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 福岡通信 01/04/13 (金) <前へ次へindexへ>

 TV局の皆様へ。もっとアビスパを盛り上げよう!


 文/中倉一志
 「おっしょい福岡」。土日を除く毎日夕方6時から、NHK福岡局が放送する地元福岡のニュース番組の題名だ。この番組に4月からアビスパ福岡のキャプテンを務める「ヤス」こと三浦泰年が出演している。「三浦泰年の夢ワールド」と題された10分ほどのコーナーで、出演第1回目となった2日は2002年W杯の会場である大分を、そして9日の放送では、第4節の市原戦の他、アビスパ福岡をパックアップする後援会の活動の様子が報告された。

 昨年、1試合平均で17,000人を超す観客を集めたアビスパ福岡。後援会は、この盛り上がりをバックに「会員10,000人運動を展開」している。三浦泰年は、「いろんなところにアビスパのことを考えてくれる人たちが現れてくると、博多の森に人を集めたいという動きがどんどん膨れ上がっていくし、その積み重ねが僕らの勇気に変わっていく」とコメント。現在、1勝3敗と苦戦が続いているが、次節からの巻き返しを誓っていた。

 また番組では、後援会が天神地下街に街頭TVを持ち込んで、第3節の浦和戦を放送したことも紹介。街頭TVの前で熱心に声援を送るサポーターたちの姿が映し出された。「僕らがアウェイでいいサッカーをすれば、博多の森に行ってみようという人も増えるはず。こういうふうにアウェイの試合をやってくれて、それを見にきてくれる人がいるのは、すごくいい効果になる」(三浦泰年)。これに限らず、また街頭TVを設置して欲しいものだ。

 昨年、Jリーグでも注目を浴びた博多の森の熱狂だが、それはまだ始まったばかり。これからその盛り上がりを本物にしていく必要がある。そういう意味では、こうしたアビスパ福岡の情報番組は貴重な存在と言える。しかも地元ニュース番組のコーナーということで、サポーター以外の人たちも目にするだろうし、またチームの顔である三浦泰年が出演しているのだから、その効果は大きいはずだ。アビスパ福岡が「市民と血の通ったチーム」に育つためにも、この番組に期待したい。



 ところで、福岡以外に住む方にとっては意外に思われるかもしれないが、福岡のTV局で、アビスパ福岡の話題を扱っている番組は極端に少ない。いや、正確に言えば、ほとんどないといってもいい。アビスパ福岡を専門に扱っている番組は一つもなく、定期的に扱っているのは、地元局であるFBSが毎週日曜日に放送している「夢空間スポーツ」という30分番組だけ。基本的にはスポーツ番組だが、その半分をアビスパ福岡に当てている。

 ラジオでは、FM福岡やFM mimiが、三浦泰年や前田浩ニをパーソナリティにしてアビスパ福岡の情報番組を流しているが、TVで扱われているものといったら、上記のほかには一般のスポーツニュースだけ。それどころか、春の番組改編のあおりをうけて、事実上、アビスパ福岡の情報コーナーがなくなってしまった局もある。代わりに放送されているのは、福岡ダイエーの話題。福岡で最も人気のあるチームなのだから、やむを得ないとも思うのだが・・・。

 TV局には視聴率というものがある。そのためには、視聴者の多くが興味のある情報を流すのも致し方ないことだ。そういう意味では、サッカーよりも野球というのは分からないわけではない。また、地方局の場合には、キー局との兼ね合いで独自の番組を作りづらいということもあるだろう。しかし、最も影響のあるメディアとして、育ちつつある新しい芽を大きく花開かせるという役割もあるのではないか。視聴率だけが全てではないはずだ。

 別に野球が悪いわけではない。また、サッカーを報道すればいいというものでもない。仮にサッカーの人気が一番になったとして、そのためにサッカー番組が巷に溢れるようになったとしても喜ぶのはサッカーファンだけ。それは、単にサッカーが野球に代わっただけのことであって状況は何も変わらない。そうではなくて、この国に「スポーツ文化」を定着させようとする試みを育てようという大局的な見方も必要だと思うのだ。



