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 福岡通信 01/09/07 (金) <前へ次へindexへ>

 サッカーな1日


 文/中倉一志
 日本全国を襲った猛暑もようやくおさまり、ここ福岡でも秋らしい空が広がるようになった。そんな秋の訪れとともに、世界のサッカーシーンは一斉に動き出す。一足早く幕を開けたブンデスリーガ、フランス・ディヴジォン1に続き、エールディビジ、プレミアシップ、セリエA、リーガ・エスパニョーラ等、欧州では強豪国のリーグ戦が開幕。南米でも各国のリーグ戦が行なわれる。サッカーファンには待ちに待ったシーズンの到来だ。

 そして、今年最大の注目の的である2002年FIFAワールドカップTM最終予選が、いよいよ架橋を迎えている。長い期間をかけて戦ってきた夢の舞台への挑戦。常連国が着々と本大会出場に名乗りを挙げる一方でオランダの予選敗退が決定。また、一時はどん底に落ちたかと思われたイングランドがアウェイでドイツを5−1と一蹴、一躍グループ首位に踊り出た。何が起こるか分からない戦いの連続は、我々サッカーファンの心を捉えて離さない。

 そんなサッカーファンの心理を見透かすように、1日、5日には、CS放送で12時間スペシャルと称して、サッカー強豪国のワールドカップ予選の模様を連続で生中継。さぞかし、多くのファンが眠い目をこすりながらTV画面に目を釘付けにしていたことだろう。そして明日からは、再びリーグ戦での激しい戦いの数々がCS放送を通して日本に届けられる。ありとあらゆる名勝負を視聴できるなんて、日本は本当にいい国になったものだ。

 しかし、一斉に動き出すのは何も海外に限ったことではない。Jリーグ開幕以降、日本のサッカーシーズンは春から始まると思っていらっしゃる方が多いだろうが、日本でも、秋の訪れとともに様々な試合が開催される。天皇杯をはじめ、年末年始にかけて行なわれる様々な全国大会の地方予選や、各地区の大学リーグ、そして、それぞれの地域で行なわれているリーグ戦も架橋を迎える。世界とはレベルが違いすぎると言うなかれ。それぞれのカテゴリーには、それぞれの味があり、一味違った楽しみ方ができるものだ。



 熱狂的なサポーターはいない。取材陣は数えるほどで(時には私1人の時もある)、観客も関係者ばかり。勝敗の結果が多くの人たちに感動を与えるわけでもない。しかし、レベルの違いはあっても、純粋にボールを追いかけ、ゴールを目指し、勝利を求める気持ちには何も変わりはない。むしろ、のんびりとした雰囲気が漂うスタンドで見るサッカーも、また楽しいものだ。そんな気持ちを味わうために、スタジアムをはしごするのも悪くない。

 そんな訳で、朝早くから起きだして、福岡県サッカー協会のスケジュール表と睨めっこしながら、まずは博多の森球技場にやって来た。前日はCS放送で、アイルランドvs.オランダ、ドイツvs.イングランドの試合を観戦したため、時折、猛烈な眠気に誘われるが、不思議なものでスタジアムに辿り着くと目が覚める。猛暑の影響で、芝の状態はそれほど良くはないようだが、やはり、緑色のピッチは何処か気分を爽やかにさせてくれるものだ。

 この日、最初に観戦したのは第13回福岡県ユース(U−15)サッカー選手権大会。高円宮杯全日本ユース(U−15)選手権の福岡県予選を兼ねた大会で、優勝チームは10月に行なわれる九州大会へ進み、九州代表の座を目指す。参加チームは、福岡県内4支部の予選を勝ち抜いた14チームに、福岡県中体連優勝チームと、同クラブ選手権優勝チームを加えた16。この日の決勝戦には、北九州地区1位の小倉南FCと、同5位の高須中学が駒を進めてきた。

 小倉南FCは攻撃型のチーム。決勝戦までの3試合で17得点1失点と圧倒的な攻撃力を発揮している。2回戦では優勝候補筆頭のアビスパ福岡を2−0で下すと、準決勝では、なんと9−1という大差で八女(やめ)FCを下した。一方の高須中学は粘り強さが信条。1回戦を1−0で勝利すると、2回戦を0−0からPK戦で勝ち抜き、準決勝は、中体連優勝チームの向洋中学を下した二瀬中学に2−1と競り勝って決勝戦まで進んできた。



