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 サッカーのある風景 03/09/19 (金) <前へ次へindexへ>
 辻堂杯での表彰式後のスナップ。子どもたちの表情はどこか
 誇らしげだ。

 試合と練習の関係


 文・写真/竹井義彦
 8月24日。
 忘れかけていた夏の暑さをしっかりと思い出すことができた日曜日、みなさんはどこかへ遊びに出かけただろうか? 私はこの日、湘南に出かけていた。歩けばすぐに海が見えるはずの場所にいたが、照りつける太陽の下、汗を流しながら笛を吹いていた。

 辻堂小学校で行われた辻堂杯の決勝トーナメントに参加するために、子どもたちと出かけていたのだ。FC湘南辻堂が主催する、今年で23回目となる歴史のある大会である。6年生大会はすでに別の日程で終わっていたが、3年生から5年生までのチームが、木曜日から土曜まで学年ごとにそれぞれ予選リーグを行い、勝ち上がった3チームが、この日決勝リーグを戦かったのだ。

 夏休み中ということもあり、私たちのチームは子どもたちの参加がすこし少なかったが、最後までボールを追いかけ、頑張ってくれたお陰で予選を勝ち抜き、この日の決勝リーグでも2勝を挙げ、優勝することができた。
 この試合の後、じつはとても困ったことに試合ばかりが続き、まともに練習できたのは9月に入ってから。しかも9月14日だけという有様。試合が続くのは、子どもたちにとっては楽しいことかもしれない。この日のように、勝つことができれば、そこに大きな喜びが加わる。けれど、手放しで喜んでばかりもいられない。やはり練習は大切なことだからだ。



 私がいまの子どもたちの面倒を見る前、長男のチームのコーチをやっていたときは、練習といっても実はなにをさせればいいのかさっぱり判らなかった。私自身、サッカーをやってきたわけではなかったし、たとえやっていたとしても子どもたちに必要な練習がどんなものなのか理解できていなかったから、まともな練習メニューは組めなかっただろう。

9月14日に行われた駒林フェスタの一コマ。チームの文字通りお祭り
の日で、全学年の子どもたちが勢揃いして、午前中はイベントを、午後
には学年同士で試合を楽しんだ。これは、午前中のリフティング大会の
様子。
 そんなときに頼りになるのが本である。
 少年サッカーの練習に関して教本のような存在だったのが、横浜マリノス著編の本だった。基礎編、戦術編、ゴールキーパー、ジュニアサッカーとシリーズで4冊出ている。早速購入して読んでみたが、すでに6年生になっていた長男たちに必要なものはなんなのか、やはりきちんと把握することができず、結局、練習させたのはパスやドリブルなどの基礎の練習とフォーメーション練習だった。対面でパスの練習をさせた後、ドリブルを組み合わせた練習をさせ、フォーメーション練習などをした後、ミニゲームで締めくくる。そんなことしかできなかった。

 いまの子どもたちの面倒を見るようになって大きく変わったことは、なんのための練習をさせるべきなのか、きちんと段階ごとに振り分けてメニューが作れるようになったことだろう。
 小さい頃からの練習ということで、必要になることはなんなのか、そんなことから考えてメニューを作り、練習させるようになった。小学校の2年生の時の練習メニューの数は、全部で57。ウォーミングアップからミニゲームまで、それぞれをメニューにして、データベースとして残してある。

 子どももたちのメニューを作るときのベースとなる考え方は、テレビを通して学んだ。ちょうどワールドカップが終わるまで SKY Perfec TV で放送されていた[ワールドカップジャーナル」という番組があった。毎回ゲストを招き、ゲストのいろいろな話を聞くという趣向の番組だったが、そこに出演していた三浦俊也氏がジュニアサッカーのコーチングについて話をしたときがあった。まさにその話がベースになっている。簡単にいうと、1、2年生は個人戦術を、3、4年生はグループ戦術を、5、6年生はチーム戦術を教えるというものだ。



 いま私が面倒を見ている子どもたちは、この考え方に従い大きな流れに沿って作ったメニューで練習をしている。まずはフィジカル的なメニュー。これはコーンを使ったコースを作り、コーンを跨いだり、バーをジャンプして越えたり、後ろ向きに走ったりしながらさまざまな動きをするメニュー。それに、ボールを扱う基礎的なメニュー、それにキックとトラップ、ボディーシェイプを組み合わせたメニュー、シュートのメニュー、それにミニゲームのメニューなどが中心になっている。とにかく個人戦術をしっかり身につけるという方向が明確になったお陰で、メニューは作りやすくなった。

 もうひとつ、私のメニュー作りに大きな影響を与えた本が中西哲生・戸塚啓著の「ベンゲル・ノート」だ。ちょうどワールドカップの年ということもあり、去年、サッカーに関する、あるいはスポーツに関するいろいろな本が出ていた。暇さえあれば手当たり次第に読んでいった私だったが、そんな中で一番影響を受けてた本の1冊といってもいいだろう。

 ベンゲルがグランパスの監督時代に実際に行ったトレーニングのメモと試合前、試合後の指示などを中心に、現在アーセナルでのベンゲルを書いた本である。ベンゲルはグランパスの時も、アーセナルにいる今も、同じようなメニューで練習しているという。その練習メニューが図付きで掲載されている。



9月15日は、東京のチームの招待試合に参加。江戸川の河川敷の
グラウンドでの試合だった。これは試合前のアップの様子。
 読んだ直後、これはプロの練習メニューなのだ、と思い、子どもたちの練習とは関係ないと正直思っていた。が、その考えは、ある時期を境に大きく変わった。というのも、それまでやっていた練習とチームの現状にちょっとしたギャップが見つかったからだった。

 練習メニューは目的をしっかりと考えて、最適なものを作っている。いや、作っていたという自信があった。が、試合をしてみると、いろいろとほころびが見つかってしまうのだ。それまで、足りていたと思っていた部分が、どうも試合で見られない。たとえば一対一をじっくりとやらせているのに、なぜか相手にアプローチにいけない。パスの練習ではボールに寄ってトラップするメニューをやらせているのに、ボールを待ってしまう。

 試合に勝ってしまうと、こういった点が目に付かないことが多い。が、負けた試合になると目も当てられないことがままあったりする。そんなことが何度かあり、私自身が考え方を変えることにした。試合で見つかった問題点はそれをテーマにした練習メニューを作ればいいのだ、と。

 それをはっきりと認識したのが、去年の秋頃だったろうか。それから、練習するメニューに試合で見つかった問題点を解消するためのメニューが加わるようになった。このメニュー作りに、実は大きく貢献しているのが「ベンゲル・ノート」なのだ。もちろんメニューをそのまま利用するわけにはいかない。けれどあるテーマに対する練習の組み立て方という点では、とても参考になるし、その一部を流用することで効果的なメニューを作り上げることもできるようになる。



 もちろん、去年の練習メニューと今年の練習メニューは当然違う。なぜなら、今年からグループ戦術が大きなテーマとなっているからだ。ただ、去年のような試行錯誤的なメニューは少なくなっているはずなのに、3年生になってからの練習メニューはすでに55になっている。このメニューの数はどこまで増えるんだろう。メニューを考えるのは楽しいことではあるんだが、さすがにちょっと心配ではある。
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