topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 サッカーのある風景 03/11/30 (日) <前へ次へindexへ>

 私のフットボール日記 その6


 文/畦地治

「私の審判活動」

 今回は、私と私のチーム(今回は社会人チーム)の審判活動について話をしてみたいと思います。Jリーグなどで審判の問題がよく話題になります。新聞報道を通しての審判問題は選手・監督・チームの側からの「あの審判はおかしい」とかいう報道しか流れていません。審判の側からのコメントは流れていません。審判はマスコミに対しては意見を言えない立場にありますのでそれはしかたがないことです。しかし、審判はどのような気持ちでジャッジを下すのか等はぜひサッカーを愛する人々に知ってもらいたいと思います。今回の日記がそのようになるかどうかは分かりませんが、とりあえず書いてみます。
 手前味噌になりますが、私のチームの審判のレベルはけっこう高いと自負しています。



10/5(日)豊田市民リーグ審判員

 10月5日(日)はうちのチームが審判担当日でした。この日は試合開始45分前に現地に集合しました。4人で着替えをし本部席へ行きました。審判手帳などのチェックを受け、いよいよ審判活動の開始です。

 まずは4人で打ち合わせです。この日の打ち合わせは以下のように行いました。

本日の試合は両チームとも上位進出がかかった試合なので、かなり白熱した激しい試合になるだろう。だからこそいつも以上に毅然とした態度で試合に臨もう。
しかし、審判員も選手もともにサッカーの試合を作り上げる仲間だという意識をもってすすめよう。

と、ここまでは心構えの話。つづいて具体的な話に・・・・

オフサイドは選手がプレーに関与するかどうかを見てから副審は旗をあげてほしい。そのためには、副審はすぐに旗をあげるのではなく一呼吸おいてから旗をあげるように。
またペナルティエリア内での守備側の反則に対しては明らかな反則があった場合にだけ旗をあげてほしい。PKかどうかは試合を左右することになるので主審である自分の目で見て判断したい。
ペナルティエリア付近での反則の場合、旗をあげて、その反則がペナルティエリア内だったときは反対の手を胸にあてて合図してほしい。私が反則ではないと手をふったら直ちに旗をおろして下さい。

 そんなお願いをしたら、第4の審判員から「前回の試合をしたとき自分が主審だったが、Bチームの20番の選手は主審の判定へのクレームが多いので気をつけた方がいい」とのアドバイスを受けました。(この手のアドバイスは「先入観を持って試合に入るのはよくない」との考えもあるようだが、私としてはありがたい情報である)

 さらに副審1(英語ではアシスタントレフリー1:A1と略す)から「ここのグランドは審判席とベンチが反対側にあるので、私がベンチのある向こう側を担当します」との申し出がありました。(通常の試合ではメインスタンド側に審判席とベンチがありベンチの前の側にアシスタントレフリー1が立ち、アシスタントレフリー2がバックスタンド側に立つ。資格や経験が上の人がA1をやる)私もその方がいいと判断し審判席と逆の側を担当してもらうことにしました。



試合開始5分でゲームコントロールを

 試合が始まりました。私は試合開始5分でゲームコントロールできたらその試合はまずうまくいくのではと経験的に思っています。ゲームコントロールとは、1つは、はじめの反則をどのようにとるかということです。これで選手から「今日の審判はよく見ている」とか「不満はあるが、これだけ近くで見られたらしかたがないなあ」と思われたらしめたものです。二つ目は感覚的なものになりますが、気持ちよく笛がふけるかどうかということです。

 この日の試合はとにかく空中戦が多かった。空中戦における反則はなかなか判定が難しいのです。ヘディングで競り合った時に後ろからのしかかったようになった場合、一般のサポーターの方は、のしかかった方が反則に思えます。しかし、前の選手が全然競る意志がなければ前にいた選手の反則です。ここをきちんと見極めると上のレベルの選手は「きょうの審判はいいなあ」と感じてくれます。そのあたりの選手の反応・息づかいはグランド内ではよく分かるものです。

最初のカードを出す

 試合も前半の半ばにさしかかった時に、Aチームの選手が中盤で後ろから両足のタックルをしたので、この試合最初のイエローカードを提示しました。これは当然のことなので、その選手も納得していたようでした。前半の終了まであと8分ぐらいの時にこの試合での2枚目のイエローカードを出すことになりました。Bチームが攻撃にうつり、中盤からペナルティエリア前にいたトップの選手にくさびのパスがでました。当然そこはAチームにとってバイタルエリア(危険地帯)だったのでディフェンダーは激しくタックルしました。

 おもわずトップの選手はゴールを背にして前に倒れました。しかし、私は正当なチャージだと判断し、その選手に左手で起きるように促しプレーを続行させました。今度はAチームの攻撃です。ボールに着いていくために私は走りながらちらっと後ろに目をやると、反則を受けたと判断したBチームのトップの選手は土を地面にぶつけ判定に不満な態度をみせました。そればかりか「いまのは反則だろう」と言いました。

 プレーは続いていたのでアウトオブプレーになった時に、その選手を呼びイエローカードを提示しました。しかしその選手は納得していない様子でした(この選手は試合前の打ち合わせで名前の出ていたBチームの20番の選手でした)。前半で2枚カードを出したことになります。Jリーグのように公式記録員がいるわけではありませんが、カードを出すたびに第4の審判員に口や手で20番にカードを出したと知らせました。両チームともにシュートは決まらず0−0で前半終了

