topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 サッカーのある風景 04/12/23 (木) <前へ次へindexへ>

 積み重ねてきた長い道程


 文/竹井義彦
 先日、パーティがあった。
 駒林サッカークラブ創立30周年を祝うためのパーティである。記念式典と祝賀会の2部構成になっていて、私たちコーチ・クラブ関係者はもちろん、創立の頃からチームを支えてきてくれた人たちや、県内サッカーチームのコーチたちが集まり、すばらしい夜を過ごすことができた。

 30年前に私がなにをしていたかというと、ちょうど浪人中で当たり前の話だが、サッカーとはまったく無縁の生活を名古屋で送っていた。創立者の挨拶では、当時の教え子が壇上に呼ばれて紹介された。実はこの教え子は、現在、駒林のローザという女子チームのコーチをしている。30年といってしまえば簡単に聞こえるかもしれないが、とても長い年月なんだということを改めて私に教えてくれた。



 そんな地域の一クラブはどんな役割を担っているんだろう。
 確かに駒林サッカークラブの卒団生の中にはJリーガーもいる。子どもたちの中には、駒林サッカークラブに入ることがきっかけとなり、さらに高いレベルへと進んでいく子もいる。それはそれで大切な役割のひとつかもしれないが、私たちの目的は、サッカーのプロを輩出するということではなく、もっともっと目線の低いところにあっていいはずだ。
 簡単にいうと底辺を拡げるといえばいいんだろうか、サッカーの楽しさを、おもしろさを、魅力をきちんと子どもたちに、子どもたちのお父さんやお母さんに伝えていくことなんではないだろうか。

 地域のクラブに入部するきっかけはいろいろだ。サッカーが好きだから入ってくる子が多いのはもちろんだが、中にはとにかく身体が動かせればいいという子や、友だちがいるからという子や、他に遊び場がないからなどという子だっている。では、サッカーという競技を通して、ただ仲良く遊べればそれでいいのか、というと、やはり違うはずだ。私たちは、サッカーをきちんと教えていきたいし、そうでなければいけないと思う。

 単に勝つことだったり、強ければいいということではないが、サッカーという競技をしっかりと子どもたちに教えていく必要があるんじゃないかと思うのだ。では、どんなサッカーを教えていけばいいんだろうか?これが、いまの私の大きな疑問のひとつでもある。



 私がコーチのまねごとをはじめたとき、最初にしたことはサッカーに関する本を読んで、知識を得ることだった。なにせ私はサッカーという競技を本格的にプレイしたことがない。いつだったかこのコラムでも書いたことがあると思うが、小学校・中学校とサッカー部のない学校に通っていたのである。小学校のときサッカーの大会には野球部が出場していて、中学校のときはラグビー部がサッカーの大会に出場していた。さすがに高校にはサッカー部はあったが、経験者がたむろする部に素人のまま入るだけの度胸はなかった。そんなわけで、私はサッカーを観ることはしてきたが、プレイしてきたことはないのである。

 これは私だけだと思うが、なにかをはじめるとき、まず本を読んで知識を得るところからはじめるクセがある。頭でっかちになる恐れ大ありなんだが、これも性分なので仕方ない。もちろん、他の学年のコーチや他のチームのコーチなど、身の回りにはいい見本がいっぱいいて、そんな人たちから多くのことを学んできた。そのお陰もあって、いま子どもたちのコーチをなんとか務めることができるようになっている。

 そして、なによりも一番大きな影響を与えてくれたのが、プロたちの試合ということになる。Jリーグはもちろん代表の試合など、実に多くの試合をスタジアムやテレビで観戦してきた。CSなども利用すれば、1年中それこそ飽きるほどサッカーの試合が観られるようになっている。そんな環境のせいもあってか、サッカーをプレイした経験がない私でも、好みのサッカーというものがしっかりとできあがっている。

 ラインはやや高め。コンパクトにプレスをかけ、できるだけ高い位置でボールを奪うと、素早く前線へとボールを運び、サイドから崩していく。そんなサッカーが私の好みである。言葉で説明するのはちょっと難しいが、どちらかというとヨーロッパ系のサッカーということがいえるだろう。ポゼッションを重視するのではなく、ボールを奪うと早くバイタルエリアへと運ぶのが好みだ。



 好みのサッカーはいい。が、これを子どもたちに教えていいものかどうかが、最大の悩みだったりする。だって、小学校4年生がやるには背伸びしすぎている感じがするでしょ?私がコーチをはじめた頃といえば、ストッパーとスイーパーを置いた4バックと相場は決まっていて、ハーフは3人、その前にトップ下がいて、フォワードは2人。判で押したようなシステムで、私もなにも考えずに、このシステムでチームを作ってきた。

 でも、このシステムって、Jリーグのどのチームも採用していない古いスタイルのシステムで、子どもたちに説明してもどうもピンと来ないようなんだよね。中学に上がれば圧倒的に3−5−2でサッカーをやることが多くて、中には4−4−2を採用して、きっちりと組織を作るところもあるぐらい。ストッパーとスイーパーを置いた4バックなんて影も形もないわけで、なのにそんなシステムでチームを作っていいものかどうか。

 結局、私がどうしたかというと、子どもたちのポジションへの適正とその力から、いまコーチしているチームの特徴を活かした、いや、活かしているつもりといった方が正しいかもしれないシステムでチームを作っている。ちょっと変形の3−5−2。センターバックはいなくて、ここにリベロを置いていて、前掛かりになった時には、このリベロの子はどんどん上がっていき攻撃に参加しちゃう。だから、試合相手によっては2バックになったりすることもある。



 でも、いつもいつもつきまとうのが、こういうシステムで本当に子どもたちのためになるんだろうかという疑問。こればっかりは誰も答えてはくれない。もし、答えが出るとしたら、いまの子どもたちが卒団して、中学に進学したり、さらに大人になったときにサッカーとどうやって付き合ってくれているのかを知ったときになるのかもしれない。

 私が抱いているこうした疑問は、きっとこの駒林サッカークラブができたときから多くのコーチたちが抱いてきたことに違いない。そんな答えを見つけたのか、それとも見つけている途中なのか、ともかく30年積み上げてきたクラブの歴史は、やはり重いものなんだと思う。私がこの先いつまでコーチを続けることができるのかどうかよく判らない。けれど、せめてこの答えだけは知りたい。いつかは知ることができると信じて、とりあえずコーチしていこうと思う。
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送