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 福岡通信 01/02/02 (金) <前へ次へindexへ>

 福岡の夢を乗せて地獄のキャンプ開始


 文/中倉一志
 泣く子も黙るアビスパ福岡恒例の「地獄のキャンプ」が29日、宮崎市の木崎浜海岸などで幕を開けた。「フィジカル、技術、戦術ともにバランスのとれたキャンプにしたい。でも、最初のキャンプだから体力面充実の比重が高まるね」と語るピッコリ監督の言葉通り、そのメニューはハードそのもの。午前、午後の2部制で行なわれるトレーニングはフィジカル中心で、昨年同様、この時期に徹底的して選手たちを鍛え上げようというものだ。

 その意気込みの表れか、トレーニングは初日からいきなり7時間半にも及んだ。午前8時から始まったトレーニングは、砂浜トレーニング、クロスカントリー3km×4本、そして筋力トレーニングを行って合計5時間。午後からは、ピッコリ監督自らがアルゼンチンから持ってきたという、縦50p、横70pのミニゴールマウスと跳び箱8個が登場。2時間半に渡って汗を流した。それでもピッコリ監督は「まだ初日だからね」と涼しい顔。「吐くまでやる」というのが冗談に聞こえないから恐ろしい(笑)。

 そんな中でいきなり存在感を見せつけたのが、チーム最年長となる三浦泰年。クロスカントリーの3本目で、若手の平島をゴール直前でかわして1位でゴール。「だてに鳥取に行っていたわけではない」と、鳥取の名門ジム「ワールドウィング」での自主トレの成果が表れたことを強調していた。今年で36歳になる三浦泰年。決して長いとはいえない残りのサッカー人生を全力疾走する気構えだ。

 ベテランの頑張りを見せ付けられては若い選手も負けてはいられない。翌日のランニングで先頭にたったのは中払。そして、1977年生まれの選手たちで結成した「77年会」のメンバーが続く。福岡が上位進出を果たすためには若手の頑張りが不可欠。それは、「77年会」のメンバーも十分理解しているようだ。「ベテランと上手く融合できれば盛り上がるはず」とは久永。互いに刺激しあって、キャンプはまずまずのスタートを切ったようだ。



 また怪我か心配されていたビスコンティは、母国アルゼンチンで右ひざの手術を実施。別メニューながら順調な回復を見せている。現在は、ベスト時よりも体重が3kgオーバーしている状態だが、「いまできる範囲のことをやろうと思っている」と焦りはない。照準は開幕戦。宿舎から13km離れた練習場へ自転車で通ったり、海中にひざまで使って歩行する「海中トレーニング」で、じっくりと回復に努めている。

 そして、長い間多くのサポーターを心配させた山下が、途中参加ながら宮崎に合流するといううれしい情報もある。昨年の6月下旬に取材で山下を訪れた時には、シドニー五輪出場に意欲を見せていたのだが、その後、思った以上に治療が長期化。博多の森で福岡の試合を観戦しているのを何度も見かけたが、脚を引きずりながら歩く姿が痛々しかった。その山下がようやく復帰の兆しを見せている。今年こそはその才能を覚醒させてくれることを期待したい。

 こんな今年の福岡の中心となるのは、やはりベテラン勢。しかし、上位進出を目指し、そして優勝を争うためには、久永、中払らに代表される「77年会」のメンバーの更なる成長が不可欠だ。昨年は、ベテラン勢の活躍に支えられて進境著しい活躍を見せた若手選手たちだが、今年は、その若手が中心になることが求められている。自主トレでは「代表を狙う」と発言した久永。連日中心になってチームを引っ張る中払。彼らも、そのことは十分承知しているようだ。

 更に、牛鼻、小森田らの若い選手がレギュラー獲得競争に顔を見せる必要もあるだろう。ヴィラジョンが以外にこれといった戦力補強が出来なかった今シーズンは、選手層の薄さは否めない。それをカバーするためにも大きく成長する必要がある。石丸の京都へのレンタル移籍により、この2人のリーグ戦出場の機会が増えることが予想されるが、その時どれだけのプレーができるのか、今年の大きなポイントになるかもしれない。



