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 福岡通信 01/03/02 (金) <前へ次へindexへ>

 サガン鳥栖、課題は攻撃力アップ。


 文/中倉一志
 チーム史上初めての沖縄キャンプ、そして熊本での2次キャンプを終えて、サガン鳥栖のシーズン開幕へ向けての調整もいよいよ最終段階に入った。1月23日にチームを始動させてから約1ヶ月。12人の新加入選手を含めた31人それぞれの力量を確認し終え、これからはレギュラーチームの戦術のチェックと、バックアップ選手の強化が主な目的となる。はてさてどこまで仕上がっているのか。早速、2月25日に行われた練習試合を覗いて見た。

 この日の対戦相手は九州大学選抜チーム。真冬に戻ってしまったような寒さと強風が吹きつけるあいにくのコンディションだっだが、スタジアムには100人を超す熱心なサポーターが駆けつけており、今シーズンにかけるサポーターたちの期待の大きさが感じられた。そしてトレーニングウエァに身を包んだ選手たちがピッチの上に顔を出す。どの選手も引き締まったいい表情をしている。やはり選手にとってはピッチの上が一番よく似合う。

 さて、今シーズンの鳥栖の最大の課題は攻撃力をどれだけ上げられるかにある。今年の選手補強も、主な狙いがそこにあったことは明白だ。関東学生リーグ得点王の肩書を持つ富永(名古屋からのレンタル移籍)。九州大学リーグ3年連続得点王の森田。関西学生リーグでアシスト王に輝いた東。そして矢野マイケル。これら新加入の選手に片渕、福留、小石、石谷、さらに復帰が期待される竹元らを加えた攻撃陣は、得点力アップを期待するに足る人材が集まっている。

 その一方で課題として挙げらていれるのが、ボランチを誰が勤めるかということ。昨シーズン、チームの飛躍の原動力となった三原は名古屋に復帰。矢部とのコンビを誰が組むかが大きな課題になっている。加えて、プレスキックが誰が蹴るかも課題の一つだ。現段階では福岡から移籍してきた鈴木勝大が有力候補と思われるが、果たして、どの程度ボランチとして機能できるのかが、この練習試合での大きなチェックポイントだ。



 45分×3本で行なわれた練習試合の1本目にはレギュラー組が登場。システムは3−6−1。DFラインは真中に川前、両サイドのストッパーに松田、佐藤というお馴染みの3人。ボランチには北内と福岡から移籍してきた鈴木を配し、両WBは右の島岡、左の有村が勤める。トップ下に小石と新加入の東を置き、1トップの位置には名古屋からレンタル移籍の富永が陣取っている。1.5列目からの飛び出しと、ゴール前の空中戦を制そうというのが狙いのようだ。

 まだ調整中とはいえ相手は大学生。立ち上がりから鳥栖がボールを圧倒的に支配してゲームを進めていく。立ち上がりは中々コンビネーションが機能せずチャンスを作り出すことが出来なかったが、10分に相手DFとGKの連携ミスからオウンゴールで先制点を奪うとリズムががらりと変わる。30分には東がゴールまで約25m地点から放ったロングシュートをゴール右上に突き刺すと、さらに鋭い飛び出しを見せた小石が39分に3点目を奪って、試合を終えた。

 得点シーンのほかにも、富永がポストプレーで落としたボールを小石が走りこんで素早くクロスボールを送り、これに1.5列目から飛び出した東が反応したシーンのように、狙い通りのパターンがいくつか見られた。しかし、全体的に見れば仕上がり具合は6分程度だろうか。スピード感はいまひとつで、ボランチとして出場した鈴木も運動量不足が目に付き、ゲームの基点として機能することは出来なかった。

 「攻撃のパターンは今日はあまりよくなかった」とは高祖監督。「もっとダイレクトを使ってつなぎたい。1回持って、そして2回持ってというのが多かった。どのチームも同じようにコンパクトなDFのエリアを作ってくる。そこを突破するためにはダイレクトパスや、スペースへ動く第3の動きが必要。これからはそこをやっていきたい」とこれからの課題を語った。しかしその表情には、まだまだこれからといった余裕が表れていた。



