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 福岡通信 01/11/16 (金) <前へ次へindexへ>

 「待ってろ、世界」第80回全国高校サッカー選手権大会 福岡大会


 文/中倉一志
 高校サッカー界最大のイベント、全国高校サッカー選手権大会。憧れの全国の舞台を目指して、3,156校が各地で熱い戦いを繰り広げている。既に全国大会への切符を手に入れているのは34校。残る14地区でも代表校決定の大会は架橋を迎えている。138校が参加して行なわれている福岡県大会もいよいよ大詰め。7月22日から始まった長く厳しい戦いも準決勝を迎えている。勝ち残っているのは東福岡、柳川、三潴、東海第五の4チームだ。

 優勝候補の筆頭に上げられているのが東福岡。今年度は福岡県大会、インターハイ福岡県大会でともに優勝。東福岡の代名詞となった組織サッカーは今年も健在だ。ターゲット役を務める金子、2列目に控える衛藤と荒木、そして左サイドの池元が組み立てる攻撃は迫力満点。決勝トーナメントの2試合で16得点をたたき出した。課題は守備。互いの連携が整わず1回戦では3失点。どこまでDFの組織力を修正しているかが注目されている。

 一方、柳川と三潴は一次予選から勝ち上がってきたチーム。柳川はスイーパーを務める小玉を中心とした堅い守備と、テクニック溢れる川上、高橋を中心にした攻撃力が持ち味。ここまで5試合戦って、33得点1失点と非常にバランスが取れたチームだ。また三潴は攻撃力の高さが特徴で、準々決勝では筑前を6−1と一蹴した。2チームともシード校を破っての準決勝進出。ともに初の全国大会出場を目指すモチベーションは高い。

 ところで、東福岡と並ぶ福岡県高校サッカーの名門、東海第五は苦しいシーズンを送っている。福岡県大会ではシード校ながら決勝トーナメント1回戦で敗退。インターハイ予選では決勝トーナメントにすら進めず20年ぶりにシード権を失った。屈辱の1次予選からのスタートとなった今大会は、3試合で11得点を挙げて決勝トーナメントに進出。2回戦ではシード校の小倉に2−1と競り勝ってここまでやって来た。屈辱をばねにV2を狙っている。



 準決勝第1試合では東福岡と柳川が対戦。東福岡の組織力と柳川の堅い守備、そしてテクニック溢れる柳川の攻撃と若干不安定さが否めない東福岡の守備。試合前から好ゲームが予想されていたが、その予想に違わない好ゲームが展開された。まず主導権を握ったのは東福岡。トップの金子を中心に衛藤、荒木、そして池元が流れるようにボールをつなぐ。定評のある組織化された攻撃力は、試合を重ねるごとに更に迫力を増しているようだ。

 柳川は中盤でボールを奪うことが出来ずに押し込まれる展開が続くが、持ち味の粘り強さでゴールを守る。とにかくマークの意識が徹底されており、決して相手をフリーにさせない。また守備面でのカバーリングもよく、常に2人がかりで相手を潰している。攻め込まれているように見えても決して決定機を与えず、東福岡の攻撃を効果的に封じ込めた。ただ、さすがに攻撃までに果てが回らず、前半は0−0のまま折り返すことになった。

 どちらかといえば前半は柳川の狙い通りの展開。そして、後半に入ると互いに中盤のプレスが甘くなったこともあり、試合は攻め合いの様相を呈してきた。柳川は前半ボールに絡めなかった川上にボールが渡るようになり、決定機を作れなかった東福岡も柳川ゴールを脅かすようになっていく。しかし、拮抗した試合が続いたのも後半10分位まで。自力で上回る東福岡が後半の10分を過ぎた辺りから試合を掌握。これでもかといわんばかりにチャンスの山を築きだした。

 ところが、ここから柳川が粘りに粘った。後半だけで10本のシュートを浴びたがこれに耐え、延長戦で9本のシュートを浴びながらもゴールを守り抜いてPK戦に持ち込んだ。結局、PK戦は5−4で東福岡がものにしたが、柳川の健闘が光った試合だった。しかし、逆に言えば、東福岡の逞しさを感じさせた試合でもあった。ゴールが生まれなくても集中力を切らさず、不安視されていたDFも最後まで安定感を失わなかった。ここまでの戦いと比較しても、明らかに精神的に強くなっているようだ。



