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 福岡通信 01/02/23 (金) <前へ次へindexへ>

 ちかっぱアビスパ


 文/中倉一志
 毎週木曜日の午後8時。軽快な音楽とともに若い女性の声と、野太い(失礼)前田選手の声が電波に乗って流れてくる。その名は「ちかっぱアビスパ」。地元のコミュニティFM局であるFM mimiが1月から放送を開始したアビスパ福岡の応援番組だ。「ちかっぱ」とは、福岡県南部の方言で「めちゃくちゃ」とか「とっても」という意味。「おらが町のクラブ」アビスパ福岡を徹底的に応援しようという趣旨で立ち上がった番組だ。

 コミュニティFM局とは、市町村の一部を区域とする小規模FMで1992年に制度化。地域に密着した新鮮な情報を発信することを目的としたもので、FM mimiは2000年3月3日に福岡市内では2番目のコミュニティFM局として放送を開始した。「みんなの声を集めて行動を起す。みんなで考える。みんなのための、未来のための地域社会やコミュニティを作る放送局」が、その設立動機。「空中公民館」をキャッチフレーズに、地元に密着した情報を積極的に発信している。

 そんな放送方針と、常日頃からアビスパをもっと地元に密着したクラブにしたいと考えていた前田選手の考えが一致した。前田選手は言う。「FM mimiの社長と偶然お目にかかることがあって、コミュニティFMという地域密着型の放送という理念が、Jリーグの理念と方向性が一致しているということで盛り上がった。アビスパの力になることが出来るんじゃないかと」。そして、そのための手段、みんなが参加する場所として番組が生まれた。
 番組を支えるのはパーソナリティの前田選手と、公募によって集められた約30名のボランティアスタッフ。アビスパサポーターだけでなく、サッカーは知らないけれど、自分たちの手で地域住民のための番組制作に携わりたいという熱い思いを持った人たちも集まった。企画・運営・パーソナリティ、そしてミキサーまで、全てをボランティアスタッフでまかなう。そして、毎週アビスパの選手をゲストに招いて楽しいトークを繰り広げている。



 ボランティアスタッフは4グループに分けられ、それぞれのグループにはアビスパの頭文字をとって、アバウトエンジェルス、ヴィエント、スーパーワンダース、パラサイト蜂というグループ名が付けられている。この4グループがローテーションを組んで、番組の制作に当たっているのだが、全く違うカラーを打ち出すそれぞれのグループが作る番組は多種多様にわたり興味深い。男っぽい雰囲気を醸し出す博多の森とは違って、ボランティアスタッフの大部分が女性であるのも特徴のひとつだ。

 取材にお邪魔したのはヴィエントの収録日。また、翌週の収録に備えてスーパーワンダースも熱心な打ち合わせを行なっていた。全てが手作り。ゲストの選定から、各種コーナーの企画・運営を、進行表と睨みながら進めていく。とにかく熱心だ。7時から始まった収録・打ち合わせが終わり、ボランティアの全員が引き上げた時には時計の針は10時を回っていた。

 「僕はコミュニティラジオ局として町おこしができればいいと思っているし、興味を持って何かを作ってみたいと思って参加している人もいる。サッカーファンだけじゃなく、いろんな人がどんどん参加することによって裾野が広がる。サッカーというフィルターを通して、地域の人たちが遊びにきてくれるようなものになっていけばいい。サッカーって知らないんだけれど、どんなスポーツなのって興味を持ってくれるというのが必要だと思う」。ボランティアの1人は地域住民が作る番組の意義をこう語ってくれた。

 また、全くサッカーのことを知らないというある女性は、次のように話す。「相手の顔が見えない媒体で、私の気持ちをどこまで伝えることができるんだろうって思ってたんです。それで現場に参加させてもらって感じるのは身体の温度が上がるということ。リスナーの人たちに、みんなで作っているっていう熱い温度を感じてもらえたらいい。励ましの手紙をもらうと、自分の気持ちが伝わっているんだと思って言葉にならないっていうか、すごく幸せというか、こういう機会があることをありがたく思っています」。



