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 福岡通信 02/02/02 (土) <前へ次へindexへ>

 サッカー観戦に行こう! 第11回九州クラブユースサッカー新人戦


 文/中倉一志
 天皇杯、高校サッカー選手権、そして全日本女子サッカー選手権と、2001−2002シーズンを締めくくるビッグイベントが終了し、日本サッカー界もつかの間のシーズンオフ。各地からはJリーグのクラブがトレーニングを開始したという情報が流れてくるが、公式戦が始まるのは3月2日。当然のことながら、私にとっては1年間で最も余裕のある時期だ。部屋の片すみに山積みになったままのサッカーの本を読むには最適の季節でもある。

 ところが、ふと福岡県サッカー協会のHPにアクセスしてみると、あるある、やはり試合はやっている。それぞれのカテゴリーに、それぞれのシーズンオフがあるのだが、サッカー全体を通してみれば試合が行われていない時はない。予定表に試合日程を書き写してみると、どんどん週末の日程が埋まっていく。結局、シーズンオフのはずが日程表は全て埋まった。のんびり本を読む時間はなくなったが、スタジアムで過ごす時間の楽しさに優るものはない。

 あいにく朝から冷たい雨が降る悪コンディション。おまけに、前日に参加した6時間にも渡る九州オフミでの喋り過ぎがたたって声が少々枯れていたが、デイバックに観戦ノート、ストップウォッチ、双眼鏡の三種の神器を詰め込んで自宅を出発。バスと地下鉄を乗り継いで、緑溢れる博多の森まで足を運ぶ。博多の森球技場を右手に見ながら、自然のままの丘陵地帯の一番高い所までやってくると堂々とたたずむ博多の森陸上競技場が見えてくる。今日は、この補助競技場で第11回九州クラブユース新人戦の第2節が行なわれる。

 参加しているのは、アビスパ福岡、サガン鳥栖、大分トリニータ、ブレイズ熊本、わかばFC、春日イーグルスの6チーム。1回戦総当りのリーグ戦で順位を競う。参加資格は1984年4月2日以降の出生者。高校で言えば1、2年生だけで行なわれる大会ということになる。U−18として活動している各チームにとっては、最年長の選手たちが抜けた新しいチームが始動する大会。来シーズンを占う上で大変興味深い大会でもある。



 一時は激しく降っていた雨も、試合が始まる頃にはすっかり小雨になり、キックオフとともに雲の間から青い空が顔を出し始めた。そんな中で第1試合に登場したのはブレイズ熊本と春日イーグルス。1月20日に行われた開幕戦ではともに敗れており、今日は初勝利を目指して対戦する。システムはともに3−5−2。中盤の底にはダブルボランチを配し、トップ下に構える選手がゲームメイクを担当する。

 試合は春日イーグルスのペースで進んでいく。春日イーグルスはテンポの速いパスワークと連携の取れた組織力が持ち味のチーム。新しいチームもその特徴を十分に発揮している。中盤でボールを奪おうとプレスをかけてくるブレイズ熊本を小気味良いパスワークでかわすと、巧みにスペースをついてボールを運んでいく。そのピッチを大きく使う視野の広さは九州でもトップクラス。判断の早さとカバーリングの良さもブレイズ熊本を上回っている。

 その勢いのままに、春日イーグルスは10分に先制。さらに18分には見事なスルーパスから2点目を奪って前半を折り返した。それにしても春日イーグルスが展開するサッカーは見事だ。余計なドリブルはせず、スペースを見つけてはそこに飛び出し、それを見逃さずにパスが出る。ゴール前でも決してクリアせずに、パスをつないでビルドアップして攻撃につなげていく。ボールを受ける時の身体の入れ方も巧みで、簡単に相手にボールを奪われることがない。

 しかし、後半に入るとブレイズ熊本も反撃に出る。後半13分、個人技で右サイドを突破。そこからのクロスボールに中央で合わせて1点を返した。疲れのためか、春日イーグルスの運動量が落ちたところに乗じてペースを取り戻し、次第にゴール前へ攻め込むシーンが増えてくる。試合展開は五分と五分。一進一退の緊張した展開が続く。しかし、試合はこのままタイムアップ。ブレイズ熊本にも勝機はあったが、組織力で上回る春日イーグルスが初勝利を挙げた。



