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 サッカーのある風景 04/06/19 (木) <前へ次へindexへ>

 サッカーの常識だと思っていたけど


 文/竹井義彦
 ちょっと時間が経ってしまったが、W杯一次予選も3試合が終わり、日本代表は順調に三勝することができた。オマーン戦やシンガポール戦ではずいぶんヤキモキさせられたし、ドキドキ冷や冷やの連続だったが、さすがにインド戦は安心して見ることができた、久しぶりの代表戦になった。
 東欧遠征や、イングランド遠征でも、きちんとした試合ができていたので、それほど心配はしていなかったが、前の2戦が2戦だっただけに不安がなかったといえば、嘘になるかもしれない。もっとも勝ったけれど、手放しで喜べる試合ではなかったと個人的には思っている。ちょっと厳しすぎるかもしれないけどね。

 インド戦での鍵となるのは、試合前からずいぶんいわれていたことだが、早い時間帯での得点だった。スポーツ新聞などでもそういった点は触れられていたので、試合開始早々から、いつ点を獲るのか時間を気にしながら観戦した人も多かっただろう。
 我が家では、日刊スポーツをとっていて、試合の2日前だったろうか「奇策ジーコ日本 インド秒殺」というタイトルで、キックオフ直後にゴール前に中澤が上がって全力疾走する作戦を事細かに説明した記事を読んだ。なるほど対戦相手や試合によっていろいろな作戦を立てることは必要なことだろう、などと思いながら読んでいたのだが、その記事の一節で私の目は点になってしまった。



 その記事には「コイントスから勝負が始まる」と書かれていた。
 コイントスに勝ったら、今まではコートを選択していたけれど、インド戦に関してはボールを選択するという宮本主将の言葉も載っていた。

「?」

 コイントスに勝ったらコートを選択すると、実はルールブックには書いてある。第8条プレイの開始および再開の項だ。試合前にはコインをトスし、勝ったチームが試合の前半に攻めるゴールを決める、と定められている。以前はどちらか選択できたかもしれないが、現在では、コイントスに勝つと自動的にコートを選択することになる。私は2000年に審判資格を獲得したが、その時はすでにコートを選択することになっていた。

 私も子どもたちの試合の時に、コイントスに勝ったら、特定のコートを選べと指示をすることがある。先週、行われた区大会の試合でも、右サイドの子に試合中指示を出したいという理由で、ホーム側のコートを選択するようにゲームキャプテンに頼んでおいた。
 が、キックオフを選択しろという指示は出しことがない。コイントスに勝ったらコートを選択するのが、常識だと思っていたからだ。けれど、こういう記事が載るということは、もしかすると世間一般では、常識だとは捉えられていないのかもしれない。

 改めていっておくが、コイントスに勝ったら前半に攻めるゴールを選択することになっている。
 ただし、PK戦の場合は違う。
 実は、去年までPK戦の前のコイントスで勝った方が先行を選ぶことになっていた。先に蹴った方が有利だから、という理由だったと思う。が、去年のルール改定で、PK戦の場合は、コイントスで勝った方が先に蹴るか後に蹴るかを選べるようになった。



 以前にも書いたことがあるが、サッカーのルールは1年に1度見直されている。その際に、細かなところが変更になることがある。私は4級審判員の資格を持っているので、資格更新のために1年に1度、講習を受けなければいけないからルールの変更点を知っている。が、サッカーファンだからといって、年に1度ルールブックを買うことは確かにないだろう。いや、ルールブックを手に取るサッカーファンが果たしてどのくらいいるのか、数はかなり少ないに違いない。

 スタジアムで試合を見ているときなど、誤解がまだまだ解けていないなと思うルールのひとつに「キーパーチャージ」がある。ゴールキーパー保護のために、キーパーに接触すると反則となるルールだ。が、いまはこの反則は存在していない。
 フォワードがゴールキーパーと接触しようものなら、観客席のあっちこっちから「キーパーチャージ」と大きな声があがることがあった。が、過剰に強い力などで接触するとフィールドプレイヤーでもファールとなるのと同じ基準で、笛が吹かれるようになっている。ゴールキーパーだからという理由で保護されていたのは、昔のことだ。



 観客席からの声で、いまだに一番よく聞くのがオフサイドの判定についてだろう。それも判定が遅いという文句だ。

 これはルールが、正確に周知されていないために起こることだ。オフサイドポジションに選手がいて、ボールが前線に出た瞬間にオフサイドになるわけではない。オフサイドポジションにいた選手が、プレイに干渉するか、相手競技者に干渉する、あるいはその位置にいることによって利益を得る場合にオフサイドになるのだ。極端なことをいうと、オフサイドポジションにいる選手の足元にボールが飛んできても、この選手がボールに触れようとしなければ、オフサイドにはならない。副審は、オフサイドラインをキープしながら選手を見て、その選手がどういう行動をするのか、あるいはどんな展開になるのかを確認してからでなければ、判断できないのだ。

 これは経験してもらえばわかるが、なかなか大変なことである。プレイヤーによっては、わざとオフサイドポジションにいたりすることもあるし、次の展開を想定しながら、判断しなければいけないからだ。しかも、審判資格の講習を受けるたびに、厳密な判定が求められるようになっている気がする。もちろん不要なオフサイドを取らないためである。
 小学生の試合なら、そんなに複雑なプレイは多くない。せいぜい前線に残っている子が動くか動かないか、といったくらいで、意図的にオフサイドポジションにいることは希だからだ。

 が、中学になるとこれがまったく話は違ってくる。ディフェンスとフォワードがオフサイドラインを巡って、駆け引きをしながらプレイしているからだ。この前、副審をやったが、それはそれは大変だった。ボールがまさに蹴られようとしている瞬間に、オフサイドラインに目を転じて、ボールが蹴られる音を頼りにポジションを判断したが、たった一試合だというのに疲労困憊してしまった。中には、わざとオフサイドポジションに立ち、ディフェンスがオフサイドだと勝手に判断してプレイを中断することを狙っているプレイヤーがいたり、オフサイドポジションからラインの中まで戻り、その瞬間ダッシュする選手がいたりと、とんでもなく複雑な動きが展開されるからだ。

 中学ですら、こんなに大変なのに、大人のそれもトッププレイヤーたちの素早い動きであれをやられたら、それは判断も大変だろう。もちろん、場合によってはボールがかなり動いてからオフサイドと判定されることも充分起こりうる。判断が遅いのではなく、オフサイドの判定が複雑で難しいのである。



 毎年、改訂されるルール。
 しかも、ルールによっては日本だけに適用されるものもあり、海外のリーグではOKなのにということもあったり、去年までとは判断基準が違ったりと、まさにルールはどんどん変わっていく。もしかすると、こういったルールを周知させるということも、サッカーのすそ野を広げるためには必要なことなのだろう。
 サッカーのルールブックは市販されている。もし興味がある方は書店で探してみてはいかがだろう。あなたの知らない間にルールが変わっていたなどということが、まだまだあるかもしれない。
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