 様々な人たちが参加して作る番組。そこにはサッカー番組というメディアを通してひとつのコミュニティが出来上がりつつあるのを感じることができる。アビスパの応援番組というものがなければ知り合うこともなかったであろう人たちが、仲間として触れ合いコミュニケーションを取る。年齢差も性別も関係がない。ひとつのものを作り上げたいという純粋な気持ちだけが、みんなの気持ちをひとつ一つにしている。これは素晴らしいことだと思う。

 しかしその一方で、純粋なサッカー番組としてみた場合、多少物足りなさを感じないわけでもない。これからどんな方向に持っていくのか、ボランティアスタッフにアドバイスを送る中野プロデューサーに聞いてみた。「地域に密着したチーム作りのお手伝いができれば、地域の人を巻き込んでアビスパを一緒に応援してもらうというのが目的です。今は、サッカーを知らない人たちをまず巻き込もうという段階。実際、開幕戦をみんなで見に行こうという自主的な計画もあります」。

 「まずはボランティアで参加しているサッカーを知らない人たちにも、番組を聞いてくださっている方にもアビスパを知ってもらって、『とりあえず見に来んね』ってみたいな感じでやってます。身近に感じてくれて、隣のお兄ちゃんがやっているから無条件に応援したくなるような、そんな感じで好きになって、どんどんはまっていってもらえればって言う感じがありますね」。まずはアビスパが「おらが町のクラブ」になるきっかけ作りをしている段階だという。

 しかし、そのきっかけを利用して、これからはもっと多くの人たちにアビスパを応援してもらえるような番組にしたいという。「ディープなファンばかりになっちゃうとっていう部分もあります。ですから、コアなファンを満足させるディープなコーナーがあったりとか、全く知らない子でも勉強したいっていう質問のコーナーだったりとか、そういうふうにして全部を聞いて楽しめるような番組にしていきたいなと思ってるんです」。



 そして、この番組の最大の特徴である「選手がゲストじゃなくて、選手も一緒に作っているというところ」を、これからはもっと前面に打ち出していく予定だ。この点では前田選手も積極的で、「自分も要望とか案を出していこうかなと思っている」と協力を惜しまない。また、この日、ゲストとして出演した服部選手も、「ざっくばらんにいろいろと話が出来て、いい雰囲気で良かったと思います。呼んでくれればいつでも出たいと思うので、また呼んでください」と大変乗り気だった。

 アビスパ福岡を「おらが町のクラブ」として多いに盛り上げたいという中野さんの思いは更に広がっていく。FM mimiはインターネットでも情報を発信しているため、「ちかっぱアビスパ」は、FM mimiのHPへアクセスすれば全国どこからでも再放送を聞くことができる。「アビスパファンなら、どこに住んでいても聞いてくれるだろうし、検索しているうちにたどり着く人もいるはず。もっともっといい番組にしていかなくては」。そう語ると、中野さんの目はひときわ輝いた。

 中野さんは番組をはじめるに当たってアビスパの情報を探した時、メディアでアビスパの情報を扱っているのが少なくて苦労したという経験を話してくれた。現在、地元ではTV、ラジオを含めてアビスパ福岡だけを1時間枠で紹介する番組は「ちかっぱアビスパ」だけ。そういう意味では、ファンがこの番組に寄せる期待は大きいし、またその使命は重い。中野さんと前田選手、そしてボランティアスタッフは、その期待に応える番組作りを目指している。

 「私たちがアビスパの情報を探した時に苦労したことを、これからアビスパファンになってくれる人たちに味あわせない。そういった番組にしたいですね」。中野さんは取材の最後にそう語ってくれた。まだ始まったばかりの「ちかっぱアビスパ」は、きっとこれから、もっと充実した番組になっていくに違いない。なお、FM mimiのHPのアドレスは下記の通り。電波が届かない地域の方は、是非アクセスして「ちかっぱアビスパ」を聞いて見てはいかがだろう。


FM mimi  http://www.fmmimi.com/index2.html



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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