 続く第2試合は地元アビスパ福岡が登場。初戦でサガン鳥栖に7−1と大敗したわかばFCと対戦した。ともに4−4−2でダイヤモンド型の中盤を形成して試合に臨む。しかし、残念ながら両チームには力の差がありすぎたようだ。開始直後からボールを一方的に支配するアビスパ福岡は、12分に先制点を挙げたのを皮切りに前半だけで4点をゲット。後半も力を抜かずに5得点。わかばFCに付け入る隙を与えずに9−0で完勝した。

 これまで九州のクラブチームの中では圧倒的な強さを誇ってきたアビスパ福岡。その強さは今年も健在だ。しかし、今年のチームは個人技や力で押し切るのではなく、チーム全体のバランスを取ってコンビネーションサッカーで相手を崩すチーム。ゴールラッシュで、ややもすれば淡白に展開になりがちのゲームだったが、最後までバランスを保とうとする意識が見て取れた。一方、敗れたわかばFCはこれからのチーム。技術的なことよりも、まだ始動したばかりのチームの脆さを抱えていた。今後に期待したいチームだ。

 さて、この日の最終試合は大分トリニータとサガン鳥栖の対戦。ともにJリーグの下部組織同士の対戦とあって、バランスの取れた布陣で中盤の主導権争いを展開している。そして、その主導権争いに勝ったのは大分トリニータ。15分を境にサガン鳥栖を自陣に押し込んだ。大分トリニータの攻撃パターンは、右サイドに大きく張っているMFのサイド突破と、FWの迫力あるドリブル突破。サガン鳥栖は全く前へ出られない時間帯が続く。

 前半はどうにか無失点で切り抜けたサガン鳥栖だったが、後半の12分、とうとう大分トリニータに先制点を許してしまう。そして、この失点を奪い返そうと前に出た瞬間、ゴール前約20メートル付近から大分トリニータが放ったロングシュートがサガン鳥栖ゴールに吸い込まれた。反撃に出ようとした瞬間の失点。サガン鳥栖にとっては痛い失点だった。この後、すっかりバランスを崩したサガン鳥栖は大分トリニータに翻弄され、終わってみれば大分トリニータが5−0で快勝した。



 第2節を終えて首位に立ったのは勝ち点6のアビスパ福岡。同じく勝ち点6の大分トリニータが得失点差で2位。以下、サガン鳥栖、春日イーグルス、ブレイズ熊本、わかばFCと続く。今日の試合を見る限りでは、総合力ではアビスパ福岡が頭ひとつ抜け出しているようだ。また、サガン鳥栖は大分トリニータの前に完敗したが、実力的には得点ほどの差はないように思われる。さらに、展開サッカーを信条とする春日イーグルスが、プロクラブの下部組織に何処まで通用するかも、これからの楽しみのひとつだ。

 さて、スタンドが併設されていない補助競技場での開催ということもあって、チーム関係者以外の観客は殆どいなかったが、それでも熱心なサッカーファンが、ここかしこに顔を見せていた。サガン鳥栖ユースの試合には必ずといっていいほど駆けつける2人のサポーターは、この日も大きなフラッグを広げ、メガホンを叩きながら声援を送っていた。代表やJリーグの試合のような緊迫感はないが、サッカーはサッカー。スタジアムで観戦する楽しみは変わらない。

 この日は、サッカー仲間と、会場で顔を合わせた顔見知りのサポーターと一緒に観戦。私も楽しい1日を過ごした。会場には売店などはなく、近くにはコンビニすらないため、食料と折りたたみの椅子を持参して、自動販売機のホットコーヒーで寒さを凌ぎながらの観戦だったが、一つ一つのプレーに感激し、ため息をつくのはいつもと一緒。どんなサッカーの試合にも、サッカーの面白さや難しさがちりばめられている。そしてみんな必死になってボールを追っている。

 Jリーグ開幕戦までの間、私のスケジュール表に書き込まれた試合は4大会12試合。残念ながら開催日が重なってしまって見に行けない試合を含めれば、まだまだたくさんの試合が予定されている。レベルの高低や、観客が多いか少ないかなど気にする必要はない。どこへ行ってもサッカーの面白さや難しさを教えてくれるからだ。この週末に予定されている試合は、九州クラブユース新人戦第3節と福岡県高校サッカー新人戦、そして幼稚園サッカーもある。さてさて、どれを観戦にしに行こうかな。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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