topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 福岡通信 01/06/15 (金) <前へ次へindexへ>

 再開Jリーグ


 文/中倉一志
 コンフェデレーションズ・カップが大成功のうちに11日間の大会を終えた。チケット販売問題に始まり、スタジアムへのアクセス問題、韓国との移動の問題、はたまた中田の決勝戦出場辞退(メディアが勝手に騒いだだけだという気もしなくはないが)等々、いくつかの問題はあったにせよ、プレW杯としては、まずは合格点がつけられる大会であった。何より、代表チームが素晴らしい戦い振りで決勝戦に進出したことは特筆に値することだ。

 どの国もフルメンバーではなかったとは言え、出場国は世界の強豪ばかり。日本代表は、そんな相手に堂々と、そして現段階では完璧とも思える戦い振りを披露した。決勝ではフランスとの実力差を見せつけられたが、大きく力をつけていることを実感させてくれた。後は世界のトップクラスとの差をどこまで縮められるかだ。そんな思いを胸に選手たちは残された日々を必死の思いで過ごす。そして選手たちの戦いの場「Jリーグ」が再開する。



 ここまで5勝5敗で6位につけるアビスパ福岡。昨シーズンの2nd stageで最後まで優勝を争い、チーム史上最高の6位の成績を残した福岡は更なる飛躍が期待されていた。しかし、怪我人の続出でメンバーが固まらずスタートダッシュに失敗。どうにか5割を維持しているというのが現状だ。しかし、これまでの福岡ならズルズルと後退しかねない展開の中で、苦しみながらも5割をキープしているのは地力がついた証拠と言っていいだろう。

 問題は、再開後の1st stageで勝ち星をどこまで伸ばせるかにある。ノルマは最低でも3勝。それにいくつ勝ち星を重ねられるかが目標になる。対戦相手は、鹿島、磐田、名古屋、札幌、柏と続く。疲れをものともせず完璧な戦いを続ける磐田、選手としてのラストイヤーとなるストイコビッチを中心に4位につける名古屋をはじめ、どのチームも強豪揃いで、福岡にとっては決して楽な戦いではない。しかし、ここで勝ち越すことが今後の福岡にとって大きな意味を持ってくる。

 そのためには、再開後の初戦となるホームで迎える鹿島戦が大きな鍵だ。現在は14位と低迷する鹿島だが、その実力は誰もが認めるところ。けが人の続出で自慢の中盤は影をひそめているものの、ゴールに対する意欲を前面に押し出すようになってきた柳沢は要注意。コンフェデ杯でブレークした鈴木も侮れない。鹿島はロングボール主体で、この2人にボールを集めてくることになりそうだが、このパスの供給源をどうやって押さえ込むかがポイントになりそうだ。

 福岡は怪我のためビスコンティが欠場し、更には中払が累積警告で出場停止。決して万全の体制とは言えない。また水曜日に行なわれたナビスコ杯でも、攻守に渡ってバランスの悪さを露呈する等、チーム状態も決して良くはない。しかし、だからこそ、サポーターはいつものアグレッシブなサッカーで鹿島を破ることを期待している。攻守のバランスに注意しながら、持ち味である全員サッカーで立ち向かえば十分に勝機はあるはずだ。



 さて、同じく九州にホームタウンを置くチームにとっても再開後の初戦はいつも以上に重要な意味を持っている。まずは大分。その戦力からJ1昇格候補筆頭と目されていたが、チームとしての完成度を高めることが出来ず、波に乗れないままでいた。しかし、上位陣がまれに見る大混戦となったことに加え、小林監督就任後、気持ちを前面に押し出すサッカーが功を奏し、14節を終えてトップと勝点2差の5位。十分に優勝圏内につけている。

 石崎元監督の突然の更迭劇は、チームとサポーター、そしてチームを巡る環境に大きな波紋を投げかけた。石崎元監督の更迭の是非はさておき、フロントが振るった大鉈は、結果として、チームに関わる人たちが一緒になってチームのあるべき姿を模索する行動を生んだ。まだまだ解決すべき問題は存在しているが、ひとつの方向に向かって歩みだしたことは、チームにとってプラスになることはあっても、マイナスになることはないはずだ。