 Jリーグが掲げる「百年構想」。その理念は「人々がともにスポーツに親しみ、世代を超えた交流を広げ、豊かな人生を過ごしていける」ということにある。決してサッカーだけを盛んにしようというものではない。もちろん、「サッカーを中心に」という考え方はあるだろうが、その根底には「人間性やボランティア精神を育み、世代を超えたふれあいの輪を広げること。そんな環境を日本中にたくさんつくっていこうという目標」がある。

 その目標に向かってJリーグは動いている。確かにその動きは微々たる物だ。9年目の開幕を迎えても、まるで進んでいないのではないかという批判も、ある意味では当たっているかもしれない。しかし、その道は平坦ではない。スポーツを楽しむことを否定し、あるいは単なる「遊び」としてみなし、重要視してこなかったこの国の歴史には、武道を除いてはスポーツというものが生まれてこなかった。その中にスポーツ文化を創ろうというのだ。決して簡単なことではない。

 しかし、それでもなお、何年かかるか分からない目標に向かってJリーグは歩いている。そんなJリーグの一員が地元にいる。まだまだ未熟なチームかもしれない。欠点も沢山あるだろう。しかし、一生懸命、前へ進もうとしている。彼らの一歩は、そして、そんな彼らに声援を送るサポーターたちの一歩は、確実に前へ進んでいる。ならば、その地元の仲間たちを応援するのは当然のことではないのだろうか。

 青々とした芝生におおわれたグラウンドで、老若男女が、スポーツが得意な人も、そうでない人も、みんなが一緒になってスポーツを観て、スポーツをして、そして、スポーツを通じて地域の人々との交流を深める。そんな社会を作りあげる一助として活動する使命がメディアにはあると思うのだ。全てとは言わない。ほんのわずかな時間でもいい。スポーツ文化を育てようという試みに対し、最も影響のあるメディアであるTV局に、是非、応援して欲しいと思うのだ。



 さいわい、福岡には、そんな文化が育つ土壌があるように思う。口の悪い人たちは、「博多の人たちは弱いと見向きもしなくなる」と、その県民性を表現する。しかし、果たしてそうだろうか。昨シーズン、福岡は大幅に観客動員数を伸ばした。しかし、1st stageの成績は6勝9敗。これは1999年シーズンの1st stageと同じ成績だが、1st stageの1試合当たりの有料入場者数は2,328人も増加している。決して成績だけで観客が増えたわけではない。

 「福岡は野球の町」。そう表現する人たちもいる。しかし、福岡の人たちは野球を特別視しているわけではない。福岡ダイエーホークスは、野球だから人気があるのではない。彼らが福岡を代表する市民球団だからこそ応援をするのだ。この町では、「野球か、サッカーか」などという議論はあまり聞かない(年配者には、まだそういう傾向があるが)。自分たちの町を誇り、自分たちの代表として戦うチームを応援しているだけなのだ。

 そして、決して中央を向いていないという県民性もある。日本の多くの都市が「東京」を見つめる中で、福岡は決して奢ることなく、そして媚びるわけでもなく、自分たちの文化と風習に誇りを持ち、堂々と、そして悠然と独特の文化を育んでいる。福岡という土地から情報を発信し、自分たちの仲間を誇る。立場や地位、年齢や性別というものにとらわれず、人として暖かく触れ合うという土壌がある。これは、関東から福岡に移り住んできた人なら、誰もが感じることだろう。

 そんな土地にあるJリーグ。願わくばTVメディアにもう少し理解が欲しい。そして、福岡ダイエーホークスとともに、また、その他のスポーツに関わる全ての人たちとともに、日本のスポーツ文化の発信地として福岡が育つように、その力を使ってもらいたい。「野球かサッカーか」という視点からではなく、「スポーツ文化」という視点で捉えてもらえたらと思う。福岡には、それが育つ土壌が用意されているのだから。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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