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 福岡通信 02/02/15 (金) <前へ次へindexへ>

 もうすぐ開幕。揺ぎ無い信念で戦え!


 文/中倉一志
 まだ冬の気配が強く残る2月。冷たい風が頬を打つ日が続く。しかし、そんな毎日にも、時折、暖かな日差しとともに柔らかな空気が身体を包む日が混じる。本格的な春の訪れにはまだ時間が必要だが、確実にそれが近づいていることを感じさせてくれる。そんな気候とともに各地ではJリーグのトレーニングキャンプが始まった。まだ調整段階ということもあって伝わってくる情報量は少ないが、各クラブとも入念に準備を行なっているようだ。

 そんな中で最も気になるのは、当然のことながら九州にホームタウンを置く3チームだ。昨シーズンは3チームとも散々な1年だった。2000年シーズンで生まれ変わったかに思えた福岡だったが、蓋を開けてみれば、それまでの福岡に逆戻り。残留争いをする他のチームがもたついたこともあって、いつものようにギリギリのところで踏みとどまるかと思えたが、勝負どころの終盤で5連敗。勝ち点3が奪えずにとうとうJ2への降格が決まった。

 3年目の正直を目指した大分は、いつものシーズンと変わらない戦いで昨シーズンも夢が破れた。チームのコンビネーションが整わず、補強した外人も期待通りに働かない。盛り返したかに見えると上位同士の対戦に破れて急降下。そして、いつものように最終戦に望みを残したが、やはりいつものように勝ちきれなかった。そして鳥栖は、フロントのゴタゴタ劇が表面化。選手たちを支えていくべきフロントが選手たちの足を引っ張った。

 昨シーズンの3チームが直面した問題は、クラブ運営の根幹に関わるものだった。冷静に考えれば、そうした問題を引きずっている限り、思うような結果は出るはずもない。目先はごまかせても、結局は納まるところに納まってしまう。そんな現状を打開するため、各チームは、その問題に正面から立ち向かうことを宣言。新しく生まれ変わることを目指してトレーニングを積んでいる。はたしてその成果はいかに。サポーターは、その動向に注目している。



 さて、9日の土曜日。久しぶりに鳥栖スタジアムに足を運んだ。宮崎での合宿を終え、鳥栖市内でトレーニングを続ける鳥栖のトレーニングマッチを見学するためだ。対戦相手は春先に行なわれるデンソーカップへ出場する九州大学選抜チーム。この時期には格好の相手との対戦となる。新しく指揮を執る副島監督はどんな戦術を取るのか、新加入の選手たちはどんな働きを見せるのか。そして若手は育っているのか。チェックする項目は多い。

 鳥栖のフォーメーションは4−4−2。SBは右に森、左が関本。CBはキャプテン川前と新加入の三好が務める。中盤はダイヤモンド型のフォーメーションを組み、ボランチに佐藤(陽)、両アウトサイドは右に北内、左に横浜FCから来た石橋。トップ下には大分から加入の川崎を配している。2トップは森田と福留。そして、ゴールマウスはシュナイダー潤之介が守る。どの程度まで調整できているか。それが気になって思わず身を乗り出した。

 結果は前半を終えて0−0。しかし、この時期としてはまずまずの調整振りだった。なかでも順調な調整振りが窺えたのが最終ライン。昨シーズンの3バックから4バックに変えて臨んでいたが、互いのカバーリングも問題なく、九州大学選抜にチャンスらしいチャンスを与えなかった。川前と新加入の三好が組むCBは安定感も十分。三好は大きな声でコーチングを行う等、新天地でプレーする意欲を前面に出してボールを跳ね返していた。

 攻撃での注目点は新加入の川崎の働きだろう。この日の布陣から見て、川崎を起点に両サイドからのオーバーラップ、あるいは、ポストで落としたボールに川崎が絡んでラストパスを供給するというのが、今年の鳥栖の武器になりそうだ。ダイヤモンド型の中盤を組んだのも、おそらくは両サイドからの崩しを意識してのものだろう。右サイドの北内、そして右SBの森は、マイボールになるたびに盛んにオーバーラップを狙う動きを見せていた。



