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 福岡通信 01/02/09 (金) <前へ次へindexへ>

 新チーム始動。福岡県高校サッカー新人大会


 文/中倉一志
 2000年度の高校サッカー界は、圧倒的な存在感を見せ付けた国見高校が8年ぶりの優勝を遂げて幕を閉じた。将来が嘱望される大久保、岡野(浦和)よりも早いといわれる松橋を中心とした攻撃力はもちろん、豊富な運動量に支えられた激しいプレスで相手の攻撃を封じ込めたサッカーは他校を圧倒していた。第63回大会に島原商業が九州勢として初めて優勝してから17大会で8回目の優勝を果たした九州勢。その強さは他地域を圧倒している。

 その全国高校サッカー選手権からまだ1ヶ月足らず。国見の活躍と優勝の興奮が冷めやらない中、九州の各県で「九州高校サッカー新人大会県予選」が開始され、早くも新しいチームが始動した。シーズンの終わりは、新しいシーズンの幕開けを意味する。ある者は更なる栄光を目指して、そしてある者はかなわなかった夢を求めて再び戦いの日々が始まる。新たなメンバーによる新たな目標へのチャレンジ。全てはここから始まることになる。

 福岡県大会に駒を進めてきたのは16校。北九州の本城陸上競技場を中心に、1月28日から2月4日の日程でシーズン最初の優勝校を決めるべく熱い戦いが展開された。ベスト4に進出したのは東福岡、東海第五、筑陽学園、小倉の常連校。それぞれが危なげなく勝ち進んできた。新チームとして臨む初めての大会ということもあってどのチームも未完成だが、それでも、それぞれのチームカラーが受け継がれているところは、さすがは常連校と言うべきなのだろう。

 準決勝までの戦いで注目を集めたのは筑陽学園。2試合を消化して10得点無失点を誇る攻撃力は今大会随一と言って良く、MF栗橋を中心とした攻撃は、今大会では最も完成度が高い。また名門東福岡は線が細い選手が多いものの、ショートパスをつないで両ウィングがサイドをえぐるパターンはいつもの通り。そして東海第五は、前へ、前へという気持ちが溢れるサッカーを展開。やや強引な縦への突破はすっかりお馴染みのパターンだ。



 さて、準決勝では長年にわたり福岡の高校サッカーを引っ張っている東福岡と東海第五が激突した。東福岡は中盤でショートパスをつないでから、両サイドに大きく開いた2トップの池元と首藤にボールを展開。得意のサイド攻撃で活路を見出す。対する東海第五は極めてシンプルな戦いでこれに応戦。ボールを奪うと1トップ気味の米倉がDFの裏を狙って飛び出し、ここへボールを供給するという攻撃に徹している。

 前半、ペースを握ったのは東海第五だった。攻撃のパターンは、とにかく裏を狙う米倉にボールを放り込むというシンプルなものなのだが、そのスピードと迫力は中々のもの。東福岡のDFは繰り返される放り込みを止めるので精一杯で、次第に最終ラインが下がりはじめる。そんな東福岡に対して中盤から激しくブレスをかける東海第五がゲームを支配。そして前半の15分、米倉が右サイドを突破して折り返したボールを、中央で待ち構えていたFW新田が頭で合わせて先制点を奪った。

 更に前半32分には左からのCKにDF小石が頭で合わせて2点目。勢いを増す東海第五の攻撃についていくのが精一杯の東福岡に勝機はないかのように思われた。しかし、さすがは東福岡。後半に入るとまるで見違えたように反撃を開始する。後半開始直後の41秒、東海第五のGKのクリアキックが池元に当たって、そのままゴールの中に跳ね返るというラッキーな得点で1点を返すと、続く後半3分にはFW首藤が右サイドを突破。最後はクロスボールを受けたMF新川が同点ゴールを決めた。

 わずか3分で追いついた東福岡。ここからは一方的な東福岡のペースになっていく。システムを3バックに変更した東福岡は、かえって役割がハッキリしたのか米倉の徹底マークに成功すると、両WBの攻撃参加により得意のサイド攻撃で東海第五を圧倒。東海第五にチャンスらしいチャンスを与えない。しかし後半の21分にオウンゴールで手痛い3失点目。逆転を目指して、その後も激しく攻め立てたが、結局ゴールを奪えずに準決勝で敗退した。



