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 サッカーのある風景 03/10/11 (金) <前へ次へindexへ>

 ユースチームに想うこと


 文/貞永晃二
 私は大阪に住んでいるので、京都サンガ、ガンバ、セレッソ、ヴィッセル神戸といったJ1チームの試合がない休日は、JFL、大学、Jのサテライトやユースの試合を観戦することが多い。
  
 昨年はセレッソがJ2で戦っていたので、長居や長居第2で長い永いシーズンの最初から最後まで、すなわち「大勝」の開幕(6−0モンテディオ山形)から「歓喜」の昇格決定(3−0アルビレックス新潟)までを見届けることができた。遡ると一昨年は京都サンガの昇格への戦いのおまけといってはなんだが、ベガルタ仙台の昇格決定の瞬間(1−0京都サンガ)にも西京極で立ち会うことができた。あの金色応援団の皆さんは熱い人たちばかりだったな。残念(?)ながら今季は関西にJ2のチームがない(来年は一つか二つはありそう?)から、「ドラマティックJ2」を観戦するには遠い、遠い他地域へ足を運ぶ必要があるのだ。

 時間的、金銭的に考慮した結果、この夏は、ガンバ大阪ユースの試合を見る機会が多くなった。



 Jリーグ以外のそれぞれのリーグ戦にはそれなりの見所があるものだ。「JFL」では、元Jリーガーに自然と目が行くし、プロ入りに値する実力がありながらサッカーを本職とせず、働きながら好きなサッカーを続けている選手もいる。「大学」ではユニバーシアード代表選手に、Jの「サテライト」では、今季新加入した選手や負傷明けのベテラン選手に注目して見ている。しかし、これらの選手についてはどの程度の能力を持った選手なのかを既に知っている選手がほとんどだ。

 しかし、「ユース」はちょっとこれらとは違うのだ。「伸びしろ」、言葉を変えれば「夢」が感じられるのだ。その中でも、ガンバ大阪のユースは注目の選手がゾロゾロいる。既にトップチーム登録(アマチュア)されているMF寺田紳一、家長昭博、FW三木良太の三人に加え、DF丹羽大輝、野村博司、MF松岡康暢、FW江口正輝など楽しませてくれる選手がいっぱいだ。波に乗ったときの攻撃力はまさに破壊的で、何回か連続ゴールラッシュを見せてもらった。もちろん、本当に同じチームなのかと我が目を疑うような不出来な試合もあるのだが。

 しかし、前途洋々な彼らもすぐにJで出場できるかといえば、「?」がつく。現在のガンバのレギュラーの年齢を考えると生半可なことで追い抜くことはできそうにない。事実、U22代表にも選ばれたDF児玉新も出場機会は少ないし、DF井川祐輔に至っては試合出場機会を求めて広島へレンタル移籍したほどだ。



 Jユースチーム選手のJリーグ入りはほとんどが自チームのみに限定されている。市原(1)、柏(1)、浦和(2)、東京V(1)、横浜FM(2)、清水(1)、名古屋(2)、京都(1)、G大阪(1)、C大阪(1)、神戸(1)以上が今季J1チーム入りしたJユース出身選手の人数だ。この中で他チームのユースからの選手は東京Vユースから神戸入りした保谷吉昭のみ。また、高校卒業時にトップ昇格を果たせず大学進学を選んだ選手が、J1チーム入りすることもある。東京Vの柳沢将之、相馬崇人などがその例だがやはり古巣に呼び戻される形なのだ。このような選択肢の少なさを嫌ってJのジュニアユースを終える際に高校サッカー部チームに進路を変更する選手も多いと聞く。

 つまり、あるJユースの選手を他チームが誘うというケースはごくまれのようだ。Jユースにはチーム独自の「色」があることも嫌われる要素だろう。「プロ入り」というよりもやはり「移籍」という感覚になってしまうのだろう。しかし、横浜FMからFC東京へ完全移籍した石川直宏や同様に東京Vへ移籍した田中隼磨のような例を考えると、どんどん他チームのユース選手を誘うチームが出てくるべきだろうと思う。せっかくの素材を埋もれたままにしているわけには行かないのだ。



 以前はユースチームからのトップチーム昇格時に「該当者なし」では、下部組織の存在意義を疑われることになるから、という理由で無理やりに昇格させてはみたものの、使い物にならず、わずか1年後に解雇されたという例もあった。希望に胸をふくらませた選手は犠牲者だった。
 しかしトップ昇格選手がいない年度に他チームのユース選手を採用すれば、ユース担当指導者は時間と金を使って何をしていたのかと責任を追及されるだろう。そんな責任を負わされたら気の毒だ、というフロントの指導者たちに対する配慮が、他チームのユース選手に触手を伸ばさない理由だとしたら、これは本末転倒もはなはだしい。

 責任追及されることはプロフェショナルの世界では当然だ。現在の状況が大甘すぎるのだ。決してトップ=一軍だけが「プロ」なのではない。フロントも含めてチーム全体が「プロ」になっていかなければ、Jリーグのこれ以上の発展は望めない。そのためにはトップであろうが、下部組織であろうが1度や2度失敗した監督やコーチが2度と働けない、そんなJリーグであってはいけない。何度でもチャレンジできる環境作りが大切だ。先ごろ解任されたが元仙台の清水秀彦氏の監督としての歴史はまさに理想的だ。

 セリエAをTVで見ていると、毎年同じ監督の名前を耳にするが、昨年とはチームが異なる、などということがままある。イタリアのように何度でもやり直しのきく環境があれば、選手を引退しコーチ資格をせっかく取得しながらもどこのチームにも属さず、サッカー解説者としてのみ日々を送る元日本代表選手(日産−横浜FM系が多い)たちも、思い切ってコーチ、監督の道に入っていけると思うのだ。

 今の解説者の立場では、本当の意味での監督批判などはできないはずだ。「ジーコよ、辞任しろ!俺が代わりに引き受けるよ!」くらいのことを言える人物が一体日本に何人いるだろうか。選手経験だけで監督経験のない解説者にはやはり言葉に自信が感じられないとは思いませんか?



 サッカー強国とは異なって、選手はクラブだけではなく高校サッカーをも選ぶこともできるのだから、チームに入ってくる選手の「粒」にはおのずと限界があるはずだ。フロントサイドは毎年トップ昇格は1名でもあればOK、1名もない年があっても仕方ないのだ、というくらいの目先にこだわらない選手育成に関するしっかりした考え方を持って、優秀な選手ならたとえライバルチームからでも採用するというバランス感覚が大切だと思う。

ユースの試合を観戦しながらこんなことを考えていた。
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