 そんな攻撃の意図が形に表れたのは22分。右サイドに流れてきた川崎がワンタッチで北内にボールを戻すと、すかさず森がオーバーラップ。北内からのパスを受けてクロスボールを送ると、二アに森田、ファーサイドに福留が飛び込んだ。福留のボレーシュートはクロスバーを越えてしまったが、5人の意思がひとつにまとまり決定的なシーンを作り出した。また福留に代わって途中から出場した佐藤(大)の存在感は抜群。昨シーズンの後半に見せた好調さをそのまま今シーズンに持ち越しているようだ。

 ただし、互いのコンビネーションはまだ不十分。攻撃の要となる川崎にボールが上手く入らず、また、ポスト役の森田が高い位置でボールをキープできないため、中々いい形を作ることができなかった。また、右サイドからの崩しは形が出来つつあるが、石橋、関本が務める左サイドは前へ上がれないままだった。そして、この日の布陣の通りワンボランチで臨むのならば、もっと両サイドのMFが効果的に守備に絡む必要があるだろう。

 後半は佐藤(大)を残して全員を入れ替えて45分をたたかった。途中から、小石、竹元も出場し、それぞれに元気のあるところを見せた。しかし、前半のメンバーと違って、選手同士の意思疎通は殆どなく、大学生相手に押し込まれるシーンが目立ったのも確か。全体的に覇気がなかったのが気にかかるところだ。J2は44試合の長丁場。開幕時点で先発に名を連ねていなくても必ず出番はやってくる。その時にチャンスをものにできるよう、しっかりと調整をしてもらいたいものだ。

 13日には名古屋との間でもトレーニングマッチが行なわれたが、この2試合での起用から、どうやら先発メンバーも絞られてきたようだ。最終ラインは、9日の先発に松田を含めた5人の争い。中盤はボランチの佐藤(陽)とトップ下の川崎が確定。残る2つのポジションを鈴木、矢部、北内が争うことになりそうだ。FWは佐藤(大)が確定。コンビを組むのは小石と竹元か。ターゲットマンとして高さのある森田を使いたい気もするが、身体のキレが悪いのが気にかかる。



 さて、この原稿がアップされる頃は2002年シーズン開幕までは残り2週間あまり。いよいよ本番が近づき、最後の仕上げの段階に入っている頃だ。3チームとも1〜2試合のトレーニングマッチを戦って開幕に備えることになる。課題は整理できたか。目標達成への意思統一は出来たか。そして、シーズン途中での不足の事態に備えられる準備は出来ているか。それらの最終チェックと、不足している部分をこの2週間で補う作業が続く。

 現在のところでは、どのチームも順調な調整振りが窺える。もっとも、この時期で問題を抱えているようでは話にもならないが、様々な問題を抱えたままシーズンオフに突入した頃と比較すれば、はるかに状態がいいことは間違いない。しかし、大切なのはこれからだ。J2は44試合の長丁場。1年間を通して思い通りに戦うことは不可能に近い。そんな時にも変わらぬ強い意志をもって、全員がひとつになって戦える体制をこの2週間で作り上げなければならない。

 それぞれのチームに、それぞれの目標があるはずだ。その目標が何であるのか。それをどうやって達成するのか。当たり前のことではあるが、そうしたクラブの理念と目標をフロント、職員、現場スタッフ、そして選手たちが、同じレベルで理解していなければ目標は達成しない。調子のいい時はいいだろう。しかし、思うような結果が出なかった時に、少しばかりの意識の差が大きくなって、やがては歯車が狂いだす。このことは、3チームとも痛いほど分かっているはずだ。

 これで十分ということはない。繰り返し、繰り返し、チームの目標、それを達成する方法を徹底させたチームだけがシーズン終了後に笑うことが出来る。以前、鹿島アントラーズを取材したとき、誰に、何処で、何を聞いても、全員が全く同じことを答えてくれたことを思い出す。いい選手が集まっているから強いのではなく、どんな時でも全員が揺ぎない共通理解を持っているから強いのだ。今年こそ、九州の3チームが揺ぎない信念で戦い抜いてくれることを期待したい。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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