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 福岡通信 01/10/19 (金) <前へ次へindexへ>

 残りは6試合。全ての力を結集せよ。


 文/中倉一志
 2001年Jリーグもいよいよ終盤。最後の正念場を迎えている。思い通りの成績を挙げているクラブ。残念ながら不本意な成績にならざるを得なかったクラブ。新たな問題に頭を抱えているクラブ。クラブを囲む状況はそれぞれだが、まずは残された試合に全力を尽くすことが当面の目標になる。もちろん、九州の3クラブも同様。残された試合の持つ意味は、これまで積み重ねてきたそれよりはるかに重い。クラブの将来をかけた戦いが続く。

 まずはアビスパ福岡。10月17日に行われた第9節では年間順位で直上位の浦和と対戦。延長戦を耐え抜いて勝ち点1を獲得した。年間順位14位の横浜が勝利したため、順位を1つ落としたが、V東京との勝ち点差は7に広がった。勝ち点2を失ったのか、それとも1を獲得したのか議論の分かれるところではあるが、残留に向けて大きな勝ち点を加えたと言っていいだろう。しかし崖っぷちの状態は変わらない。問題はこれからの戦い方だ。

 広島戦以降、臆病な戦い方が続いている福岡は、この浦和戦でも変わってはいなかった。味方に対するフォローもなく、何を狙っているのかもハッキリしない。そして、いつものようにルーズな守備。今年の福岡はオフサイドを取りに行くものの、2列目から飛び出す選手を全く捕まえきれず、あっさりとラインを突破されることが多いのだが、それは、この日も修正されないまま。しかも、マークにつくべき選手を簡単に離してしまっている。

 しかし、そんな福岡にバデアと盧廷潤が渇を入れた。やや低めの位置に構えてボールの起点になるバデア。高めの位置に陣取り、所狭しと駆け回ってゴールへの執念を見せる盧廷潤。この2人の驚異的な運動量が他の選手たちの気力を呼び起こした。そして塚本の大活躍と博多の森の大声援。負けてもおかしくなかった試合で選手たちは忘れていたものを思い出したようだ。時間の経過とともにボールを追い、ゴールを目指し始めたのだ。



 コンビネーションや戦術という面では、まだまだ物足りないと言わざるを得ない。この日も後半は圧倒的に攻め込みながらも、決定的なチャンスを数多く作り出すことは出来なかった。チャンスの数だけなら浦和。塚本の大活躍がなければ引分けという結果も得られなかったかもしれない。しかし、福岡の最大の特徴である「戦う姿勢」を思い出せたのは何よりも大きい。不恰好かもしれないが、それこそが福岡の戦い方なのだ。

 次節は野田が出場停止。呂比須を始めとする怪我人の復帰もまだ難しいようだ。まだまだ厳しく苦しい試合は続く。そんな時、何より大切になるのは最後まで戦い抜くという気持ちに他ならない。もちろん、気持ちだけで勝てるわけではない。しかし、勝負をかけたギリギリの戦いでは、相手よりもほんの僅かでも前に出た者が勝利を掴むことができる。理屈抜きで、残り4の勝ち点を奪い取るためには、絶対に欠かせない要素でもあるのだ。

 浦和戦の後半に見せた気力を、どれだけ持ち続けることができるか。これが最大の鍵だ。浦和戦では後半からの75分間だけだったが、これを最初からやらなければ活路は開けない。10節以降に戦う相手は上位チームばかり。浦和のように、途中から反撃の機会を与えてくれるようなチームはない。恐れず、胸を張って、キックオフと同時にアグレッシブに戦うこと。思い出したであろう戦い方で残り6試合を戦えば、結果は自ずと見えてくるはずだ。

 しかし、ただひとつ注文があるとすれば、それは警告の数を減らすこと。世間ではすっかりダーティなイメージが定着してしまった福岡だが、その中身は決して汚いプレーが多いわけではない。「審判への一言」。これでイエローカードを受けるシーンが多すぎるのだ。浦和戦で受けた野田の89分での退場も審判への抗議が原因になったもの。悔しい気持ちは分かるが、そろそろ自らを律することも学んで欲しい。結局は自分たちが損することになるのだから。



