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 第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
勝負を分けたモチベーションの差。川崎が大分に完勝。
第83回天皇杯全日本サッカー選手権 3回戦 大分トリニータVS.川崎フロンターレ

2003年12月14日(日)13:00キックオフ 大分スポーツ公園総合競技場(ビックアイ) 観衆6,278人 天候:晴
試合結果/大分トリニータ0−3川崎フロンターレ(前0−2、後0−1)
得点経過/[川崎]我那覇(27分、31分)、林(78分)


取材・文/中倉一志

 観客数6,278人。シーズン中、常に20,000人近い観衆を集めていたビッグアイにしては、いささか寂しい感じは否めない。しかし、それでもホーム側ゴール裏はこの日も青一色。サポーターはいつもと同じ大きな声援をピッチに送る。2003年度最後の公式戦となる天皇杯の3回戦。しかも小林監督がチームを率いる最後の大会。勝って気持ちよく送り出したい。サポーターのそんな気持ちの表れだった。その気持ちに答えるように大分はベストメンバーで臨む。

 対する川崎フロンターレは純和製メンバー。ジュニーニョ、ホベルチ、アウグストの3人の穴は大きいと思われたが、「わしの天皇杯はいつも外国人はいない」と石崎監督は平然と構える。「今年、目指している前線からのプレスというサッカーが、どこまでJ1相手にできるか」(石崎監督・川崎)。それがこの試合の課題だ。J1昇格にはわずかに届かなかったが、積み重ねてきたサッカーに自信はある。遠く川崎からやってきたサポーターも「俺たちは強い」と書かれたゲートフラッグを掲げてチームをバックアップする。



 開始直後の4分、最初の決定機が川崎に訪れる。エリアの外から我那覇が強烈なミドルシュート。GK小山が弾いたところに今野が猛然と走り込む。わずかに早く小山がボールをキープしたが、この後、試合の主導権は川崎が握ることになる。高い位置から積極的にプレスをかけると、奪ったボールを素早く両サイドへ展開。右からは長橋、左からは塩川が駆け上がる。我那覇が中央でターゲットになり、その周りを今野、中村が自由に動いてチャンスを作る。いつもの川崎のサッカーだ。

「川崎のサポーターにも、その前にお世話になった大分のサポーターにも、サッカーっていうのは、こんなに面白いんだよというサッカーを見せてあげたい」(石崎監督)。川崎イレブンは、その言葉を実践する。大分がボールをキープしようとすると、あっという間に囲んでボールを奪取。次の瞬間、周りの選手が一斉に動き出してパスコースをいくつも作る。そして軽快なテンポでボールをつなぎ、何度もチャンスを作り出して行く。

 一方、ホームの大声援を浴びる大分だがペースは一向に上がらない。厳しいリーグ戦を終えた後で集中力が途切れてしまったのだろう。集中力を欠くプレーが目立つ。「今日の試合はちょっと・・・。すごく恥ずかしい試合でした」。吉田はそう振り返る。足元のボールの処理もおぼつかず、スペースに走り込む選手もいない。戦える状態にないことは誰の目にも明らかだった。最終ラインが踏ん張ってはいたが、それもシーズン中の安定感には程遠い。



 川崎の先制点は27分、右サイドで得たFKのチャンスから中村がグラウンダーのボールをゴール前に送ると、そこに走りこんできた我那覇が右足で合わせてゴールネットを揺らした。続く31分には箕輪のロングボールをサンドロとGK小山と競り合った我那覇が奪取。無人のゴールへ落ち着いて流し込んだ。さすがにスタンドの雰囲気が変わる。45分を経過しロッカールームに引き上げる大分イレブンにブーイングが浴びせられた。

 後半に入ると小林監督は寺川、ウィルに代えて木島と松橋を投入。さらに58分にはエジミウソンを小森田にスイッチする。スピードを生かした突破と小森田の配給で流れを変えようという狙いだ。スピードを警戒した川崎のラインが下がり気味になったことも手伝って、大分はようやく攻撃のリズムを掴み始めた。ゴールこそならなかったが、72分、74分、そして76分には立て続けに決定機を作る。しかし、どれも個人突破によるチャンスばかり。厚みのある攻撃は組み立てられない。

 そして78分、川崎が駄目押しの3点目を上げる。決めたのは林。交代出場後のファーストプレーだった。このゴールで大分の足は完全に止まった。そんなイレブンに対し、大分サポーターから「走れ!走れ!」の大コールが起こる。しかし、選手たちにはその声は届かない。結局、反撃の姿勢も魅せられないままに試合終了のホイッスルを聞くことになった。「ジェフと試合がしたかったが、思ったよりも早く残念な結果に終わった」とは小林監督。しかし、戦う姿勢が見せられないのでは勝利は得られない。



 試合を分けたのはモチベーションの差だった。「メンタル的に1シーズン戦ってきて、ちょっときつくて、このゲームにポイントをもって戦うということができなかった」。小林監督も敗戦の理由を語る。確かに、ギリギリの戦いを続けることを強いられたJ1の戦いは彼らを精神的に疲弊させたのだろう。監督の交代が決まっていることも、チームの結束力を欠く一因になっていたのかもしれない。だが、大分はJ1のチーム。意地は見せて欲しかった。

 メンタル的に難しいという点では川崎も同じような状況に追い込まれていた。夢の実現を信じて戦った44試合。その最後の試合で勝ち点1が足りずにJ1昇格を逃した。しかも、大分と同じく、石崎監督は今大会を限りにチームを退くことが決まっている。川崎もモチベーションを維持するのには難しい状況にあることには違いない。「厳しくても、こういうところまでやれる選手が揃っているのが川崎」。小林監督は脱帽するしかなかった。

 さて試合終了後、大分の選手がサポーターに挨拶し終えたのを見届けると、石崎監督が山根、塩川を連れ立って静かに大分のゴール裏へと向った。その姿に一段と大きな声援が起こる。かつては大分の地で同じ夢を追いかけた仲間。いまは敵味方に分かれても、夢を追うもの同士の気持ちは今でもひとつにつながっていた。

「みんなのおかげで、こんなにいいチームを作ったぞ」
「今度は石崎さんが驚くようなチームになって待っていますよ」

 黙って手を上げ、頭を下げる3人。拍手で3人に答える大分サポーター。言葉を交わすことはなかったが、そんな思いを伝え合っているようだった。


小林監督(大分)記者会見
石崎監督(川崎)記者会見
吉田孝行選手(大分)コメント
我那覇和樹選手(川崎)コメント
(大分トリニータ) (川崎フロンターレ)
GK: 小山健二 GK: 吉原慎也
DF: 若松大樹 サンドロ 三木隆司 有村光史 DF: 箕輪義信 寺田周平 伊藤宏樹
MF: 梅田高志 エジミウソン(58分/小森田友明) 瀬戸春樹 寺川能人(HT/木島良輔) MF: 山根巌 茂原岳人 長橋康弘(62分/渡辺匠) 塩川岳人 今野章 中村憲剛(78分/林晃平)
FW: ウィル(HT/松橋章太) 吉田孝行 FW: 我那覇和樹(83分/小林康剛)
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