 さて第2試合の対戦は三潴と東海第五。こちらは攻め合いが予想されたが、東海第五が三潴を終始圧倒して3−0で勝利。3年連続の決勝戦進出を決めた。中盤でのパスワークはあまりなく、とにかく早くボールを前に運ぶという似たタイプ同士の対戦だったが、東海第五が早い時間帯に先制点を奪ったことで試合の流れが大きく東海第五に傾いた。その先制点は4分、大束からのFKを朝比奈が頭ひとつ抜き出てヘッド。綺麗なゴールだった。

 東海第五はとにかく前へ突き進む。常に相手より一歩早くボールに反応し、相手ボールにも激しいプレスで襲い掛かる。ガツガツ当たるという言葉がこれほどぴったりとくるチームもいない。今シーズンは不本意な成績に甘んじていたが、とにかく前へ出てガツガツ当たり、中盤を省略して最短距離でゴールを目指すサッカーは、東海第五の伝統そのもの。最後の大会で自分たちの持ち味を思い出したかのように、伸び伸びとプレーしている。

 そんな東海第五の前に、ただ前へ大きく蹴るしか出来なかった三潴は、後半に入ると中盤で意識的にボールをつなぐようになったが、東海第五の激しいプレッシャーの前に自由にプレーをすることが出来ない。そして迎えた後半の9分、田上からのロングフィードを前戦で受けた米倉がDFに囲まれながらもドリブルで突進。そのまま右足を振りぬいて豪快にゴールネットを揺らした。三潴が建て直しを計ろうという矢先の得点。試合はこれで勝負がついた。

 その後も優位に試合を進める東海第五は、後半の34分に駄目押しとなる3点目をゲット。最高の形で準決勝を勝ち抜いた。勝因は前後半を通じて、高い位置から激しいプレッシャーをかけ続けたこと。それが相手の自由を奪い、とにかく前へ行くという自分たちのリズムを作り出した。ここまでの不振が嘘のような試合振り。東海第五は伝統のサッカーを思い出した。決勝戦に向けて勝ちある内容だったということができるだろう。



 これで決勝戦は3年連続で東福岡と東海第五の対戦となった。高い組織力を誇りながら、時として集中力を欠くようなプレーが見え、最終ラインの不安定さが目に付いた東福岡だったが、準決勝ではこれを克服。100分間、さらにはPK戦が終了するまで高い集中力を保ち続け、そして安定した守備を見せた。「大会を通じて選手は成長している」という志波監督の言葉は十分に頷ける。決勝戦では更に逞しい姿を見せることになるかもしれない。

 また、東海第五も、これまでの不振から完全に脱却したといっていいだろう。激しいプレッシャー、裏を狙って直線的に飛び出すFW、前戦でロングボールを受ける米倉。なりふり構わず、前へ突き進む準決勝の戦いぶりは、紛れもなく伝統の東海第五のサッカー。「ノーシードでも優勝できることを見せたい」と平監督は試合後に語ったが、いまの力ならそれも十分に可能だ。これまでの鬱憤を晴らすべく、決勝戦でも激しい戦いをすることだろう。

 組織力なら東福岡が優っていることは衆目の一致するところ。そんな東福岡のプレーと比較すると、東海第五のサッカーは泥臭くも見える。組織とコンビネーションが全盛の時代にあっては、東海第五のサッカーが古臭く見えるのも否めない。しかし、相手に与える中盤での激しいプレッシャーもまた、近代サッカーならではのもの。間違いなくがっぷりと四つに組むであろう決商戦は、両者の力が拮抗した好ゲームになることは間違いない。

 決勝戦は、過去の2年間がそうであったように、東福岡の組織力と、東海第五の前ー直線的に進むプレッシングサッカーという図式で進んでいくだろう。一昨年は前に出る東海第五を華麗なパスワークを駆使して鼻先でかわした東福岡が勝利。昨年は、東海第五のプレッシャーが東福岡のパスワークを抑えた。はてさて、今年はどちらに軍配が上がるのか。注目の決勝戦は11月18日(日)12:00、博多の森球技場でキックオフされる。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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