 さて、混戦に身をおくという意味では、大分も厳しい戦いの渦中にいる。尤も、こちらはJ1昇格争い。3年越の夢に向けて最後の戦いを挑んでいる。ディビジョン2は近年まれに見る大混戦。第38節を終えた時点で勝点6の間で6チームがひしめき合っている。残り試合は6。しかし、上位6チーム同士による直接対決は、山形が4、京都と大宮が3、仙台・大分・新潟が2と数多く残しており、最後まで予断を許さない展開になっている。

 大分は勝ち点68で5位。首位の京都と2位仙台との差は5だ。前節の仙台戦に破れて厳しい状況に追い込まれたが、まだまだチャンスは残されている。そのためには、明日から始まる山形、大宮との2連戦を90分以内で勝つことが最低条件だ。2試合ともアウェイという条件の中での戦いになるが、そういった厳しい条件での戦いを制したものにだけ昇格の資格がある。どこまで自分たちのサッカーができるか。全員の力が試される時だ。

 今年の大分は苦しい戦いの中、必死で上位陣について行くという戦いを繰り広げてきた。1巡目は順位こそ7位だったが首位との勝ち点差は6。小林監督が就任後の2巡目は、監督交代の危機感からか8勝2分1敗。その後、ややチームに陰りが見え始めたが、ベンチーニョの活躍で3巡目は6勝1分4敗で凌いでここまでやってきた。32節以降、2勝5敗と急激に失速した感があるが、ここが踏ん張りどころだ。

 ただ過去2年間同様、上位チームに弱いという欠点は解消されていない。今シーズンの大分の成績は22勝3分13敗。ところが、下位チーム相手には18勝1分1敗と圧倒的な勝率を誇っているのに対し、昇格争いをしている5チームに限れば4勝2分12敗と大きく負け越している。しかし、逆に言えば、これは取りこぼしの最も少ないチームの証明でもある。データから見る限りは、直接対決の2試合を制すれば残り試合を全勝する可能性は極めて高い。3年越しの夢は、この2試合にかかっている。



 そしてサガン鳥栖。その成績だけでものを言えば、ふがいないと言わざるを得ない。しかし、チーム事情を考慮すればやむを得ない結果でもある。ただでさえ少ない戦力にあってシーズン当初から怪我人が続出。満足にスタメンを組むことなくシーズンを終了しようとしているチームであることを考慮すれば、この成績は、ある意味では必然的な結果ということになるだろう。しかし、チームの特徴まで無くしてしまっては何にもならない。

 私が初めてサガン鳥栖の試合を見たのは99年シーズン。以前、東京に住んでいた時に鳥栖フューチャーズ存続活動に対して署名をしたという経験があり、その後、サガン鳥栖というチームが、どうしているのか見てみたいという気持ちからだった。初めて見るサガン鳥栖は、お世辞にも強いチームとは言えなかった。ホームゲームの全てを観戦できたわけではなかったが、結局、99年シーズンは、私はサガン鳥栖の勝利を見ることなく終えた。

 しかし、サガン鳥栖は私の心を惹いた。どんな状況でもボールを最後まで追いかけ、全員でピッチの上を走り回る姿が実に新鮮に見えた。サッカーの質が高いとは言えなかった。だが、整わぬ環境の中、ボールを真剣に追いかける真摯な姿が実に印象的だったのだ。こう感じたのは私だけではない。サガン鳥栖を応援する殆どの人が、異口同音に同じことを口にする。残された6試合、サガン鳥栖には、その特徴を生かしたサッカーをしてもらいたい。それが、自分たちの未来に向けてのリスタートになるのだということを信じて。



 泣いても笑っても、残りは6試合。後1ヶ月もすれば、今シーズンの結果は否が応でも決まる。それが、満足のいく結果なのか、そうでないのかは神のみぞ知ることだ。しかし、それはまた、自分たちがやってきたことの結果でしかない。努力した以上のものは得られないし、それ以下のものもない。ならば、最後の力を振り絞って自分たちが積み重ねてきたことを最大限に発揮してくれることを願わずに入られない。頑張れ!前を向け!そして、最後まで諦めるな!



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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