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 福岡通信 01/10/12 (金) <前へ次へindexへ>

 恐れるな!前を向こう!


 文/中倉一志
 忘れたはずのJ1残留争い。更なる飛躍を誓って臨んだシーズンだった。「i MAS JUNTOS,PODEMOS MAS!(マス フントス ポデモス マス)」、もっと一丸となればもっとやれるを合言葉に、一致団結して戦うはずだった。しかし、波に乗れそうで乗り切れず、まとまっているようで、まとまりきれないまま、ここまで来てしまったアビスパ福岡。総勝点23は年間順位で13位。シーズン前の思いとは裏腹に、J1残留争いの真っ只中にいる。

 過去2年間のJ1残留ラインは勝点28。不足している勝点は5。安全性を見込めば後7は欲しいところだ。残り試合は8試合。数字の上だけなら、十分到達可能な勝点のようにも見える。しかし、第11節からは、鹿島、磐田、名古屋、清水と強豪との4連戦が待ち構える。これらの年間順位でベスト4に名を連ねるチームから勝点を稼ぐのは、今のチーム状態ではかなり厳しい。残された道は、明日からの3試合で勝点5以上を取ることしかない。

 これとて決して楽な数字ではない。8節で対戦する市原は、べルデニック監督が志向する組織サッカーが浸透。1st stageでは2位に躍進し、かつての市原とは別のチームに成長した。続く浦和は2nd stageでは僅かに1勝しか挙げていないが、スピードに対するDFに難がある福岡にとっては、トゥットとエメルソンの2トップは脅威だ。そしてFC東京は、2nd stageに入って4勝2分1敗と好調を維持。確実に勝ち星が計算できる相手ではない。

 そして、3試合を8日間でこなすというハードスケジュールは、ベテラン揃いの福岡にとっては厳しく、しかも故障中の呂比須は、この3試合を欠場する公算が強い。福岡にとっては頭を抱えたくなるような状況だ。しかし、そんなことを言っていても始まらない。ここで勝点を取れなければ、かなりの確率でJ2降格という現実が迫ってくる。チームが抱える問題点は多いが、どんな戦い方であっても勝点をもぎ取る以外に道はないのだ。



 広島戦での屈辱的な敗北から2週間、福岡は建て直しのために十分な練習を積んだに違いない。しかし、シーズン終盤のここに来て、しかも後がない状況の中では、チーム戦術を根本から修正することは不可能に近い。ならば、自分たちの出来ることを最大限に生かすことが最善の戦い方になる。福岡に出来ること、それはアグレッシブに戦うこと。負けることを恐れず、互いの欠点をカバーして、そして、チームとしてゴールを目指すことだ。

 なにも難しいことをする必要はない。サッカーとは、ひとつのボールを11人で相手のゴールに運ぶこと。ただそれだけのことだ。空いてるスペースがあれば、そこへ誰かが飛び込んでボールをもらう。誰かが動いたために出来たスペースは、また他の誰かが走りこめばいい。それは攻める時も、守る時も同じこと。相手のマークに付いたためにスペースが出来たら、そのスペースを他の誰かが守ればいいのだ。全員でそれを繰り返すだけだ。

 戦術重視のサッカーでは、そんなことは不恰好に見えるかもしれない。しかし、それがサッカーの基本だ。フォーメーションとはスタート時点で立っている位置のようなもの。戦術とは、その動きをより高度化したものに過ぎない。事実、昨年の福岡はそうやって戦っていたはずだ。前に出てくる相手を近くの人間が複数で囲い込み、奪ったボールをスペースに走り出す人間に渡す。そうやってチャンスを作り、ゴールを奪っていたはずだ。

 今年はそれが出来ていない。ボールを奪っても誰も前に出て行かない。前線の選手も、相手のDFラインにへばりついて、ボールが入ってくるのを待っているだけ。そして、なぜか相手が待ち構える中央へとボールを運ぶ。そんなサッカーはもうやめよう。臆病になるのはやめよう。そして他人に頼るのはやめよう。自らボールにチャレンジし、自らスペースへ走り込み、そして自ら仲間のフォローをしよう。そうすれば自ずと道は開けるはずだ。



