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 福岡通信 01/09/28 (金) <前へ次へindexへ>

 国立競技場の青い芝生を目指して。


 文/中倉一志
「待ってろ、世界」。このキャッチフレーズの元、全国各地で高校サッカー界最大のイベントである第80回全国高校サッカー選手権大会の予選が行なわれている。ここ福岡でも、138校が予選に参加。134校を12ブロックに分けてトーナメント方式で行なわれた一次予選を勝ち抜いた12校に、一次予選免除の東福岡、筑陽学園、筑前、小倉のシード校を加えた16チームがトーナメント方式で福岡県代表校を目指す。全国への出場枠はたったの1。栄光目指して激しい戦いが繰り広げられている。

 出場権をかけての戦いは、やはりシード校を中心に展開することになるだろう。まず、優勝候補の筆頭は、高校サッカーファンにはお馴染みの東福岡高校。既に、九州大会福岡県予選、インターハイ福岡県予選でともに優勝。今年度の福岡県の大会のタイトル独占を目指す。インターハイでは2回戦で破れたものの、準優勝を飾った藤枝東と2−3の接戦を繰り広げた。線の細い選手が目立つが、自慢の組織力とサイドアタックは今年も健在だ。

 対抗は北九州の強豪県立小倉高校。今年の2月に行なわれた新人大会、九州大会福岡県予選ではともにベスト4。インターハイの福岡県予選でも準優勝と安定した力を発揮している。それに続くのが県立筑前高校と筑陽学園。筑前高校は全国規模の大会はおろか、九州大会の経験もないが、今年度は、新人戦、九州大会予選でともにベスト8。インターハイ予選ではベスト4に進出した。初の全国大会に向けて、その意欲は高い。

 筑陽学園は組織力が魅力のチーム。新人戦福岡県大会では他校を圧倒的に上回る組織力を見せつけて優勝。新人戦九州大会でも準優勝と、その実力は折り紙つきだ。しかし、その後は九州大会県予選でベスト4。インターハイ予選ではベスト16と、今年度に入ってからは、その実力を十分に発揮できずにおり、今年度最後の大会で巻き返しを狙う気持ちは強い。順調に行けば準決勝では東福岡と対戦。どんな戦いを見せるか注目を集めている。



 さて、2次予選の初日の22日、博多の森陸上競技場に東福岡イレブンが登場。対戦相手は豊津高校だ。今年度の福岡県の2つ公式大会を制している東福岡の登場とあって、スタンドには多くの観客が詰め掛けている。観客の中には、筑陽学園の生徒たちや東海第五の平監督の顔も見える。来るべき対戦に備えての研究の意味合いもあるのだろう。そんな注目を浴びる中、東福岡はいきなり先制点を挙げる。時計の針は1分を指したばかりだった。

 その後も東福岡は圧倒的に豊津を攻め立てた。攻撃のパターンはいつものように両サイドからのアタック。3トップ気味の左サイドを受け持つ池元選手が中へ切れ込み、右サイドの川上選手は直線的にサイドを疾走して、深い位置からクロスボールを供給。中央では金子選手が待ち受ける。そして19分に金子選手がヘディングシュートで追加点を挙げると、その後1点を返されたものの、25分、33分と着実に追加点を重ねて前半を折り返した。

 後半も東福岡の独壇場。53分には池元選手からのパスを衛藤選手がゴールに流し込んでリードを4点に広げる。56分に、豊津高校の三好選手がペナルティエリア内で足でボールを処理しようとしたGKからボールを奪ってゴールを決めて、豊津がリズムを握る時間帯もあったが、65分には再び東福岡がゲット。豊津は70分に3点目を挙げて反撃を試みたものの、更に東福岡は78分にもゴールを決めて、結局7−3で東福岡が豊津を一蹴した。

 東福岡は、中盤でのダイレクトプレーや、個人技の高さを見せつけて、まずは無難に1回戦を突破した。しかし、問題は守備力。相手を圧倒する攻撃は迫力があるが、それに反して守備には全く安定感がない。マークは簡単にずれ、クリアも不安定。何より組織的に守れない。相手に攻められた場合は、ある程度の失点は覚悟しなければならないだろう。2年ぶりの全国大会の切符を手にするには、この守備力をどう修正するかが鍵になる。