 準決勝から3時間後に行なわれた決勝戦では、東海第五と筑陽学園が対戦した。ともにシンプルな戦いをする両チームは非常に前へ行く意識が強い。中盤での横パスはほとんどなく、縦へ速い攻撃は共通の特徴でもある。しかし、両チームで違っていたのが両サイドへの意識だった。CBの裏のスペースへボールを放り込み、そこへFW米倉が飛び込んでいくという東海第五の攻撃に対し、筑陽学園のそれは、ポストに当ててから両サイドへ展開するというもの。同じ縦へ速い攻撃でも、その内容は大きく違っていた。

 そして、なにより両チームの差を際立たせたのが筑陽学園のMF栗橋の存在だった。3−5−2システムのトップ下に位置する栗橋は攻撃の起点として大活躍。栗橋が中盤の高い位置でタメを作ることによって、筑陽学園は幅広い攻撃が可能になっていた。栗橋を経由して左右に供給されるパスは、東海第五のDFラインを何度も切り裂き決定的なチャンスを演出する。ゲームは序盤から筑陽学園が圧倒的に攻め込むシーンばかりが目立っている。

 完全なハーフコートゲームとなった試合は筑陽学園の独壇場。東海第五は前半は僅かに3本しかシュートが打てない。筑陽学園にいつゴールが生まれてもおかしくない展開だった。しかし、ここで東海第五GK長濱がファインセーブを連発。前半は0−0で折り返した。後半もハーフコートゲームは変わらない。しかし、またもや長濱がファインセーブでゴールを守る。数え切れないほどの決定機を決められない筑陽学園に嫌な雰囲気が流れ始めた。

 しかしそんな時間帯に筑陽学園はようやくゴールを決める。MF志田がドリブルで右サイドを突破。そこからの折り返しを栗橋がヘッドでゴールネットに突き刺した。なおも攻撃の手を緩めない筑陽学園は後半の28分、今度は左サイドを突破したFW原田のセンタリングにMF原が頭であわせた。後は無理せず守りを固めてカウンターを狙うだけ。高校生とは思えない落ち着き払った試合展開で東海第五を下して、シーズン最初のタイトルホルダーになった。



 シーズン最初の試合ということもあって、どのチームも組織としての完成度は低く、まずは試運転といった感も強かったが、そんな中で筑陽学園の戦い振りは群を抜いていた。大会を通じて感じられた余裕ある戦い振りから見ても、選手たちにも大きな自信のようなものがあったのだろう。確かに縦に早い攻撃を展開するのだが、決して単調にならず、そしてコートを大きく使うプレーは、現段階では頭ひとつ抜け出しているようだ。

 しかし、シーズンは長い。他の強豪たちもこのままでは引き下がるはずはない。東福岡は線の細さが目立ち、激しくプレッシャーをかけられるとパスをつなげないという欠点を見せたが、それでも波に乗った時の組織的な攻撃はさすがと思わせるところもあった。組織力で戦うチームだけに、まだチームとしての完成度の低いこの時期での不利は予想されていたこと。シーズンが進むに連れて、いつものような華麗なサッカーを見せてくれるはずだ。

 また今回の東海第五は、CBの裏に放り込んで、そこへタイミングを見計らってFW米沢が走り込むというパターンに終始していたが、とにかく前へ前へと進む迫力は群を抜いていた。もう少しサイドへの意識がついてくれば、特徴であるアグレッシブに前へ出る姿勢が生きてくるはず。こちらもシーズンが進むに連れて、もっと迫力のあるチームに仕上がってくることだろう。昨年は4年ぶりの全国大会出場を果たしたが、今年も有力候補であることには変わりない。

 今大会の上位2チームは、17日から行われる九州航行サッカー新人大会に出場する権利が与えられた。各地で行なわれた予選では、国見(長崎)、大津(熊本)らの名門校も九州大会への出場権を獲得している。高校サッカー界をリードする九州の今年の力関係を占うことになるであろう九州大会は見所の多い大会になりそうだ。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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