 しかし、この流れに乗ってチームが一皮向けるためには、再開後の試合で結果を残すことが必要になる。再開後の1ヶ月間で消化する試合は6試合。そのうちの4試合が、現在首位争いをしているチームとの対戦になる。中断前の3試合では、監督更迭という一大事が危機感を生み3連勝を飾ったが、これからの6試合は気持ちだけで勝ち抜ける相手ではない。しかし、ここで負けが先行するようだと、今度こそJ1昇格が遠のくのは間違いない。

 中断中の3週間で小林監督がどこまでチーム戦術を高められたのか。そして、ややもすれば「元気がない」「リーダーシップを取る選手がいない」と言われつづけてきた選手たちが、再開後も気持ちを前面に打ち出した試合ができるのか。この辺りがポイントになるだろう。「相手の特徴を消すサッカー」から、「アグレッシブに戦うということを全面的に出すサッカー」への脱皮を図る大分。掴みかけた何かを本物にするためには、何が何でも勝利が欲しい。



 そしてサガン鳥栖。14試合を戦って勝点3。最下位という順位も初めての経験なら、14試合連続無勝利というのも初めての経験だ。チーム事情から、「育てるチーム」への脱皮を図った鳥栖だが、チームの主力となるはずだった選手たちが怪我で出遅れ、当初は控と目されていた選手たちで戦わなければならなかったことが大きく響いた。それがチームの自信を無くし、持ち味である「諦めないサッカー」さえも忘れかけてしまっている。

 そんな鳥栖にあって、コンフェデ杯のための3週間の中断は千歳一遇のチャンスだったはず。年間44試合を戦うという世界にも類を見ない過酷なディビジョン2は、リーグが始まってしまえば本格的にチームを立て直す期間はない。TVゲームのようにリセットするわけにも行かず、一度落ちたモチベーションを立て直すのは並大抵のことではない。昨年、圧倒的な戦力を誇った浦和が最後の最後まで苦しんだのも、この点によるところが大きい。

 しかし、若手主体に切り替えたための戦力ダウンや、怪我人の続出によりチームが十分な態勢で戦えなかったという理由があったにせよ、14試合も勝ちがないというのは尋常ではない。そんな状況では次第に諦めに似た気持ちが芽生えても不思議ではないだろう。だが、それを乗り越えてこそプロ。しかも中断期間の存在が、彼らに気持ちを切り替える時間と、そしてもう一度チャレンジするための時間を与えてくれたのだ。これを活かさなければ、もう後はない。

 どんなチームであっても44試合の全てに勝てるわけではない。敗れることがあっても、次につながるゲームをすれば、それは必ず後になって活きてくる。しかし、鳥栖に限っては、再開後の水戸戦は勝利という結果が何よりも重要だ。怪我人も復帰し、エース竹元に出場の目処がたった現在、チーム編成について言い訳は出来ない。ここで勝たなければ、また長い連敗街道が続いてしまう。同じような状況にある水戸も必死だろう。しかし、生き残るためには勝利しかない。



 三者三様。それぞれにチーム事情がある九州の3チームだが、ともに何があっても勝利が必要であることには変わりはない。フロントもスタッフも、もちろん選手たちも、そしてサポーターも、そのことは十分に承知している。そうした力を結集すれば、結果は必ずついてくる。中断中の約1ヶ月間は、そのための準備に万全を期しているはずだが、それを無駄にしないためにも、勝利と言う結果を出さなければならない。

 昨年はJ1昇格後5年目にして初めて降格候補というありがたくない汚名を返上したばかりか、昨年のJ1に旋風を巻き起こした福岡。一時は絶望視されていたJ1昇格に向けて、終盤で激しく追い上げた大分。大物食いぶりを発揮し、昨シーズン最終戦の浦和戦や、天皇杯での鹿島戦等、全国のサッカーファンにサガン鳥栖の戦い方をアピールした鳥栖。昨年と比べれば苦しい戦いが続く3チームだが、ここからが本当の勝負。リスタートとなる試合での勝利を心から願っている。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送