予断

ハーフタイムになりますと主審はセンターサークルの中央付近でボールを持ちしばらく待ちます。何を待つかというと副審2人が脇に来るのを待つのです。主審は2人の副審を従えて審判席(競技場ならば審判控え室)へ戻ります。手前側のタッチラインのところで第4の審判と合流し、4人で退場します。なぜでしょうか?理由は定かではありませんが、私は4人で審判団という一体感を持つためでもあるし、万が一の不測の事態に備えてそろっているのではと考えています。



ハーフタイムでまずすることは

 ハーフタイムになりました。ハーフタイムで審判員は何をすると思いますか?まずは水分を補給してリフレッシュすることです。これは選手と同じです。その後、前半の反省を少しやります。今回場合の反省は2枚出したカードについてでした。ほかの3人の審判員みんなが「当然のカードだ」と言ってくれました。
 そこへこの日の試合監視員(Jリーグでいうマッチコミッサリーのようなもの)であるうちのチームのメンバーがやってきて、「こちらの試合の方がレベルが高くておもしろい。あちらにいても畦地さんのホイッスルの音の方がよく聞こえるよ。などと雑談をし、後半を迎えました。

後半開始に空中の競り合いの反則で少し混乱する

 後半の立ち上がりは気を付けなくてはいけません。何を気を付けるかというと攻守ところをかえるので、それを間違わないようにしなくてはいけないのです。この日はその混乱が起きてしまいました。ことの起こりは以下のようです。

 後半の立ち上がりにハーフライン付近でのヘディングの競り合いがありました。状況としてはFWの選手にに対して、DFが遅れて競りに入りました。当然DFが遅れて入ったので反則です。私はホイッスルを吹きました。両選手とも納得のいく判定なのでもめることはありませんでした。私が反則の手をあげるとその方向が違っていたようで、選手が一斉に「え〜!」と声を出しました。反則に対する不満の「え〜!」ではなく、どちらの反則かに対する「え〜!」だったのです。

 私がFWだと思っていた選手がDFで、DFだと思った選手がFWだったのです。つまり、今回の状況はDFがクリアーするためにヘディングしたときに、おくれてFWが後ろから競りに行ったという状況だったのです。その場は「ごめんなさい」といって手を挙げ直したことで何の混乱もありませんでした。

 問題はその後でした。私の頭が多少混乱し、スローインとかフリーキックの時にどっちに手を挙げるか迷ってしまうのです。そこで私はそのたびに手ではなく口で「Aチームスローイン」と言うことにしました。そのうちに、私の頭の混乱もなくなり落ち着いてきました。試合としてはBチームが1点をとり1−0で終盤を迎えました。そこでこの試合の最大のポイントの場面を迎えました。

2枚目のイエローカードで退場に

 試合終了まで5分を切りました。今回のインジュリータイム(いわゆるロスタイム)を3分と決め、「いつ第4の審判に知らせようか」と思い始めたころです。中盤でAチームの選手が相手陣内に入り攻撃に入り始めたとき。Bチームの20番の選手が猛然と追い、後ろから悪質なタックルをしました。当然反則の笛を吹き、イエローカードを提示し、左手で2回目だと指を2本たて、ゆっくりレッドカードを提示しました。当然のプレーなので本人以外の選手は納得していました。興奮収まらないのは20番の選手です。しぶしぶ退場していきました。

 正直に言います。レッドカードを出したのは、私は今回が初めてでした。自分は「カードをできるだけ出さずにゲームをコントロールしたい」と基本的に思っています。しかし、最近の流れは「カードを出して試合をコントロールする」という傾向にあるのは間違いありません。「いつか自分もレッドカードを出す日が来るのだろうなあ」と漠然と思っていましたが、こんな形でその日が来ました。



試合終了後

 タイムアップのホイッスルをふき両チームの健闘をたたえセンターサークル付近で握手をしました。負けたAチームの選手からも何人かが握手をしてくれました。
 試合終了後に報告書を作成しながら簡単な反省会をしました。試合途中で選手がケガをしたこともありました。その時の対処も問題はありませんでした。途中ベンチからコーチが立ち上がって出てきた時も副審1が適切に対応してくれました。ベンチと審判席は同じのサイドにあった方がいいというようなことを記入し本部席へ提出して本日の1日は終わりました。まずまず納得のできる試合でした。ちなみに本日の審判料は主審2000円で、あとの人が1000円の計5000円でした。この5000円はチームに寄付されました。

おわりに

 今回はあまり注目をあびない審判について書いてみました。みなさんのサッカー観戦の役に少しはたったでしょうか。サポーターからブーイングをあびる審判はみなさんが思っている以上に大変な仕事です。私に審判のありかたを常に教えてくれた審判の大先輩で審判の鉄人といわれる栃木県の奥澤浩氏は「勝ったチームから『今日の審判はよくなかったなあ』と言われたら審判をやめると決めている」と言ってみえます。含蓄のある言葉だと思いませんか?負けたチームから不満の声が出ることはしかたのないことです。その奥澤氏も55歳になり審判としての定年を迎えられました。自分は48歳です。国際審判員の定年は45歳です。どこまで審判活動ができるかはわかりませんが、草サッカーチームを運営している限り一生審判活動とつきあっていくのかなあと思います。

 さて、次回は2003年の総括として、私がどんな試合を観戦したか等を紹介したいと考えています。
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送