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 webnews 05/01/12 (水) <前へ次へindexへ>
鹿児島実業は岩下を先頭に手をつないで入場。
全てを出し切ったベストゲーム。鹿児島実業が9年ぶりの栄冠を掴む
第83回全国高校サッカー選手権大会 決勝 鹿児島実業vs.市立船橋

2005年1月10(祝)14:00キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 観衆:46,037人 天候:晴
試合結果/鹿児島実業0−0市立船橋(PK4−2)


取材・文/中倉一志

 激しい戦いだった。力の限りを尽くした戦いだった。勝負を決したのはPK戦。先攻の市立船橋が2本外した後の4本目、鹿児島実業の渡邉辰己(3年)が、ど真ん中に叩き込む。湧き上がる大歓声。そして鹿児島実業の優勝が決まった。「ここにいるメンバーだけじゃなく、応援してくれたメンバーも一生懸命頑張ってくれた。そのメンバーに感謝したい」(岩下・3年)。インタビューに応えるキャプテンの目には涙が光っていた。

「胸を張れ」。泣き崩れる市立船橋イレブンに渡邉広大(3年)は声をかけた。時間の多くを鹿児島実業に押し込まれ、決定的な場面をいくつも作られた。しかし、決して崩れない鉄壁の守備をベースに戦うのが市立船橋のサッカー。スコアは0−0。彼らは自分たちのサッカーを貫き通した。「うちにもチャンスはあった。それを決めていればうちのサッカー。無失点に抑えられたことは満足している」。悔しい敗戦。しかし、力は出し切った。



市立船橋は鈴木が前半唯一のシュートを放つ。
 この日、鹿児島実業は別の顔を見せた。立ち上がりこそ2タッチでロングボールを蹴り込むスタイルで臨んだが、主導権を握るとみるや細かくパスを繋ぎ始めた。パス&ゴーと、後方からの押し上げ。しっかりとボールを繋いで両サイドから市立船橋の守備陣を崩しにかかる。リスクを恐れずに積極果敢に前に出る鹿児島実業。唯一の目標である「優勝」の二文字に向かって一直線に走りきろうとする姿勢は、市立船橋を早くも自陣に押し込めた。

「鹿児島実業は攻撃にいいプレーヤーが揃っている。押し込まれることは予想していたが、最後まで絶対にゴールは割らせないと言っていた」(渡邉広大)。苦しい立ち上がりになったが、市立船橋にとっては予想の範囲内。イレブンは慌てずに鹿児島実業のチャンスの芽を摘み取っていく。危ないところには必ず姿を現す中村(3年)。最後の砦として存在感を示す渡邉広大。そして誰もが惜しまずに動き回り、最後の場面では身体を張った。

 22分、この試合最初の決定機が鹿児島実業に訪れる。しかし、山下は(3年)GKとの1対1の場面でボールをヒットしきれず。続く37分、鹿児島実業は左サイドを崩してゴール前に詰めた坪内に。市立船橋の応援団が目をつぶった瞬間、忽然と上福元がゴール前に現れてシュートをブロック。結局、前半は0−0で終了したが、終始、鹿児島実業が攻め続けた前半だった。しかし、そんな鹿児島実業をシュート5本に抑え、34分に決定的なシーンを作った市立船橋もまた自分たちのサッカーを展開していた。



攻める鹿児島実業、守る市立船橋。
 後半に入ると市立船橋が全体のラインを上げて前に出る。鹿児島実業も、これを受けて中盤の激しい攻防が始まった。鋭い出足でプレッシャーをかける鹿児島実業。中村、鈴木(3年)の2人を中心に中盤で厳しい守備を展開する市立船橋。一進一退の攻防に互いに中盤を抜け出せない時間が続く。後半最初の決定機は市立船橋。56分、薬袋のFKがファーサイドの渡邉広大に。至近距離から渾身の力を込めてシュートを放つ。しかし、ここはGK片渕がブロック。ガッツポーズで仲間を鼓舞する。

 そして市立船橋が勝負に出た。64分、小山に代えてチーム一の俊足・白山(2年)を投入。スタンドから大歓声が沸き起こる。しかし、なぜか白山のポジションは右サイドハーフ。これが裏目に出た。パスを繋いでサイドから攻める鹿児島実業に対する守備に追われて白山は前に出られず。そして、鹿児島実業の猛攻が始まった。65分、渡邉辰己(3年)のクロスバーを叩いたシュートに始まり、66分、68分と立て続けに決定的なシュートが市立船橋のゴールを襲う。

 鋭い出足でセカンドボールを拾って繰り出す鹿児島実業の分厚い攻撃はとどまるところを知らない。71分、72分と更に決定的なシュートを放つ。しかし、市立船橋の最後の砦は崩れない。誰もが目をつぶった瞬間に2度も薬袋が身体を投げ出してシュートを防ぎ、渡邉広大を中心にことごとく跳ね返していく。カウンターのリスクを恐れずに前に出る鹿児島実業。高い集中力で難攻不落の砦を築く市立船橋。とうとう試合は延長戦へともつれ込んだ。

 延長に入ると市立船橋は白山を本来のFWのポジションに戻して勝負に出る。しかし、鹿児島実業も攻める姿勢を崩さず、一歩も後ろに下がらない。102分、鹿児島実業のシュートがゴールポストを掠めれば、105分、本山(3年)のボレーシュートが鹿児島実業ゴールを襲う。攻めも攻めたり、守りも守ったり。互いに一歩も譲らない戦いはスコアレスドローのまま110分を経過した。そして冒頭のPK戦。最後はサッカーの神様が鹿児島実業に微笑んだ。



おめでとう、鹿児島実業高校!
 試合後の記者会見で決勝戦の試合展開を尋ねられた松沢総監督は、「今年1年間のベストゲームのひとつ。サッカーは細かいことを言ったらきりがない」と答えた。選手たちは、積み重ねてきたものの全てをぶつけた。自分たちを支えてくれた全ての人たちにプレーで答えた。高い集中力が好プレーを呼び、好プレーが更に集中力を高めた。そんな試合の分析をしても意味はない。両チームにとってのベストゲーム。その一言に尽きる試合だった。

 国立を埋め尽くした大観衆の興奮の渦の中、第83回全国高校サッカー選手権は幕を閉じた。しかし、それは新たな挑戦への始まりでもある。「完全な単独ではない。勝負は引き分けだと思っている。再度、真の単独を目指さなければならない。また目標が出来た」(松沢総監督)。「2年生になってもチームの中心になって選手権に出て、また国立に来たい」(小山・市立船橋1年)。彼らはまた頂点を目指して歩き始める。全力を尽くすことの素晴らしさを胸に刻んで。








(鹿児島実業高校) (市立船橋)
GK: 片渕洋平 GK: 中林洋次
DF: 重富朝登 岩下敬輔 西岡謙太 DF: 谷津寛治 上福元俊哉 渡邉広大
MF: 三代将平 上村豊和 坪内佑太郎 渡邊辰巳 赤尾公 MF: 鈴木智博 薬袋克己 中村勇紀 壽透 小山泰志(64分/白山智一)
FW: 栫大嗣(58分/大脇辰也) 山下真太郎(105分/渕木達也) FW: 榎本健太郎(90分/鴇田将己) 森野徹(77分/本山貴之)
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