驚異的な粘りを見せた福岡大。サガン鳥栖、辛くも２回戦進出を果たす。
第81回天皇杯全日本サッカー選手権大会　１回戦　福岡大学vs.サガン鳥栖

2001年11月25日（日）13:00キックオフ　博多の森陸上競技場　観衆：1,112人　天候：晴のち曇
試合結果／福岡大学１−１サガン鳥栖（前１−０、後０−１、延前０−０、延後０−０、PK１−３）
得点経過／［福大］太田（25分）、［鳥栖］富永（68分）


取材・文／中倉一志

　長いリーグ戦を終えて１週間。しかも、天皇杯とは言えまだ１回戦とあっては、さすがのプロも、そのモチベーションの持っていき方が難しい。一方、そんな隙に付け込もうとアマチュアチームは１回戦から万全の体制で望んでくる。そこにビッグキリングが生まれる要素がある。ましてや、この日の鳥栖の相手はユニバ代表３人を擁する福岡大学。その実力は折り紙付きだ。「目標は善戦ではなく勝つこと」。その言葉通り、試合は福岡大のペースで始まった。

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　開始２分、福岡大はカウンター気味の攻撃でチャンスを掴むと左サイドから大きく右へ展開。ゴール前に飛び出してきた小井出が右足でゴールを狙う。決定的にも思われたが、シュートはポストの左に外れた。しかし、このプレーに象徴されるように、福岡大は序盤からペースを掴んで鳥栖陣内に攻め込んだ。狙いは、鳥栖の３バックの両側に広がるオ大きなスペース。そこで起点を作り、DFラインの裏側を狙って積極的に飛び出していく。

　そんな福岡大に対して鳥栖は受けに回っているのか、守るので精一杯。両サイドのスペースとDFラインの裏側へ飛び出してくる小井出、川原、菊地の対応に終われて前へ出て行くことが出来ない。止む無くロングボールを蹴っても、坪井を中心に高い安定感を見せる福岡大のDFラインはびくともせず、中途半端なパスは出足のいい福岡大に狙いすまされたようにパスカットされる。試合の流れは完全に福岡大が手中に収めていた。

　そして先制点は25分。CKからのこぼれ球を左サイドで拾った川原がゴール前に絶妙なクロスボールを送ると、DFラインとGKの間に太田が上手く飛び込んで右足で押し込んだ。38分には、カウンターからのチャンスに川原が狙い済ましてループシュートを放ったが、これは惜しくも左ポストを直撃。残念ながら追加点を奪うことは出来なかったが、これ以上ないゲーム展開で前半を終えた。この時点では、明らかに福岡大に部があるように思えた。

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　しかし、後半に入ると試合の流れががらりと変わる。「トミと川前さんで向こうの２トップを完全に抑えられるっていう気持ちがあった」（上永監督代行）という鳥栖は、３バックから４バックに変更。両SBを高い位置に配置する。そして、これが功を奏した。一転してゲームを掌握する鳥栖。対する福岡大は、なんとかこれを凌いでいたのだが、67分に松下が２枚目の警告を受けて退場処分になると、流れは一気に鳥栖に傾いた。

　松下が退場した直後のFKからのチャンスを活かして鳥栖が同点に追いつくと、ここから鳥栖の怒涛の攻撃が始まる。福岡大をゴール前に釘付けにしてゴールを狙う。しかし、福岡大も負けてはいない。さすがに攻めることは出来ないが、驚異的な粘りを発揮。度重なる決定的なピンチにGKが再三の好セーブを見せ、そして全員が身体を張って鳥栖のシュートを防いだ。そして90分間を守り抜いた福岡大は、試合の決着を延長戦へと持ち込んだ。

　これでもかと言わんばかりに攻める鳥栖。必死でゴールを守る福岡大。ゲームは歓声を浴びながら進んでいく。91分には森のロングシュートがポストを直撃。92分には竹元のシュートが右ポストを叩く。そして97分、今度こそはと思われた有村のヘッドは、福岡大GKの杉山が右手一本でゴールマウスの外へはじき出した。結局、延長戦でも勝負がつかずに決着はPK戦に。しかし、さすがの粘りを見せた福岡大の頑張りもここまで。結局３本のPK外して、鳥栖の前に力尽きた。

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「個人の力としてはJ2の下位のチームと比べれば、ほぼ互角の試合内容ができる」。試合後の乾監督の言葉どおり、福岡大はその実力を十分に発揮。10人での戦いを余儀なくされたことが悔やまれる。前半でもう１点でも取れていたら、結果は大きく変わっていたかもしれない。しかし、あれだけペースを握っていながら後半は鳥栖に押されっぱなし。退場者を出す前に鳥栖にペースを握られた。このあたりにプロとの差があるのかもしれない。

　一方、攻めに攻めた鳥栖だったが、あと１点が取れなかった。再三ポストに嫌われるといった不運もあったが、やはりチームのまとまりと言う点では、ひとつも、ふたつも物足りなかった。「目標は３回戦以上」。上永監督代行の言葉を達成するためには、技術的なことよりも、どうやってモチベーションを高めていくのかが鍵になるだろう。

●	乾真寛監督（福岡大学）記者会見
●	上永智宏監督代行（サガン鳥栖）記者会見