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 webnews 05/04/06 (水) <前へ次へindexへ>
ピッチに奪われた勝ち点2。納得するしかない痛み分け
2005Jリーグ ディビジョン2 第5節 モンテディオ山形vs.アビスパ福岡

2005年4月2日(土)14:04キックオフ 山形県総合運動公園陸上競技場 観衆:4,529人 天候:晴
試合結果/モンテディオ山形0−0アビスパ福岡


取材・文/中倉一志

 きれいに刈られた芝は青々としていて、一見、何の問題もないように見えた。しかし、試合前のアップのためにフィールドプレーヤーが登場する時間になっても、現れたのはGKだけ。しかも簡単なキャッチングしかしない。他の選手はピッチサイドからグラウンドを見つめているだけだった。第3節の試合で踏ん張るだけでめくりあがった芝生が2週間で根付くわけもなく、練習すらできない状況だったのだ。

 ただ走るだけでもめくりあがる芝生。強く踏み込むことなどできるはずもなく、ボールコントロールもままならない。でこぼこになったピッチの上でボールは予測外の動きを繰り返す。「やるべきサッカーというのは非常に限られてくる。雨降りでぬかるんだグラウンドだとかに似た状況のサッカーしかできない」(松田監督)。「ロングボールを入れて、セカンドボールを拾ってどうにかしようというのを、90分間、やらざるを得なかったというのが実際」(鈴木監督)。山形県総合運動公園陸上競技場の芝生は両チームから持ち味を奪った。



 それでも、選手たちは目の前の試合で勝ち点3を奪うべくボールを追いかけた。まず主導権を握ったのは福岡。いつものように高い位置から追い込んで中盤の主導権を握る。そして、山形の唯一の攻め手である前線へのロングボールは、宮本と岡山がチッコを激しくマークして、ことごとく奪い去った。奪ったボールを早めに前線へ運ぶ福岡の攻撃に山形はクリアするので精一杯。セカンドボールの大半を支配する福岡の厚みのある攻撃が続く。

 しかし、限られた状況の中では、福岡はダイレクトプレーからパスをつないで相手を崩すという攻撃スタイルを生かせない。加えて、何が起こるかわからない荒れたピッチの上ではリスク回避が最優先。押し込みながらもフィニッシュの形が作れない時間帯が続く。山形も守備面では高い集中力を維持。福岡が繰り出す攻撃に丁寧に対応して、ゴールマウスを守っていく。さすがは組織力に定評のあるチーム。肝心なところでは福岡にチャンスを与えない。

 最初の決定機は山形に生まれた。29分、佐々木のアーリークロスがGKとDFラインの間の絶妙な位置に飛ぶ。そこへ原が飛び込んで頭で合わせた。次の瞬間、クロスバーがボールをはじき返した。山形が前半に作った唯一のチャンスだった。福岡は33分、グラウシオのスルーパスに有光が飛び出したが一歩及ばす。35分のホベルト、42分の福嶋が放った決定的なシュートはGK桜井がセーブする。結局、前半は0−0。ほとんどの時間帯を福岡が支配したが、荒れたピッチでは、それ以上のことはできなかったのもやむを得ない。



 「ゲームを組み立てることはあんまり考えずに、拾うことに専念するように」という鈴木監督の支持を受けた山形は、福岡の疲労も手伝って、外池と大塚がセカンドボールを拾うようになってくる。中盤に余裕が生まれれば、前線へのロングボールも精度を増す。前半はほとんど入らなかったチッコへのボールがつながるようになり、山形が前に出るシーンが増えていく。しかし、前半の山形同様、ディシプリンを保つ福岡は難しいピッチの中で確実にボールを跳ね返していく。

 最初に動いたのは福岡。64分、有光に代えて太田を投入。67分には福嶋を下げて喜名を入れてグラウシオを最前線に。前に重点を置くことでゴールを目指す。山形の交代は75分、高木に代えて投入した林を左サイドへ。そして佐々木を右サイドに回す。中々崩せない福岡の両サイドをこじ開けるのが狙いだ。ここからは互いに我慢比べ。リズムが行ったり来たりする中で、ぎりぎりの攻防を繰り返す。わずかなミスは命取り。緊張感漂う試合が続く。

 ラスト10分は再び福岡の時間帯。83分にはグラウシオからのパスに太田が右足であわせたシュートが左ポストのわずかに右をかすめた。しかし、やはり最後の一歩が崩せない。そしてロスタイムの3分間を経過して試合終了を告げるホイッスルが鳴った。後半に互いに掴んだ決定機は1回ずつ。プレーが限定されてしまったことへの欲求不満と、いつ何が起こるかわからない状況で戦った疲労感を残して、試合はスコアレスドローで幕を閉じた。



 限度を超えた荒れたピッチの上では、ロングボールを蹴ってセカンドボールを拾うとい単調なサッカーしかできなかった。しかし、そんな試合で選手たちが見せた守備面における組織力と忍耐強さ、そして最後まで集中を切らさなかった姿は、試合から緊張感を失わせなかった。「こういう中で集中力を切らさずに、しっかりやってくれたことに関しては評価を与えたい」(松田監督)。「精神的にかなりのストレス。それに文句も言わずに選手たちは良くやってくれている」(鈴木監督)。両監督とも選手たちをねぎらうことを忘れない。

 この試合が置かれた環境を考えれば、引き分けという結果は両チームにとって妥当なもの。しかし、その一方で京都は5連勝。まだ序盤とはいえ、京都を走らせたくない両チームにとっては厳しい結果になった。それが、自分たちの手の届かない事情によるものであれば複雑な思いが胸に去来する。だが選手たちは言い訳はせず、勝てなかったことに対する反省と、次の試合に向けて前向きな発言を繰り返した。そんな選手たちだからこそ、このピッチの上で試合をさせたくなかった。同じ思いを繰り返さないためにも、早急な対応が必要だろう。


松田浩監督(アビスパ福岡)記者会見
鈴木淳監督(モンテディオ山形)記者会見


(モンテディオ山形) (アビスパ福岡)
GK: 桜井繁 GK: 水谷雄一
DF: 臼井幸平 小林久晃 レオナルド 内山俊彦 DF: アレックス 川島眞也 宮本亨 岡山一成
MF: 佐々木勇人 外池大亮 大塚真司 高木和正(75分/林晃平) MF: 中村北斗 松下裕樹 ホベルト グラウシオ
FW: 原竜太(80分/秋葉勝) チッコ FW: 福嶋洋(67分/喜名哲裕) 有光亮太(64分/太田恵介)
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