 そして、チームの将来を担うであろう中堅どころの選手の奮起に期待したい。例えば中払。今年はボールをもらって中へ切り込んでいく姿が目立つが、彼本来の持ち味は、縦に抜けてのクロスボールにあるのではないか。昨年も、そして今年も、得点に結びつくプレーは縦に抜けてからのもの。狭いところを抜けようとするドリブルは、目立つことはあっても、結局は相手に潰されている。サイドへ飛び出せるからこその中央突破であることを忘れないで欲しい。

 例えば山下。彼の才能は誰もが認めるところ。長いリハビリ期間を経て、復帰と同時に結果を出した精神的な逞しさも誇れる才能のひとつだ。しかし、一流になるための最後の壁が崩せない。呂比須が出場できないのは、山下にとっては最大のチャンス。この機会に呂比須からポジションを奪うくらいの気概を見せて欲しい。J1参入戦での同点ゴールは過去のもの。このゴールを語る必要がなくなった時こそ、本当の山下が覚醒する時だ。

 例えば久永。今シーズンの久永は切れのある動きを見せ、そして、どこか元気のないチームにあって、一人で気を吐いている印象がある。残念なのは怪我で体調が万全ではないことだ。しかし、90分間プレーすることはなくても、必ず久永のプレーをチームが必要とする時が来る。そんな時、縦へ抜けるスピードと、思い切りよく中へ切れ込むドリブルでチャンスを作って欲しい。出場機会がやってくる時のために、満を持して備えて欲しい。

 例えば平島。昨年、無名のルーキーながら、一躍、福岡の右SBとして活躍を見せた彼の特徴は、思い切りの良いサイドアタックにある。目の前に広がるスペースへ躊躇なく飛び出していく姿に博多の森は熱狂する。守備面での不安定さが指摘されることもあるが、ここまで来たら、まずは自分の特徴を最大限に生かすことを考えるべきだ。後ろのスペースは野田がカバーしてくれるはず。恐れずに飛び出してこそ、福岡にチャンスが生まれる。



 残念なことではあるが、現時点では福岡はJ1残留を意識した戦いをせざるを得ない。そして、その状況は楽観視できないどころか、かなり厳しいと言わざるを得ない。もちろん、残留争をしている相手の成績によって結果は変わってくるのだが、他人の成績を気にしている余裕はない。まずは自力で安全圏へ抜け出すことだ。そういう意味では、1試合たりとも気が抜ける試合はない。そして、1試合たりとも楽な展開にはならないだろう。

 ピッコリ監督の限界を指摘する声もある。ベテランの限界をささやく声も聞こえてくる。層の薄さも苦戦が続く原因の一つだ。だが、そんなことを言っても始まらない。どんな状況に置かれていようとも、いまは、目の前の戦いに勝利しなければならない。だったら、開き直って前を向くだけだ。力の限り前へ進むだけだ。もしかしたら玉砕する危険もあるかもしれない。しかし、玉砕を恐れて臆病になってしまっては全てが終わってしまうのだ。

 力の限り戦おう。持てる力を全て発揮しよう。1点取られたら取り返そう。そのアグレッシブさと、最後まで諦めない気持ちが結果を呼び込んでくれるのだ。戦っているのはピッチの上の11人だけではない。動けなくなったら仲間がいる。倒れそうになったらフォローしてくれる仲間がいる。そして、ピッチの上で戦う11人を支える博多の森の熱狂がある。甘っちょろいといわれるかもしれないが、全員の力を結集すれば出来ないことはない。

 今シーズンの成績を左右するであろう重要な3試合が明日から始まる。まずはアウェイの市原戦。恐らく、福岡から応援に駆けつけるサポーターも多いことだろう。そして、いつものように、AVISPOTにも多くの仲間たちが駆けつけ、遠い福岡の地から熱い声援を送るはずだ。不安がないわけではない。恐くないわけではない。しかし、自分たちの力を信じて戦おう。結果は必ずついてくると信じよう。今求められているのは、そうすることだ。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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