 さて、試合は予想通り小倉南が圧倒的に攻め立てた。フォーメーションは4−4−2。中盤は1ボランチの前に3人のMFを並べる形を取っている。評判の攻撃力は迫力満点。両サイドのMFが果敢にスペースに飛び出したかと思えば、ワンツーを使って中央突破。そして、左のMFを務める木佐木選手が高速ドリブルでDFラインを切り裂いていく。とてもU−15とは思えない多彩な攻撃を展開している。少ないタッチで回すパスワークも見事なものだ。

 対する高須中学も持ち前の粘り強さを発揮して、ギリギリのところで失点を防いでいる。特にGKの今谷選手が度重なるピンチをスーパーセーブの連続でゴールを死守している。しかし後半の3分、PKから小倉南FCが先制点を挙げると、遂に小倉南FCの攻撃が爆発した。続く後半の9分には、安達選手が胸トラップから振り向きざまにDFを抜き差って2点目をゲット。さらに、22分、27分にも追加点を挙げて4−0の完勝で優勝を飾った。

 それにしても、小倉南FCは見事な攻撃スタイルを見せてくれた。全員が3年生とはいえ、彼らはまだ中学生。ここまで多彩な攻撃を展開するとは思わなかった。高校年代でも、キック&ラッシュのチームがある中で、中学生ながら、ここまで組織力を高められるものかと驚かされた。テクニックと組織力の高さは、やはりクラブチームならではなのだろう。他県のチームの様子は不案内だが、九州大会でも大いに活躍が期待できそうだ。

 朝からこんな楽しい試合を見ることが出来て、何処か得した気分で博多の森球技場を後にする。次に目指すは博多の森陸上競技場。球技場の裏の斜面を上りきったところにあるスタジアムで、ユニヴァーシアード福岡大会のメインスタジアムとなったところだ。スタジアムにつくと、隣接された補助グラウンドでは、アビスパ福岡の少年サッカー教室が行なわれていた。その風景を見ながら試合のキックオフを待つ。次の試合は大学リーグ戦だ。



 この日はリーグ戦の第2節。第一経済大学vs.九州共立大学と福岡教育大学vs.長崎大学の試合が行なわれる。まずは第1試合。昨年からのレギュラーを数多く残す一経大は、俊足の2トップが攻撃の要。3年生FWの桑原がドリブル突破を狙えば、1年生の田尻はスピードを活かしてDFラインの裏側へ飛び出していく。対する九共大は両サイドからの攻撃が武器。サイドのスペースへボールを供給し、そこへ川添と古賀が走りこんでいく。

 ともにスピードのあるチームなのだが、残念だったのは一経大は2トップに向かって、九共大は両サイドに向かってロングボールを蹴るだけだったこと。中盤でのつなぎは殆どなく、前に蹴るだけの大味な試合になってしまった。まだ2節目ということもあって、これからチーム力は上がっていくのだろうが、午前中に見た試合が面白かっただけに、少々、気が抜けてしまった。試合は81分にPKを得た一経大が1−0で勝利した。

 続く第2試合は、福教大が2−0で長崎大を順当に下した。福教大は、3年連続得点王に輝いた森田(現サガン鳥栖)の抜けた穴を、どう埋めるのかが注目されたが、この試合では3−4−2−1の布陣。1トップの近藤にボールを当てて、2列目に構える戸田と山田が前へ飛び出す攻撃パターンで試合を組み立てた。とにかく森田へという昨年のパターンからの脱却を図っているようだ。守備面が若干不安定な気がするが、スピードある攻撃は中々の迫力だ。

 しかし、相手との実力差があったためか、攻撃のリズムが単調すぎた。試合の流れに緩急がないため、最初のうちは相手を押し込めるのだが、一本調子なリズムに慣れられてしまうと、相手に、それほど苦労せずに守られてしまう。鮮やかなサイド攻撃から先制点を奪い、その直後にオウンゴールで追加点を奪ったまでは良かったが、後は攻めきれずに消化不良で試合を終えた。どうやってリズムの変化をつけるかが、今後の課題だろう。



 さて、時計の針は夕方6:00をさしている。TVのように12時間スペシャルとはいかなかったが、1日で3試合、8時間もサッカーを楽しめた。これだけ観れば、しばらくはサッカーを観なくてもよさそうなものだが、観れば観るほど、また観たくなるからサッカーは不思議だ。こうなったらとことんサッカーに付き合うしか方法はない。来週末は天皇杯の福岡県予選の準決勝、決勝戦が行なわれる。さてさて、来週もサッカーな1日を楽しむこととしよう。ところで皆さんは、どこのスタジアムに足を運びますか。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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