 さて、2本目にはバックアップ組が出場した。最終ラインは右から宮川、関本、渡辺の3人。ボランチは高木と古川。両WBは右に森、左に山道。トップ下には島袋を配し、2トップは小石と森田だ。「あんまり戦術的なことはやっていない」(高祖監督)というように、チームとしてのコンビネーションはバラバラ。終了間際の40分に、カウンターから最後は島袋が決めて1−0で終了したが、内容的には、むしろ学生選抜に押され気味だった。

 3本目も同じくバックアップ組で戦ったサガンは、2本目に比べれば攻め込むシーンが目立ち始めたが、やはりコンビネーション不足を露呈。攻め込もうとして突破しきれず、ボールを後ろに下げるシーンばかりが目立っていた。ゴールへの強い意欲を見せる石谷が何度もシュートを放って孤軍奮闘していたが、これだけバラバラではゴールを奪うことは難しかった。そして42分には大学選抜に、この日の初ゴールを奪われてしまった。

 残念ながら、現時点ではバックアップ組とレギュラー組との実力差は大きいと言わざるを得ない。バックアップの選手としてレギュラー組に食い込めそうなのは、石谷、森田の2人程度ではあるまいか。「まだ自信を持ってやっていない。大学やクラブチームの気迫の域を脱していない」と高祖監督も厳しい評価だった。J2は44試合の長丁場。バックアップ選手の活躍なくしては乗り切れない。より一層の奮起を期待したい。

 また、この2本の試合では高木、古川、山道をボランチに起用。その適正をテストしていた。古河を除けば不慣れなポジション、しかも高木は怪我から復帰したばかりということもあって、残念ながらこれといったプレーを見ることは出来なかった。しかし、高木の左足から繰り出されるロングクロスはボランチとしては魅力十分。1日でも早く体調を戻して、あのきれいな弧を描くボールが復活することを望みたい。きっとボランチとして活躍してくれるはずだ。



 まだ満足のいくレベルとは言い難いが、この日は開幕まで数えて2週間前。決してあせることはない。これからの2週間で課題をひとつずつ解消していけばいい。満足のいくプレーが出来なかった鈴木は怪我から復帰したばかり。これから徐々に調子を上げてくれるだろう。それに、福留、矢野マイケル、矢部らも間もなく復帰の見通し。メンバーが揃うこれからの練習で、高祖監督が目指す攻撃の形を作り上げることが、トレーニング最後の課題になる。

 その高祖監督が目指す攻撃の形とは、1.5列目から長い距離を走って相手の背後をつくこと。そしてサイドのスペースを使っての突破から、ゴール中央に構える長身FWへボールをあわせるというもの。昨年は平均身長が低かったため、守備面の負担から、スピードある飛び出しが特徴の小石をフルタイムで起用できなかったり、ゴール前での空中戦を制することが出来ずにいたが今年はそれも解消。完成すれば攻撃力がアップすることは確実だ。

 また高祖監督は、富永、森田の2トップもバリエーションのひとつとして考えているばかりか、この2人に片渕を加えた大型3トップさえも構想のひとつとして持っているようだ。もともと片渕は、ゴール前に陣取るというよりも、左右のスペースに流れてボールを引き出すタイプの選手。意外とこの3人の組み合わせも面白いかもしれない。バックアップ組でプレーした森田は、本来の位置からやや下がり目でプレーしていたが、どうやら3トップの可能性を試すための起用だったようだ。

 いよいよ開幕まで後1週間。泣いても笑っても、間もなく2001年のシーズンが始まる。高祖サガンの1年目となった昨年は、Aクラス入りという目標には僅かに届かなかったものの6位に躍進。更には、上位チームに対して勝ち星を上げたばかりか、天皇杯ではチャンピオン鹿島に一歩も引けを取らない戦い振りを披露した。今年は更にグレードアップした高祖サガンが見れるはず。3月11日の鳥栖スタジアムでの開幕戦は見逃せない。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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