 続く第2試合は福岡第一と福岡舞鶴の対戦。高い位置からプレッシャーをかける第一は、積極的にボールを奪うと、いったん中でボールを貯めてから両サイドに展開して舞鶴ゴールを目指す。対する舞鶴は、ボールを跳ね返すので精一杯。立ち上がりから防戦一方に追いやられた。しかし第一は、主導権を握りながらもラストパスの精度に欠いて決定機を作り出せず。24分に、ようやくセットプレーから林選手が1点を挙げて前半を折り返した。

 守りに専念せざるを得なかった舞鶴。しかし後半開始直後の11秒、大久保選手が放ったミドルシュートが見事にゴールマウスを捕らえた。両チームのイレブンともに棒立ち。立ち上がりの集中力を欠いた時間帯に生まれたゴールだった。その後、互角の展開が続いた後、時間の経過とともに再び第一がゲームを支配。激しく舞鶴を攻め立てたが、舞鶴の必死の粘りと、第一のラストパスの精度の低さもあってゴールは生まれず。試合は延長戦へともつれ込んだ。

 延長開始直後の83分、途中出場していた第一の竹本選手がゴール正面から決定的なシュート放つもボールはポストの右へ。その直後、舞鶴はすぐさま第一GKのクリアをカットして大久保選手が無人のゴールへシュート。しかし、これもポストの右に外れた。両校とも攻撃的に臨んでいる。しかし、86分、第一の向井選手がゴールを決めると、あとは第一ペース。そして、98分にも駄目押しのゴールを決めた第一が2回戦進出を決めた。

 この試合を通して目立ったのが、第一の豊富な運動量と、とにかく前へ出ようとする攻撃的な姿勢だった。ボールに対する出足で舞鶴を上回る第一は、あっという間に舞鶴の選手を囲い込み相手に自由を与えなかった。そして、ルーズボールの殆どを支配。中盤は完全に第一のものだった。舞鶴はポストに当ててから、2列目の天本、山口両選手が飛び出そうとしていたが、第一のプレッシャーの前に、いいボールを入れることが出来なかった。



 福岡大会は、24日、30日で1回戦を消化した後、毎週日曜日に試合を行い、11月18日に福岡県代表が決定する。シード校と他のチームとの間に大きな実力差が存在する福岡だが、プレーするのは高校生。何が起こるか分からない。2回戦以降は、一次予選を勝ちあがってきたチームが、それぞれシードチームに挑戦する形になるが、なりふり構わずプレーできればシード校を破ることも夢でない。一歩もひるまぬ戦いを期待したい。

 また、挑戦を受ける形になった東福岡が、どのように勝ちあがっていくかも見ものだ。1回戦ということもあったのだろうが、東福岡には、まだ流れるようなパス交換が見えてこない。どちらかといえば、非常にオーソドックスに試合を進めていたような感じを受けた。さすがに鍛えぬかれたことは手に取るように分かるが、オーソドックスだからこそ、見えてくる作戦もある。そんな挑戦者を、どのようにして東福岡は退けるのだろうか。

 2回戦の注目カードは、東福岡vs.福岡第一と、東海第五vs.小倉の2試合だろう。福岡第一は、豊富な運動量を元に前に向かってゴリゴリと押してくるチームだが、東福岡は意外とこういうタイプを苦手としている。まして守備に不安があるとなれば、第一にも多くはないとはいえ勝機はあるはずだ。また、東海第五は東福岡と並んで福岡県の2強の1つ。元来なら、一次予選から出場するチームではない。伝統の意地を見せて小倉を破ることができるだろうか。小倉も中々の強敵だ。

 高校サッカー界では、いまや日本のトップクラスになった九州。出場している選手の中には、卒業後はプロの世界に身を投じる選手もいるだろう。大学に進んで選手としてサッカーを続けるものもいるだろう。しかし、これまでの高校生活の区切りとなるこの大会は、それぞれの選手にとって特別な思いがあるはずだ。全国大会に駒を進めることができるのは僅かに1校。その道は決してたやすくはないが、悔いの残らぬプレーをしてもらいたい。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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