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 第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
静岡ダービーを制した磐田、初の元日決戦へ。
第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準決勝 清水エスパルスvs.ジュビロ磐田

2003年12月27日(土)13:06キックオフ 埼玉スタジアム2002 観衆:11,233人 天候:晴
試合結果/清水エスパルス2−4ジュビロ磐田(前2−3、後0−1)
得点経過/[磐田]グラウ(7分)、成岡(11分)、[清水]安(25分、31分)、[磐田]前田(43分)、成岡(58分)


取材・文/西森彰

「残り2試合、力をあわせて監督にタイトルを!!」
「国立」

 サックスブルーのジュビロ磐田サイドのゴール裏が、去り行く柳下正明監督へのプレゼントを要求すれば、オレンジに染まった清水エスパルスのゴール裏では、オレンジ色のボードに元日への想いを白抜きにしたボードが掲げられる。埼玉スタジアム2002で行なわれる静岡ダービーのために集まった観衆は11,233人とやや寂しいが、元日のために東上資金を温存して、お茶の間観戦で自チームの勝利を祈ったファンも多いはずだ。

 リーグ戦では1stステージが2−0、2ndステージが1−0と共に磐田がモノにしている。2本とられている清水は「2試合とも無得点だった。だからこの中間は攻撃を中心にトレーニングに臨んだ」(清水・行徳浩二監督)と気合十分。受けて立つ立場のジュビロも「今日は絶対に厳しいゲームになる。リーグ戦でウチが2試合とっているから、エスパは必ず強い気持ちでこの試合に臨んでくる。それに負けない気持ちで戦ってくれ。そう選手たちには要求しました」(磐田・柳下監督)と戦前から緊張感を持って試合に臨んだ。



 試合開始直後は清水が押し込む場面が目についたが、磐田は相手のミスを見逃さずに先制する。7分、右サイドへ送り込んだボールを、清水のDFが軽いプレーでつなごうとするところを、前田遼二が見逃さずに詰めて掻っ攫う。そしてゴール前で待つグラウへ。ゴールを決めて磐田のフラッグを持ち出すこのエースはこれで2003年の静岡ダービー全試合で得点を決めたことになる。清水の動揺を見透かしたかのように、4分後にも左サイドに流れたグラウを使った成岡翔が、そのままゴール前に駆け込みスコアを加える。「ゴールはどちらも押し込むだけだったので」(磐田・成岡)と控えめなコメントを残した中東帰りの若手は今大会初ゴール。

 2点のリードを許した清水は、右サイドの太田圭輔に攻撃を任せ切りだった三都主アレサンドロが前へ重心を傾けはじめてから、試合の流れを引き寄せる。25分、この試合初めてボールを持ってペナルティエリア内に侵入した三都主を起点に、混戦から安貞桓が蹴り込んで1点差。31分にも三都主の速いコーナーキックを、ニアの森岡隆三が頭でワンクッション入れて、佐藤洋平のファンブルを誘い、最後はまたもや安。清水も短い時間帯で2点を奪い返し、試合は振り出しに戻った。

 追いつかれた磐田より、追いついた清水に勢いが出るのは当然。しかし、ここから磐田の試合巧者ぶりが発揮された。自陣ゴール前で負傷し、担架で運び出された西紀寛が戻るまで、イージーなパスをつなぎながら清水にボールを渡さず、自分たちのリズムを取り戻す。10本いや20本ほどつながれただろうか。時間にして2分程度。しかし、清水の鋭鋒を逸らすこの「間」が勝敗を分けた。息が入って集中の切れた相手に前半終了間際の43分、セットプレーから再び勝ち越し。大勢はここで決していた。



「相手の両サイドをうまく使って攻撃していこう」

 ハーフタイムに柳下監督から送られた指示を忠実に実行する磐田の選手たち。2トップがスペースへ走るのを前提に、後ろの選手からボールが供給される。グラウを起点とする4点目もその形。「コーナーフラッグのスペースにボールを蹴ることをジュビロは戦術的に捉えている。それに比べてウチの選手たちはそういうプレーを『逃げ』と解釈してしまっている。『そうじゃないんだ』とは説明したんですけれど…」(行徳監督)。

 確かに、清水の選手たちにはきっちりとビルドアップしていこうという意識が強かった。しかし、つなぐ意識が強すぎ、味方選手がいるところにしかパスが出ないのだから、守る側に読まれやすい。3バックの横にできるスペースにボールを送り込んで、ディフェンスラインを乱した磐田に比べると、確かに驚きは乏しかった。磐田のディフェンスはボールの受け手を、きっちりとプレスで狙い撃ちにした。

 行徳監督は、平岡直起を左サイドバックに入れて4バックにシステムを変更し、三都主を攻撃に専念させる。さらに太田に代えて平松康平を右サイドに送り込む。磐田は負傷した西を下げて、三都主のマーク役を河村崇大に担わせる。苦しがって中央に流れると、トップ下からポジションを下げた名波浩と、左サイドから横に動いた成岡が挟撃する。左では菊地直哉が平松の動きをケアし、完全な手詰まりに追い込んだ。



「リーグ戦で0−2、0−1と1点も取れなかったジュビロから2点を奪い、一度は追いついた。選手たちは最後まで諦めずに戦ってくれたが、やっぱり国立は遠かった」と試合を振り返った行徳監督。確かに選手たちは2点差のロスタイムでもゴールを目指して食い下がった。しかし、精神面でカバーするには限界がある。特に磐田のように、勝者のメンタリティを身に付けているチームが相手ではそうだ。

 バックスの連携ミスからボールを奪われ、無理なタックルで森岡がイエローカードを受けた場面を含め、選手同士の意思疎通を欠いた場面が散見された。これは今シーズンの度重なるシステム変更、流動的なメンバー構成の弊害だろうか。3−5−2から4−2−4へのシステム変更がスムーズにいかなかった点については「そういったトレーニングをしていないのだから仕方ない」(行徳監督)。チーム戦術の浸透が来年の課題だ。



 一方、勝って国立へ歩を進めた磐田の柳下監督は「今日のエスパは攻撃的で、攻守の切り替えも早く、素晴らしいゲームを展開したと思います。そのエスパルスに勝つことができた。素晴らしい選手たちを嬉しく思います」とコメント。勝者の側から見たポイントは「相手のミスから生まれたファーストチャンスを生かすことができた。後半からは気持ちも入ってチーム一丸となってやれた」ということだ。

「ジュビロのプレッシャーのかけ方がうまかった。(清水は)前の選手の動き出しがなかったために、後ろの選手がボールを持っている時、ボールの出しどころがなかった」(行徳監督)。敵の指揮官に兜を脱がせるほど、成熟した全体戦術を誇るこのチームも、そろそろ世代交代にさしかかる。この黄金世代が唯一、逸し続けているタイトル・天皇杯。磐田にとって、2004年の元日は大きな意味を持っている。


(清水エスパルス) (ジュビロ磐田)
GK: 真田雅則 GK: 佐藤洋平
DF: 池田昇平、森岡隆三、高木和道(89分/北嶋秀朗) DF: 鈴木秀人、田中誠、山西尊裕
MF: 太田圭輔(74分/平松康平)、伊東輝悦、杉山浩太、三都主アレサンドロ、澤登正朗(62分/平岡直起) MF: 西紀寛(75分/西野泰正)、河村崇大、菊地直哉(89分/上本大海)、成岡翔、名波浩 (89分/中山雅史)
FW: 安貞桓、トゥット FW: 前田遼一、グラウ
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