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 webnews 05/04/01 (金) <前へ次へindexへ>
舞台は同じ。さあ、弟分の敵討ちだ。
8年後のトンネルはあっけないほど短かった。日本、あっさり軌道修正に成功。
2006FIFAワールドカップドイツ アジア地区最終予選グループB 日本代表vs.バーレーン代表

2005年3月30日(水)19時30分キックオフ 埼玉スタジアム2002 観衆:61,549人
試合結果/日本代表1−0バーレーン代表(前0−0、後1−0)
得点経過/[日本]オウンゴール(72分)


取材・文/西森彰

 試合内容では劣っていなかったが、ボールが半個分だけ相手に利した、テヘランでのイラン戦。その敗戦から僅か5日後に行なわれる第3戦は、本大会出場権を得る2位以内を争うバーレーンとのホームゲームだ。埼玉スタジアム2002へ向かう道々、コンクリートの縁石や立ち木に檄文が張られている。

「本当の戦いはここからだ!」
「青でスタンドを埋め尽くそう!」
「ドイツに行こう 絶対に!」

 出力したコピー用紙をガムテープで貼った、ただそれだけのもの。しかし、シンプルが故に、気持ちもストレートに伝わってくる。スタジアムを埋めたファンの気合も北朝鮮戦とは比べ物にならない。都心からは1時間半以上かかる埼玉スタジアム2002だが、客足は北朝鮮戦より遥かに早く、ブルーシートもマッチ・デー・プログラムも、試合開始30分以上前になくなっていた。



「ここが最も重要なゲーム」ファンの気合もいつも以上。
 そのファンの期待を背に受ける日本は、ジーコ監督の予告どおり、結果が出ている3-5-2にシステムを戻してきた。予想に反するゆったりとしたスタートから、丁寧にボールを散らす。無理なシュートで威嚇せず、ドリブルでのチャレンジもボックス近辺から。2トップ以外の8人でゴール前に壁を作るバーレーンからは、なかなかチャンスが作れない。

 完全に引いて、バイタルエリアに侵入してくる日本の選手を、ダブルチームで潰すバーレーンは、ボランチに入った中田英寿がボールを持つと早いチェックを仕掛ける。どうやら、一発のパスを狙う中田からボールをカットして、カウンターという狙いらしい。だが、福西崇史らのカバーが早く、失点の恐れもなさそうだ。

 日本は焦らずに足元から足元へボールをつなぎ、バーレーンの守備ブロックを左右に揺さぶり、走らせる。ボールポゼッションを高めることに重きを置いた結果、シュートらしいシュートは、中村俊輔が22分に打ったミドルが最初。「90分あれば、必ず1点は取れる」。それを確信しているかのように、無理をせず、しっかりとバランスをとる。

 日本の焦りを誘おうと、ピッチ上をゴロゴロと転がりまくるバーレーン。スタンドのファンから大きなブーイングが起こったが、日本の選手たちは冷静そのもの。この時間を使って、近くの選手同士、プレーの意図やマークの確認を行なっている。アテネ五輪予選で、日本から金星を挙げた若い選手が中核を成すバーレーン。同じ舞台で、同じ戦い方を選択したが、肝心の対戦相手が1年前とは違っていた。



そうだ、ドイツへ行こう!
 スコアレスの展開で欲が出てきたのか、それとも戦前に描いていたゲームプランどおりだったのか。60分前後からバーレーンも最終ラインが押し上げ、攻撃に人数をかけ始める。中村のシュートがバーレーンのGK襲えば、バーレーンもカウンターから、北朝鮮戦で2得点を挙げているアリがフリーでシュートを放つ。

 ようやくサッカーらしい攻防となったが、日本は決して受身に立たず、高い位置からプレッシャーをかけ続ける。鈴木隆行、高原直泰のふたりは、ボールを奪うとすぐにラインの裏を狙ってフリーランニングを始め、三都主アレサンドロ、加地亮もサイドの主導権を渡さない。ここで一度でも息を入れれば、相手に付け入る隙を与えることになる。その勝負の勘所を全員が理解し、長旅後のホームゲームでも弱みを見せない。

 根負けしたのはバーレーンだった。鈴木と交代した玉田圭司がファールを受ける。楢ア正剛のキックを邪魔したプレーと合わせてとってもらったようなFK。この日、10本以上蹴った中村のキックは前線に顔を出していた中澤佑二の頭に合う。こぼれたボールに高原が食らいつくようにバイシクル。混戦の中、バーレーンの10番は、足元にこぼれたボールを自軍のゴール内に蹴りこんでしまった。72分、待望の1点が刻まれた。

 引き分けておきたいバーレーンはそれまでの遅延行為を取り返すかのように前へ出る。しかし、日本は守るべきところは守り、ボールを奪うとキープ力のある中村にボールを回す。日本の選手の足が上がり、バーレーンにシュートコースを与えたのは90分に近づく頃。だが、その時には攻め手も強いシュートを枠に飛ばせる力が尽きていた。



このまま順当にプレーオフへ進んでください。
 ゲームのポイントは、バーレーンがアウェーチームの王道を歩んできたこと。勝ち点で上回るバーレーンにとってロースコアのゲームを選択するのは当たり前だが、前半の45分間を無為に過ごしてくれたことは、イラン戦で力を出し尽くし、この日は本来のデキになかった中田ら、悪コンディションの日本を助ける結果になった。

 尤も、バーレーンがハイペースな試合を選択していれば勝っていたかというと、それは別問題。状態の良いバーレーンが日本に走り勝って、せり潰していたかもしれないし、日本が老獪に嵐をやり過ごして、足の止まった相手からゴールラッシュを演じていたかもしれない。

 それでも両国の総合的な戦力差、そして現在の勢いを考えれば勝負に出るべきではなかったか? ギャンブルを賭けるべきは、仕切り直した後のホームゲームではなく、アウェーのこの試合だったように思う。勝ち点1のアドバンテージがある以上、得失点差を考えることはそれほど意味が無いことなのだから。

 初戦が終わった時点で白星4つで勝ち抜けが決まることになった。草刈場からきちんと2勝を刈り取って、上位同士の直接対決で2勝。日本とイランはノルマの半分をクリアしている。バーレーンは6月の2連戦で日本とイランに連勝する以外、ノルマ達成の目が無い。たった勝ち点2の差だが、それは見かけ以上に大きなアドバンテージであることがご理解いただけるはずだ。



 ネガティブなトンネルはたったの3日で通過し、口笛吹きながら初夏の到来を待つポジティブな3ヶ月間に入る。今、日本のファンが心配しなければいけないのは、予選を突破できるかどうかではない。平壌のゲームが無観衆試合になって、最も喜ぶべき瞬間に一人も立ち会うことができない、そんな悲喜劇が演じられるかどうかである。


(日本代表) (バーレーン代表)
GK: 楢ア正剛 GK: Al・ハサン
DF: 田中誠、宮本恒靖、中澤佑二 DF: A・マルズーキ、H・ババ、S・モハメド、M・フセイン
MF: 加地亮、中田英寿、福西崇史、三都主アレサンドロ、中村俊輔 MF: R・ドサリ、M・フバイル(65分/D・ナセル)、S・イーサ、M・サルミーン
FW: 高原直泰、鈴木隆行(69分/玉田圭司) FW: H・アリ、H・マッキ(60分/Ah・ハサン)
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