topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 福岡通信 01/06/29 (金) <前へ次へindexへ>

 最後までへこたれるな!目指すは3連勝。


 文/中倉一志
 今シーズンのJ1ほど各クラブのサポーターにとって辛いシーズンはないだろう。厳しいスケジュールをものともせずに「1人勝ち」状態にある磐田。劇的な変身を遂げて2位に躍進した市原(第12節終了時点)。そして、優勝の可能性が限りなく低くなったとはいえ、しっかりと3位につけている清水(試合消化数が1試合少ないため暫定順位)。まあ、その度合いはともかくとして、満足の行く成績を収めているのは、この3チームだけだろう。

 怪我人を常に抱えているチーム。新戦力が噛み合わないチーム。新体制が軌道に乗らないチーム。それぞれの問題は様々だが、どのチームも問題を抱え、その実力を出し切れない試合が続いている。昨シーズンの1st stageで優勝を争った横浜FMとC大阪は15位と16位。かつて、日本サッカー界を牽引した東京ヴェルディ1969は14位に低迷している。また、4位の名古屋から13位の広島までの勝ち点差は、わずかに4。順位はあってないに等しい。

 何を基準にするかは難しいところだが、上位につける3チーム以外は、どのチームもシーズン前の狙いを果たしているとは言えないだろう。5位につける札幌は健闘していると言えなくはないが、結局は中位グループの混戦(?)から抜け出せず、ひとつ負ければ一気に順位を落としかねない。上位に行けそうで、中々上がれない。勢いがついたと思ったら、最後の壁を登りきれずに失速する。各クラブにとってじれったい状況が続いている。

 そんな中、アビスパ福岡も苦しい試合を続けている。開幕戦を勝利で飾ったものの、あとは常に負け星が先行。ずるずると行きそうなところを踏ん張って、コンフェデ杯で中断するまでは何とか5割の成績を維持したが、再開後に鹿島、磐田に連敗。そのため、1st stageで勝ち越すためには、残り3試合に全勝しなければならない状況に追い込まれた。鹿島に勝って一気に上位へというもくろみは、残念ながら果たせなかった。



 数字だけを追ってみれば、福岡が波に乗れない最大の原因は得点が少ないこと。12節を終えての13得点は横浜FM、ヴィッセル神戸に次いで下から数えて3番目。これでは、中々勝ち星を伸ばせないのもうなずける。一方、失点は18。浅いラインの両サイドをつかれての失点や、何の前触れもなく「えっ?」という感じで失点することが多いように感じていたが、数字だけを見れば、他のクラブと比較して極めて平均的な数字に落着いている。

 こうしてみると、福岡の課題は得点力ということになるのだろうが、試合の内容がそれほどひどいわけではない。シーズン開幕当初は、ビスコンティの欠場が響いてチーム全体のバランスが崩れ、攻撃を組み立てることが出来なかったのは確かだが、試合を消化していくにしたがい、攻めの形は随分と良くなってきたようだ。特に、中断後の鹿島、磐田との試合では、狙い通りに攻撃を組み立てて、チャンスの数は明らかに相手を上回っていた。

 ホームで向かえた鹿島戦は、立ち上がりから前へ出ようという気持ちが溢れるプレーを展開。アグレッシブな姿勢からボールを奪うと、細かく中盤でつないで後方から押し上げて、そのボールをサイドに展開してチャンスを作った。また、磐田戦では高いDFラインをひいてコンパクトなゾーンを形成。高い位置でボールを奪ってサイドから崩すという戦術が機能。立ち上がりこそジュビロに押し込まれたが、15分以降は、福岡の狙い通りの展開で試合を進めた。

 福岡の持ち味はプレッシングサッカー。鋭いプレスからボールを奪うと、その瞬間に両サイドのスペースに中払、久永、そして平島が飛び出していく。そこへ素早くボールを供給して、縦への突破からゴールを奪うというものだ。シーズン当初は、この形が出せない試合も多かったが、中断後の2試合を見る限り、この形を取り戻したといっていい。昨年の好調時に戻りつつある中払、切れのある動きをみせる久永らの活躍が、それを可能にしている。



