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 福岡通信 01/02/16 (金) <前へ次へindexへ>

 早く来い来い、開幕戦


 文/中倉一志
 福岡の冬は寒い。天気予報フリーク(そんなものがあるのだろうか・・・笑)の方ならご存知だと思うが、福岡の毎日の最低気温は東京のそれよりも低いことが多いのだ。照りつけるような強い日差しと、じっとしていても暑い夏と比べると信じられないような話だが、日本海に面している福岡の天候は、日本海気候の特徴を強く有しているため、朝晩の冷え込みがかなり厳しい。そして、南に位置しているとは思えないほどの寒さが続く。

 それでも、日に日に長くなる日差しとともに心なしか寒さは緩み、季節は確実に春を迎えようとしている。そんな季節と呼応するかのように、Jリーグの各クラブのキャンプも、シーズンインに向けて順調な仕上がりを見せているようだ。2月下旬から各地で始まったキャンプは、初期の目的であるフィジカル面での強化を終え、チーム作りという第二段階にはいっている。そして先週から各地でトレーニングマッチが行われるようになった。

 そんな中、アビスパ福岡も順調なキャンプを過ごしているようだ。宮崎での一次キャンプでは、ベテラン組の怪我や薄い選手層の影響で、戦術面でのトレーニングが十分に出来なかったということもあったが、フィジカル面での強化は狙い通り。選手全員で走った2000qにも及ぶ走行距離は、選手たちにシーズンを乗り切る体力を蓄えさせたばかりか、昨年を上回る強靭な肉体を与えている。仕上げはこれから。あとは予定されているトレーニングマッチでチームとしての戦術面を強化していくことになる。

 そして14日、福岡は博多の森で柏とトレーニングマッチを行った。まだ戦術面を問う段階ではないが、中払、久永らが切れのあるプレーを披露。今シーズンの飛躍が期待される小森田、ルーキー福島らも元気なところを見せた。ただ、試合は終了間際の小競り合いで異例の没収試合となるおまけつき。これも気合の入った証拠と考えたい。



 さて、そんな福岡に嬉しいニュースが飛び込んだ。博多の森球技場には1800席のシーズンシートが用意されているが、既にその3分の2が売れているというのだ。地元スポーツ紙が報じたところによると、現在売れている同シートは1200席。これは昨年同時期と比較すると2倍にあたる。しかも、シーズンシート購入の希望は後を絶たず、さらに売上は伸びそうな気配。チームは急遽シーズンシートを2000席に増加したが、これもシーズン前に売切れてしまいそうだ。

 チケットの売れ行きが好調なのは、昨シーズン、2nd stageでチーム史上最高順位の6位に躍進したことがひとつの要因だ。しかし、なによりも、その原因は福岡の戦い方によるところが大きい。昨シーズンのホームゲームの成績は8勝7敗。しかし90分間で敗れたのは3度だけで、2nd stageに限ってみれば僅かに1試合だけに過ぎない。そして、磐田、柏、清水といった強豪を完璧とも呼べる戦い振りで破り、Jリーグチャンピオンの鹿島をあと一歩のところまで追い詰めた。

 こうした最後まであきらめない戦い振りと、Jリーグの強豪と呼ばれるクラブに真正面から戦った姿にスタンドは沸きあがり、いつしか、スタジアムには選手、スタッフ、そして観客が一体となって戦う雰囲気が出来上がっていった。そして、それが更に多くのファンにスタジアムに足を運ばせることとなったのだ。シーズンシートの売れ行きが好調なのは、福岡らしい戦いを今年も見たいとする気持ちの表れだろう。

 昨年の2nd stageでは平均観客動員数で17,000人を超えた福岡。その熱狂振りは、Jリーグの中でもトップクラスだ。ホーム最終戦で、「サッカーというのは一つの鎖。声援が選手たちを勇気付け、そして、選手たちのいいパフォーマンスが観客の声援をより盛り上げる」とピッコリ監督は感想を述べたが、この関係は、福岡が更なる飛躍を遂げるためには欠かせない。そしてサポーターは今年も選手と一緒に戦う構えを見せている。



