるこの高校選手権。その決勝戦にふさわしい戦いができたら良いと思います」(松沢総監督)。9年前、静岡学園高校と一緒にもらった優勝旗。今年は単独で鹿児島県に持ち帰れるだろうか。


(国見高校) (鹿児島実業高校)
GK: 原田和明(70分/菅貴裕) GK: 片渕洋平
DF: 比嘉隼人、藤田優人、吉住貴士 DF: 重富朝登、岩下敬輔、西岡謙太
MF: 中川翔平(59分/中筋誠)、出崎升浩、木村星弥、渡辺三城、城後寿 MF: 渡邊辰巳、三代将平、赤尾公、上村豊和、坪内佑太郎
FW: 田中政勝(39分/本吉伸)、渡邉千真 FW: 栫大嗣(75分/大脇辰也)、山下真太郎
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