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 第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
うなる弾丸シュート。セレッソが元旦の国立へ!
第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準決勝 鹿島アントラーズvs.セレッソ大阪

2003年12月27日(土)15:04キックオフ 長居スタジアム 観衆:12,203人 天候:晴時々曇り
試合結果/鹿島アントラーズ1−2セレッソ大阪(前0−1、後1−0、延前0−0、延後0−1)
得点経過/[C大阪]大久保(8分)、[鹿島]野沢(84分)、[C大阪]大久保(114分)


取材・文/中倉一志

 延長戦も既に後半。大久保の両足は既に限界に達していた。後半終了間際には自らベンチに交代を申し出た。「おまえは残っとけ」。西沢の一言で思いとどまったが足はつっていた。そんな大久保の足に徳重からボールが渡る。目の前にはシュートコースが空いていた。迷わず振りぬく右足。ゴールまで約20メートルの距離をシュートがうなりを挙げて飛んでいく。必死で飛びつくGK曽ケ端。しかし、伸ばした両手の先を越えてボールはゴールに突き刺さった。

「疲れがたまった時間帯の中でもあれだけのシュートを打てるということは彼の才能を認めなければならない」。トニーニョ・セレーゾ監督(鹿島)も脱帽するしかなかった。それほど素晴らしいシュートだった。痛みを忘れてピッチの上を走り回る大久保。その上に、次々と選手たちが重なっていく。「危ない場面を何度も凌いで最後に(勝利を)勝ち取った。選手達は良くやった」(塚田監督・C大阪)。C大阪は3度目の国立で初タイトルを目指す。



「ボランチの背後にボールが出たときのケアが甘く、つなげられた部分があった。また、サイドにボールが出たときに2列目からの飛び出しに対するケアが甘かった」(トニーニョ・セレーゾ監督)。不安定な立ち上がりを見せる鹿島に、立ち上がりからC大阪が襲い掛かった。バイタルエリアで大久保が自由にボールを捌き、両サイドを原、酒本が駆け上がる。混乱する鹿島の最終ラインは、トップに張るバロンと、DFの裏へ飛び出してくる大久保、森島を捕まえきれない。

 勢いに乗って鹿島ゴールを脅かすC大阪。的を絞りきれない鹿島。そして8分、早くもC大阪に先制点が生まれた。バロンのポストから、大久保、森島、酒本と展開。酒本がドリブルで右サイドを駆け上がってクロスボールを送ると、中央に走りこんできた大久保が頭で合わせてゴールネットを揺らした。完璧とも言えるゴール。鹿島のDF陣を完全に崩しての見事なゴールだった。ゴール裏に陣取ったピンク色のサポーターから歓声が上がる。

 鹿島相手に圧勝さえ予感させる立ち上がり。しかし、早い時間帯での得点はC大阪イレブンに微妙な変化を与える。守りの意識が働いたのか後ろへ下がって自陣内に閉じこもってしまったのだ。プレッシャーから開放されて自由にボールを持てるようになった鹿島はボールを広く動かしてC大阪の隙を探す。残り時間は80分以上。C大阪は一転して苦境に立たされた。鹿島相手に80分間を逃げ切ることは簡単なことではない。



 しかし、鹿島にはいつもの切れがない。確かにボールは一方的にキープしている。ボールも良く動いている。だが、C大阪の最終ラインが崩せない。前半だけで9本のシュートを放ったが、ほとんどが遠い位置からのもの。決定機を作り出すことができない。立ち上がりのスピーディな展開から、試合は膠着した展開に変わっていく。それでも後半に入ると鹿島が決定機を作り出しが、C大阪はGK下川がファインセーブを見せ、あるいはイレブン全員でボールを追ってゴールマウスを死守した。

 そんな試合は延長戦へ。さすがにC大阪の運動量が落ちる。そして鹿島の攻撃が更に厚みを増す。94分にはフェルナンドが、96分には本山がヘディングシュートを放つ。試合の興味は鹿島がいつ決めるかだけに絞られたように思われた。だが、最後の力を振り絞ったC大阪は、いつまでも決められない鹿島からリズムを奪い返した。その原動力となったのは途中出場の徳重。左サイドを駆け上がってC大阪に攻撃のリズムを作ったのだ。

 そして114分、冒頭のゴールシーンが生まれた。きっかけは布部のパスカットから。自陣深いところでボールを奪うと左サイドの徳重へ。徳重はドリブルで駆け上がってから大久保へ。「とられ方が悪かった」(秋田)。フリーになった大久保へ秋田が付きにいくが、大久保はわずかにかわすと右足を一閃。「蹴った瞬間入ったと思った」(大久保)。Vゴールを確信した大久保は、そのままベンチに向かって走っていた。



 C大阪は決して万全の体制で天皇杯を迎えたわけではない。塚田監督は今大会限りで監督から退くことが決まっており、この日の先発のうち5人もの選手が戦力外通知を受けている。ここまでの試合も苦しいものばかりだった。しかし、それでも全員がひとつになって戦い抜いた。その結果の決勝戦進出。苦しみ抜いてチームは勢いを身につけた。「よし、流れは来てるぞ」。そう言ってロッカールームに引き上げた西沢。目指すは初の頂点だ。

 さて敗れた鹿島。こちらも今シーズン限りでチームを去る秋田とともに元旦の国立を目指したが、残念ながら準決勝で姿を消した。ベスト4という成績は決して恥ずべきものではないが、今大会を冷静に振り返れば課題は多かったように思う。4試合のうち3試合で2失点。さらにボールをキープしながらも相手を攻めきれないという問題も改めて明確になった。着手したチーム改革は決して平坦な道ではない。天皇杯は終わったが、新たな挑戦が始まることになる。


(鹿島アントラーズ) (セレッソ大阪)
GK: 曽ケ端準 GK: 下川誠吾
DF: 内田潤 秋田豊 大岩剛 石川竜也 DF: 喜多靖 鈴木悟 柳本啓成
MF: 青木剛(69分/野沢拓也) フェルナンド 小笠原満男 本山雅志 MF: 布部陽功 久藤清一 酒本憲幸(65分/徳重隆明) 原信生(74分/西沢明訓) 森島寛晃
FW: 平瀬智行(72分/中島裕希) 深井正樹(延長開始/本多泰人) FW: バロン 大久保嘉人
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