 そして嬉しいニュースがもう一つ。「U−20サッカートーナメント香港2001」に派遣されるU−20代表候補として、福岡から平島と小森田が選出されたのだ。今回の選出メンバーは35人。16日から始まる静岡・清水キャンプで23人に絞り込まれ、2月23、25日に行われる大会に臨むことになる。2人ともU−20代表メンバー入りには意欲的。香港遠征メンバーはもちろんのこと、今年開催されるワールドユースへの出場も視界に入れている。

 選手層の薄さが否めない福岡にとって、レギュラーに定着した平島と、今シーズンの飛躍が期待されている小森田が、調整の最終段階でチームを離れることは、チーム戦術上大きな影響を与えかねない。しかし、それでもなお、彼らがU−20代表合宿に参加し、代表に選出されることは、彼ら個人だけではなく、チームにとって大きな力となることは間違いない。まだ若い彼らが大きく飛躍するには大きな刺激と経験が必要だからだ。

 昨年の8月以来の召集となった平島は切れのある攻撃参加が持ち味の選手。今回の選考理由もその攻撃力を買われてのものだが、守備面ではまだまだ課題が多い。ルーキーながら鋭い攻撃参加で博多の森を沸かせた平島も、今年は相手チームから研究されることは必至。彼の持ち味を活かすためにも守備力の強化は欠かせない。そんな彼が、違った環境に触れることで何かのヒントが得られれば、チームにとってもこれ以上の収穫はない。

 そして小森田にとっても、同じ年代の候補選手たちと競い合うことは大いなる刺激になるはずだ。アジアユース選手権に出場したMFは9人。それに対して、今回候補選手に選ばれたMFは17人もおり、単純に計算すると2人に1人が落とされるという厳しい戦いが待っている。その能力は高く評価されているものの、まだどこかに幼さが残る小森田。同年代の選手たちと激しく競争することで精神的に一回り大きくなれれば、レギュラーの座も遠くはない。そしてそれは、福岡にとてもバックアップメンバーの充実につながるのだ。



 ところで今年の福岡は、モントージャに代わって加わったヴィラジョンガと、高校生ルーキー以外にはこれといった補強が出来ていない。各クラブが積極的なチーム補強を行った今シーズンは、そういった意味では厳しい戦いが予想されている。数々の修羅場をくぐってきたベテラン勢は計算できるだろうが、対戦相手からのマークは激しくなることは間違いないし、レギュラー陣の怪我や、出場停止の時の選手層の薄さが気にかかる。

 しかし、補強というものは、ただ選手を取ってくれば良いというものではない。それはチームを強くするために一つの手段であり、それ自体が目的ではないのだ。最も優先されるのはチームを強くすること。昨年はフルシーズン活躍できなかった中払がフル出場を果たし、小森田らをはじめとする若手選手がレギュラーの座に迫るほどに成長すれば、チームは確実に成長する。また、山下がシーズン中に復帰できれば、それもプラスに作用する。現有戦力のままでも、やれることはたくさんある。

 様々な事情があったのだろうが、確かに福岡の補強活動は決して誉められたものではなかった。しかし、移籍市場が沈静化した今、失敗を悔やんでも仕方がない。新聞紙上では、ピッコリ監督のフロント批判という記事が目に付くが、彼はただ文句を言うだけの監督ではない。改善すべき点はハッキリと意見を言うが、だからといって、それを言い訳するような監督ではない。言うべきは言うが、やることはやる。今年もそれを実践してくれるはずだ。

 開幕まであと3週間。ピッコリ福岡は、必ずチームを鍛え直し、3月10日の博多の森に、更にグレードアップした姿を見せてくれるに違いない。それを信じながら、福岡の調整振りをチェックするというのも、この時期の楽しみ方だ。もっと勝てるに違いない。いや、もしかすると厳しいかもしれない。そんな期待と不安が入り混じる3週間。しかし、福岡は今年もやってくれるはずだ。早く来い、来い、開幕戦。彼らの活躍する姿を見るのが待ち遠しい。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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