 ただ問題は、攻撃のリズムが単調になりがちなことだ。昨シーズンの持ち味は取り戻しつつある。しかし、攻撃のリズムに緩急がない。どちらかと言うと直線的な感じで変化がないのだ。その攻撃は、はまれば威力を発揮するのだが、これに対応された時に、ただ同じ攻撃を繰り返すことになってしまう。これは、昨シーズンの1st stageにも見られた特徴で、チャンスを作り出しても、最後の壁が崩せないという結果に陥ることが多い。

 昨シーズンの福岡は、ビスコンティを獲得することで、この問題点を解決した。右サイドのMFとしてプレーするビスコンティは、そのプレーゾーンを特定することなく中盤を動き回り、パスを裁いた。ボールが彼を経由することで攻撃のリズムに緩急が生まれ、それまでのサイド一辺倒の攻撃にバリエーションが加わった。また、自らも得点源としても働いた。そういう意味では、ビスコンティの欠場が福岡の勝敗に大きな影響を与えている。

 しかし、その一方で、昨シーズンから上乗せになった部分もある。それは山下の復帰だ。昨シーズンの殆どを棒に降った形の山下だが、復帰後は昨シーズンを上回る気力を見せてゴールを狙い、代表にまで選出されている。そして、アルゼンチンからやってきたビアージョも心強い材料だ。アルゼンチンリーグ現役最多得点の肩書通り、存在感溢れるプレーを随所に披露。ゴールが生まれるのは時間の問題だ。

 あと少し。最後の壁さえ乗り越えれば・・・。それが、今の福岡の偽らざる姿だろう。好材料はある。しかし、ビスコンティ欠場という不利な条件もある。そんな現状をやりくりしながら、手が届きかけている勝利を何とかして手にしなければならない。その最後の一歩を踏み出すことができるかどうかで、これからの成績が変わってくる。「特定の誰かに頼らないサッカー」。それが福岡のサッカーだ。現状を打開してくれることを望みたい。



 チームの力とは控の選手を含めた全ての力の集合体。そういう意味では、福岡は、まだまだ上位チームとは言えないし、発展途上のチームであると言える。しかし、レギュラーメンバーの力は、決して他のチームにひけを取るものではない。十分に上位チームと対等に戦う力は持っているのだ。後は結果だけ。何らかの形で結果が出れば、またひとつ大きくなれる可能性を秘めている。そのためにはなんとしても5割の成績は残したい。

 キリンカップ開けに戦う相手は、名古屋、札幌、そして柏。成績だけを見れば、福岡より上位に位置する3チーム相手に全勝を狙うのは決して簡単なことではない。だが、その差は殆どないと言って差し支えはない。勝ち点差に表れているように、その差はせいぜい勝点4だ。そして、来るべき2nd stageで昨年を上回る成績を上げるためにも、ここは何とか勝利をもぎ取って欲しい。苦しい戦いかもしれないが、その結果は必ずチームの力になる。

 昨年の2nd stage終盤まで優勝の可能性を持っていたことで、残り数試合となったところで、ようやく世間のサッカー関係者は福岡に注目しだした。だが、本当の意味で福岡に注目しているわけではない。何しろ、今まで下位にいつづけたチーム。正しい理解を得るには、相当な時間と結果が必要なようだ。それに、昨シーズン同様に終盤での負けが続けば、チームの勢いが消えてしまうばかりか、またこれまでのイメージが復活してしまう。

 だから、今年は昨シーズンを上回る結果が欲しい。だから、なんとしても5割を維持して1st stageを終わりたい。それは、クラブがもう一皮むけるということにもなるし、アビスパ福岡というチームを正しく理解してもらうことにもつながるからだ。そのプレースタイルから、意に反してダーティーなイメージを持ってメディアに取り上げられてしまうようになったが、そんなイメージを払拭するには勝つしかない。残り3試合。福岡らしい全員サッカーでの勝利を願う。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送