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 第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
「いびつな三角形」、ベルマーレのカウンターにレッズ沈む
第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦 浦和レッズvs.湘南ベルマーレ

2003年12月14日(日) 13:00キックオフ さいたま市駒場スタジアム 観衆:14.884人 天候:晴
試合結果/浦和レッズ1−2湘南ベルマーレ(前1−0、後0−1、延前0−0、延後0−1)
試合経過/[浦和]長谷部(28分)[湘南]熊林(53分)柿本(109分)


取材・文/砂畑 恵

 後半ロスタイム、平川のミスパスを石原が拾う。レッズは攻撃に出て前掛かりになっていた。石原はプレッシャーを感じずゴールへ視線を向ける。ゴール前では柿本がフリーになっていた。石原は柿本目がけてアーリークロス。柿本は遅れて戻った坪井を物ともせず、ゴールネットを揺らした。だが坪井やGK山岸が審判に何か訴えている。柿本がトラップの際にハンドを犯していたのだ。柿本ゴールは認められず、勝負は延長戦に委ねられた。

 今シーズンのベルマーレは紆余曲折があった。トルシェ監督の下で参謀を務めたサミアコーチを新監督に迎えて注目された。ところが勝ち星が伸びず、14節にはサミア監督を解任し、山田監督が後を引き継ぐ。それからもJ2上位にいい試合をすることもあったが波は大きく、結局は、11勝22敗11分の10位でリーグ戦を終える。天皇杯に入っても、1回戦の天理大には危なげなく勝ったものの、続く愛媛FC戦は相手に先制されどうにか延長戦で下した。

 J1枠の出場となるレッズは3回戦からの出場。2ndステージ終盤は失速したが、コンスタントに勝ちを収めるチームとなり、ナビスコ杯にて念願の初タイトルを取った。リーグ戦との間が開いていることに懸念する点はあるが、オフト監督が采配を振るう最後の大会ということで、チームは「再びタイトルを」と気持ちは高まっている。



 前半は意気揚々のレッズがゲームを支配した。リーグ戦ではボランチの位置でプレーしていた長谷部が山瀬と並びのトップ下に入って、2人がゴール前に飛び出すシーンが目立つ。FWの永井もボールによく絡んでチャンスを演出。4分には永井のドリブル突破から、田中がポストとなり山瀬がシュート。14分には山田のサイドチェンジを受けた永井が、右にいた田中にロングレンジのパス。田中はダイレクトで左ポストに飛び込んだ長谷部へ。長谷部はシュートには持ち込めなかったが、ワイドな展開でベルマーレを揺さぶった。

 そして28分、レッズが先制点を挙げた。ゼリッチが相手ボールをカットし、右の山田に。ドリブルを開始した山田は、右に流れる田中ではなく、ゴールに向う長谷部を選択。長谷部はベルマーレDFの密集をシュートでこじ開けた。その後もレッズの攻撃は休まず続いた。

 ただ気掛かりはレッズがゴール前での緻密さに欠け、相手陣内に攻め込みながらも枠内シュートが少なかったことだった。それは裏を返せば、ベルマーレDFが我慢強く対応したことの証拠でもあった。殊に田中に対しては、白井を中心に人数を掛けて前を向かせなかった。田中はポスト役となり、下げたボールを2列目、3列目の選手がミドルシュートを試みる。それが枠内シュートが少なかった背景なのだ。



 ところでベルマーレの攻撃は、耐える守備を重ねながら、虎視眈眈とカウンターの機会をうかがっていた。レッズが横に揺さぶるのに対し、縦へと鋭いボールを送る。実は10分にレッズのゴールネットを揺すったシーンがあった。金のロングボールを石原がトラップ。落ちたボールを坂本が押し込んだ。坂本の位置がオフサイドということでノーゴール。それ以降、カウンターでシュートに繋げた場面が2度あったが、レッズDFにかろうじて守られる。しかし、ベルマーレの切れ味のある攻めは危険な匂いを漂わせていた。

 レッズに押し気味に試合を運ばれたベルマーレだったが、山田監督は事前情報と共にレッズのコンディションは良くないと判断する。もともと2点の勝負となることは選手に伝えていた。ただ前半には永井にリズムを作られていたこともあり、井原をセンターに投入して、対人プレーに強い白井を永井の正面に持ってくる。守備の修正を図り、後半は勝負にでてきたのだ。