 様々な思いを胸に秘めて、来るべきシーズン開幕に向けて順調な調整を続ける福岡。しかし、そんな福岡に対し敢えて苦言を呈するとすれば、それはフロントの補強の失敗だ。逸材といわれた国見高校の大久保はC大阪との競争に敗れ、同じく国見高校の松橋の獲得にも失敗。京都を離れたカズの獲得競争では対応の遅れが最後まで響き、新聞紙上で噂された神野は大分へと活躍の場を移した。新加入選手はヴィラジョンがと高卒ルーキーの6人だけだった。

 更には、昨年契約した若手選手のほとんどを解雇するという事態が重なり、地元紙は「補強に一貫性欠く」と指摘した。移籍や契約問題は非常にデリケートな問題でもあり、ことの真相を正確に掴むことは出来ないが、横浜GK榎本の獲得に失敗すると、一度解雇通告をした塚本と再契約。カズの獲得騒動では、新聞紙上で発表されるチーム関係者の発言が統一性に欠ける等、補強に関する対応がドタバタした感は否めなかった。

 また、スポンサー収入が減収になるという、やむを得ない事情があるにせよ、チーム史上最高の観客動員を記録し単年度黒字を達成したにもかかわらず、新年度の予算を削減せざるを得ないという事態も引き起こした。こうした事情も、補強活動に大きな制約を与えたものと思われるが、それにしても、ある程度の結果を残したにもかかわらず、経営を縮小するというのは簡単に理解できるものではない。

 「身の丈経営」は必要なことだ。しかし、収入の拡大を伴っての「身の丈経営」でなければ、チームは縮小に向けて進むだけだ。新たなスポンサーの確保が出来ないのであれば、新しい収入の道を模索しなければならない。それは、そう簡単に実現できるものではないだろう。しかし、ピッコリ監督をはじめとするスタッフや選手たちは、自らの手で自分たちを変身させて見せたのだ。今度はフロントが変身してみせる番ではなかろうか。



 しかしながら、与えられた環境の中で出来うる限りの努力をし、最大限の結果を残すのもプロとしての仕事。反省すべきは反省すべき点としてその改善に努めなければならないが、今シーズンの体制が固まった今は、目の前の目標に向けて最大限の努力を行なわなければならない。目指すは、年間を通してコンスタントに結果を残すこと。そして、優勝を目指して戦うことだけだ。そのための「地獄の合宿」でもある。

 恒例の福岡市東区の筥崎宮での必勝祈願を行なった際、奉納された横幅1メートル大の絵馬には「めざせ 2001年 初優勝」の文字が書き込まれていた。そして、真鍋純哲社長は、「昨年の後期は、皆様方ご存じのように、かつてない6位という成績をあげました。一時は4位までいきまして、優勝も視野に入れるような成績を上げたわけでございますが、今年はこれを上回る成績を上げてもらいたいと思っております」と語った。

 日本代表クラスの選手や、実績のある選手の移籍が目立つ今シーズン。昨年とメンバーがほぼ同一なのは、鹿島、磐田、そして福岡だけだ。しかし、明確な目標を掲げた今、あとは自分たちの力を信じて戦うしかない。確かに補強には失敗したかもしれないが、福岡には厳しい昨シーズンを戦い抜いた選手たちがいる。そして、博多の森で熱い声援を送るサポーターたちがいる。全員の力を結集さえすれば、昨シーズン以上の成績を上げることは十分可能になるだろう。

 開幕まで後1ヶ月あまり。長かったシーズンオフも間もなく終わり、また博多の森の熱狂が帰ってくる。90分間、衰えることなく相手チームに襲い掛かるイレブン。立ちっ放しで支持を送り、ベンチの前で選手とともに戦うピッコリ監督。それを支えるスタッフ。そして、Jリーグで1、2を争う熱狂的な応援。あの興奮がもうすぐ博多の森に帰ってくるのだ。「俺が町、博多のクラブ」がホームで並み居る敵をなぎ倒す。今年もそんなシーンを見たいものだ。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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