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 サッカーのある風景 03/08/15 (金) <前へ次へindexへ>
 8月はじめの日曜日の練習試合。ゴール前に攻め込んでいる駒林
 (黄色のユニフォーム)。チャンスはかなり作ることができたけど、
 決定力は?

 サッカーのためにテスト


 文/竹井義彦
 年に1回、テストを受けなければいけない。
 この歳になってもテストと縁が切れないというのはなんとも釈然としないが、仕方ない。4級審判員は1年に1度、資格更新研修会があり、ペーパーテストを受けて80点以上とらないと資格を失ってしまうのである。そもそも年間3試合以上の審判実績がないと更新することができず、10試合以上の実績がないと体力テストを受け直す必要もある。

 日本では13万人近くの人が審判資格を持っているらしい。正確な数値を調べることができなかったので、想像でしかないのだが、この数字の8割は4級審判員だろうと思う。ということは、約10万人の人たちが、私と同じように、毎年、資格更新研修会を受けていることになる。なぜ私がテストをと嘆いていたが、この数を思うと特別なことではないんだと考え直さなければいけないかもしれない。

 自分の子どもたちが所属しているサッカーチームのために資格を取ることにしたのだが、たかがチビッコの試合を捌くためとはいえ、4級審判員は日本サッカー協会に認められた資格である。ワールドカップで笛を吹いた岡田さんだって、上川さんだって、Jリーグで笛を吹いたり、旗を振っている人たちはすべからくここからスタートしている。まず4級を取らなければ、3級、2級、1級と階段を上っていくことができないからだ。



 左のものがいままでの審判手帳で、その隣にあるのが今年新しく
 なった物。右の冊子が「サッカー競技規則 2003/2004」。
 審判登録は現住所ではなく、所属チームで登録することになる。私は横浜市港北区のチーム、駒林サッカークラブに所属しているため、横浜一区に所属することになる。この横浜一区の資格更新研修会は毎年8月に行われている。これはFIFAの総会で話し合われたルールの改正が国際的に7月から施行されるためだ。改正されたルールをなるべく早く各審判員に伝えるために、この時期から秋にかけて更新研修会が行われることになる。いつもお盆の時期でチームの合宿があったり、帰省しなければならなかったりと指定された日にいけないことが多いのだが、今回は8月10日の指定日に行くことができた。

 今年は、審判手帳が新しくなったこともあり、受付時に新しい手帳に写真を貼り、審判番号を書き込んでから、研修会を受講することになった。例年だと、更新に伴う手数料などを支払い、真新しいルールブック「サッカー競技規則 2003/2004」を受け取り、受講することになる。ちなみに、私たちに配布されるこの本は、市販されている。大きな書店のサッカーコーナーにいけば見つけることができるはずだ。私は2000年6月に、審判資格を取得したが、その時から毎年新しいサッカー競技規則を更新時に受け取っているので、都合4冊持っていることになる。

 この競技規則は「第1条 競技のフィールド」にはじまり「第17条 コーナーキック」までの規則の他に「試合の勝者を決定する方法」「テクニカルエリア」「第4の審判員」の規定と、オフサイドの図解、得点機会阻止の図解などが掲載されている。また、「競技規則に関する質問と回答」ということで第1条から17条までの個別のケースについてのQ&Aが載っている。また、巻末には日本語版付録として主審と副審のシグナルや、対角線式審判法、規則に改正についての説明や、審判に関する基本規定、審判報告書の書き方などが事細かに載せられている。



 資格更新研修会では、受付が終わるとこの「サッカー競技規則」をテキストとして、新たに改正された規則説明や、間違いやすいポイントなどの講習が行われる。
 サッカーの規則は、突き詰めていくと実にシンプルなルールだといえるのだが、ケースバイケースでリスタートの方法が違うなど、きちんと覚えておかないと対処できないことがあったりする。

 たとえば、選手が他の選手に物を投げつけた場合、乱暴な行為を行ったということでもちろん退場となるが、状況によってリスタートの方法が違ってくる。「サッカー競技規則 2003/2004」p98 に解説されているが、プレー中の選手がペナルティエリア外にいる選手に物を投げつけた場合は、その物が当たったかもしくは当たったであろう場所からの直接フリーキックになる。が、プレー中の選手がテクニカルエリアにいる人に向かって物を投げつけた場合は、ものを投げつけた場所からの間接フリーキックになるのである。

 さらに、インプレー中に、交代要員が相手チームのプレーヤーに物を投げつけた場合は、プレーを停止した時点でボールがあった地点でのドロップボールになる。同じようなファールでもこのようにリスタートの方法が違う。ちなみに、プレー中の選手が主審に物を投げた場合は、その物が当たったか、もしくは当たったであろう場所からの間接フリーキックになる。

 その他に間違いやすいケースとして、間接フリーキックの合図がある。間接フリーキックとなるファールはきちんと定められていて、主審はキッカー以外のプレーヤーがボールに触れるかアウトオブプレーになるまで片手を高く挙げ合図をすることになってる。もし、この合図を主審が忘れてしまい、キックされたボールがゴールに直接入ったらどうなるのか?

 私も迷ってしまったことがあったが、実はこの場合ゴールインは認められずゴールキックで再開される。あくまでも間接フリーキックの反則だから、主審が手を挙げるのを忘れても間接フリーキックのままなのだ。その他、PKを前方に蹴らなかったらどうするのかなどといった実際に現場で起こったらどうするか迷うような点を中心に講習が進み、それからペーパーテストを受けることになる。
 このテスト、80点以上を取らないと再受講しなければならないらしい。幸運なことに、私はまだ不合格になったことがない。



 4級審判員の胸章。試合の時に胸につける。年度によって色が違い、
 胸章の下にその年度が縫い込んである。最新の胸章の数字は「04」だ。
 この後、テスト問題の解説と講義があり、場合によっては体力テストが実施される。冒頭でも書いたが、10試合以上の実績がないと体力テストを受け直さなければいけない。ただ、私が受講した会場では体力テストが実施されないので、体力テストを受け直す必要がある場合は別の場所で受けなければいけない。ほとんどの人は10試合以上やっていて、私もいつも20試合近くは審判をやっているので、体力テストを受け直したことはないし、受け直す人をいままで見たこともない。

 講義が終わると、合格者は新しい審判手帳と胸章を受け取ることができる。出口に合格者の審判手帳が並べられていて、合格していればそのまま帰ることができる。不合格の場合は会場に逆戻りということになる。自分の審判手帳を見つけると、やはりホッとする。ともかく難問ではないにせよ、テストに合格したわけだ。これで、また1年間、笛を吹くことができる。

 審判員の定年は、一級は満50歳となった日が属する年度の最終日(3月31日)となっていて、2級以下については認定する各サッカー協会が、私の場合は神奈川県サッカー協会ということになるが、定めることになっている。何歳が定年だと特に聞かされた覚えはないのでたぶん自分でやれると思える歳まではできるんじゃないだろうか。いくつまで笛を吹けるのかよくわからないが、ともかくペーパーテストに受かることができている間は問題ないかもしれない。しかし、サッカーのために年に1回テストに合格しなければいけないというのは、仕方ないとはわかっていてもやはり歓迎すべきことではない気がする。
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