 ベルマーレは前半よりもDFラインを上げてコンパクトにする。ハイプレッシャーを掛けて相手を追い込んだ。アウトサイドの坂本と高田がお互いにバランスを取りながら、2トップを近い位置でサポートする。そして53分、ロングボールを受けた柿本が、左に大きく振る。そこにはフリー熊林が。前に出てくるGK山岸をしっかり見据えながら、熊林は流し込む。カバーに入った坪井もクリアし切れず、ボールはゴールに収まった。

 同点に追い付いたベルマーレは、勢いに乗って2点目を取ろうと手を緩めない。対するレッズも負けじと攻撃に拍車を掛ける。息付く間もないような攻防が繰り広げられた。レッズは山田・平川のアウトサイドが攻撃参加を繰り返す。しかも山田は何度も相手ペナルティーエリア付近に迫るほど。それでもしっかりと守るベルマーレDFを破れない。その代償を払うように、ボランチの鈴木やDFには徐々負担が掛かり、イエローカードが出される場面に発展。守備をベースにロングボールで応戦したベルマーレは、前線に放り込まれるボールに対し、右に開いた石原が丹念に拾ってチャンスを作る。但し、攻撃の枚数が少ない分、クロスはなかなか味方に合わなかった。互い攻めきれないまま後半の終盤を迎えた。



 レッズベンチは83分に千島を入れて、3トップに変更した。これによりベルマーレDFに苦しんでいた田中が息を吹き返す。動きが大胆となり、84分にはこの日初めてのシュートを打つ。89分には相手CKの場面で、自陣から相手ゴール前まで一人でボールを運び、際どいシュートを放った。だがこの頃になるとレッズは攻撃に逸り、知らず知らずにチームのバランスを崩していた。そして冒頭の柿本のシュートの場面になる。相手のハンドは幸運で、バランスを失ったチームへの警告だった。それに気が付かないままゲームは進んだ。

 延長後半4分、ベルマーレの勝ち越しゴールは、後半ロスタイムのあのシーンに酷似していた。ベルマーレのカウンター、右サイドを駆け上った高田は平川のプレスに合う前に、前線でフリーとなっていた柿本にアーリクロスを送る。遅れがちに戻ってきた坪井が柿本の前に回り込む。今度の柿本は同じミスを犯すわけもなく、きっちりゴールを突き刺した。

 勝ったベルマーレの山田監督は「ペースを握られながらも、2点取って自分達のサッカーが出来た」としみじみと語った。レッズに先制はされたが、ディフェンス面では山田監督の采配も当たり、相手に圧倒されることなく、最後まで綻ぶことはなかった。アウェイの闘いということで、攻めはカウンター狙いに終始したが、思った通りの試合運び。苦しんだシーズンではあるが、成長の兆しを見せたチームに山田監督も満足したことだろう。

 浦和レッズの監督として公式戦最後の記者会見に臨んだオフトは、2年目は個々のポジショニングに注意を払ってきたのだと話し、右と左のバランスが悪いことが課題だとも指摘した。かつてオフト監督が日本代表を指揮した頃、よく「トライアングル」という表現を使った。レッズでも同じだったろう。この2年を通し、試合中にレッズ選手が、着かず離れずの頃合いのよい三角形を作り、パスを回すのをするのを見てきた。ただこの日のレッズは時間が経過するごとに、いびつな三角形になっていった。それが敗戦の原因なのかもしれない。


(浦和レッズ) (湘南ベルマーレ)
GK: 山岸範宏 GK: 鈴木正人
DF: 坪井慶介 ゼリッチ 内舘秀樹 DF: 北出勉(HT/井原康秀) 白井博幸 時崎悠
MF: 山田暢久 鈴木啓太 長谷部誠(83分/千島徹) 平川忠亮 山瀬功治 MF: 中里宏司 熊林親吾 金根哲(101分/田辺和彦) 坂本紘司
FW: 田中達也 永井雄一郎 FW: 高田保則 石原直樹(99分/石田祐樹) 柿本倫明
SUB: 加藤順大 堀之内聖 土橋正樹 西村卓朗 SUB: 船津佑也 照井篤
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