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 福岡通信 02/02/23 (土) <前へ次へindexへ>

 「Just In One」。今こそ、ひとつに


 文/中倉一志
 1年でJ1復帰を目指すアビスパ福岡の選手を激励する「アビスパ激励のつどい2002」が17日、福岡市の中心部にある福岡市役所「触れ合い広場」で開催された。アビスパ福岡後援会が主催し、福岡市、ならびに福岡ブルックス(株)が共催するこの激励会は、44試合の長丁場を戦う選手たちにエールを送ろうというもの。当日は天候の具合が心配されたが、開場時間の午後1:00には青空が顔を見せ、多くのサポーターたちが選手たちを激励した。

 激励会には、山崎広太郎福岡市長の他、主催者である後援会の幹部、アビスパ福岡の代表取締役社長の友池一寛氏以下、監督、コーチ、選手34人が勢ぞろい(鏑木選手は都合により不参加)。エールを送ろうと集まってきたサポーターは1300人を数えた。会場内を歩いてみると、フロントの幹部の方たちが見える。そして、スタジアムで見知ったサポーターたちの多くも顔を揃えている。運営は全てボランティア。誰もが、再びJ1の舞台で戦うことを夢見ている。

 激励会の開始に先立って、友池社長が「新しいアビスパ福岡は、このメンバーで、今シーズン、精一杯力を出して頑張ります。どうか皆様方の更なるご声援、ご支援をお願い申し上げます」と挨拶。それを受けた山崎福岡市長も、「本当の意味の市民球団を作ろうと、そして市民が支えていって、このアビスパを本物にしていこう、このように私ども思っております。もちろん、福岡市も全面的に応援をしてまいります」と変わらぬ支援を約束した。そして、会場のサポーターも大きな拍手でこれに応えた。

 この後、会場内に用意された4つの横断幕に、選手、サポーターたちがメッセージを書き込んだ。並んだメッセージの殆どはJ1昇格を目指すものばかり。そして、みんなの気持ちをひとつにする象徴として、また、この日の思いを忘れずに44試合戦い抜くために、この横断幕は試合開催時にスタンドに張り出されることになる。昨シーズン終了後に大きく揺れたアビスパ福岡だったが、新しいシーズンを迎えるに当たって、全員の心をひとつにする激励会だった。



 新シーズンを迎えるに当たって、その決意を新たにする儀式でもある「激励のつどい」。1年でJ1復帰という目標の達成が求められているアビスパ福岡にとっては、例年以上に重要な意味を持つ激励会だった。J2の舞台は決して楽な戦いの場所ではない。ハードなスケジュール、大きなプレッシャー、チームにかかる負担は想像以上に大きい。そんな中で若手も育成していかなくてはならない。目標を常に明確にしておくことは何よりも大切なことだ。

 そういった意味において、この日の激励会は、アビスパ福岡にとって価値のあるものになったはずだ。何より、選手たちの一番の励みになったのが、会場に駆けつけた1300人のサポーターたちだろう。「熱しやすく冷めやすい」「強ければ盛り上がるが、弱くなると見向きもしない」と自らを評する福岡の人たちが、変わらぬ気持ちでサポートすることを表したことは、チームが確実に地元に密着しつつあることが証明されたもの。嬉しくもあり、また、チームが背負う責任の重さを再確認することが出来たはずだ。

 その重要さは、チームを支えるサポーターにとっても変わらない。多くの中心選手がチームを去ったとは言え、アビスパ福岡は「おらが町のチーム」。ここを旅立っていった選手たちを応援することはもちろんだが、何より大切なことは、福岡にホームタウンを置くチームを立派に育てることだ。そのためには、チームを知り、選手と触れあい、その目標を確認することは不可欠なこと。12番目の選手の活躍がなければ目標も達成しない。

 そうした中で、チームの意気込みを肌で感じ、2時間に渡って選手たちと触れ合えたことは、チームを応援する人たちにとって嬉しい機会だった。会場には、老若男女、様々な人たちが訪れていたが、多くの人たちが憬れの選手たちとの触れ合いを望んでいたはず。その望みに応え、サイン待ちの列が50メートルほどにまでなったにもかかわらず、嫌な顔一つせずに応じた盧廷潤、呂比須、ビスコンティの姿はトッププロのあり方を感じさせた。



 さて、チームの意気込みを感じるとともに、和気藹々と過ごした2時間の「激励の集い」。選手たちとの触れ合いの時間が終了した後、サポーターを代表して、横山創君(よこやま・つくる君 小学4年生)が、チームにエールを贈った。

「サポーターを代表して応援メッセージを送らせていただきます。たくさんの新しい選手を迎え、いよいよアビスパとともに僕たちも12番目の選手として一緒に頑張る時がきました。3月3日の博多の森での開幕戦では、僕としては、盧廷潤選手のセンタリングを太田選手がヘディングであわせ、2列目からビスコンティ選手のシュートが決まり、大分に圧勝すると思っています。今井監督、いかがでしょうか。今年は試合数も多く、選手の皆さんは大変でしょうけれど、怪我をせず頑張ってください。僕たちはアビスパ福岡を信じて、博多の森へ応援しに行きます。僕たちサポーターは、熊ん蜂軍団のロイヤルゼリーであり、プロポリスになれるよう大きな声で応援します」

 サポーターの気持ちを素直に表現した見事なエールだった。これに応えて、藤崎キャプテンと今井監督は次のように応え、J1復帰という目標の達成を約束してくれた。

「今年はJ1昇格というのが唯一の目標。そのためにフロントも変わりましたし、監督も選手も変わりました。今年はアビスパ福岡が変わるチャンスだと思っています。そのためには、サポーターの皆さんの力がどうしても必要になると思いますので、是非、博多の森に足を運んで頂いて、僕たちに力を貸してください。今年1年、J1昇格のために最大限の努力をすることを皆さんに約束しますので、どうか、よろしくお願いします」(藤崎キャプテン)

「チーム、フロント、サポーターが一体となって我々の夢の実現に向けて力を発揮したいというのが私の希望でもあります。チームは、常に力をグラウンドで100%出しますし、見に来てくれたお客様に感動を与えるようなゲームをすることを誓います。それと同時に、福岡市民、チーム、フロントと、11月にまた楽しい報告会が出来たらなと思います」(今井監督)



 そして激励会は、「触れ合い広場」にJリーグ1のビッグフラッグを広げ、福岡県サッカー協会副会長・後援会実行委員長の下大迫三徳(しもおおさこ・みつのり)氏の発声のもと、サポーター・選手全員が声を揃えてエールを交換して終えた。その声は一段と大きく福岡市のオフィスビル街に響き渡った。リーグ戦終了後、約3ヶ月ぶりに見るビッグフラッグは、アビスパの未来を予言するかのように、ゆったりと、そして堂々とたなびいた。

 開幕まで後一週間。アビスパ福岡の歴史の中で、最も厳しく長いシーズンが間もなく始まる。現在の状況を「それ程大きな怪我人もなく、順調に、みんなのコンディションも上がっているし、選手1人、1人が情熱を持ってトレーニングに取り組んでくれている」と今井監督は語ったが、44試合を、このままの状態で進むことは不可能に近い。不測の事態も起こるだろう。そんな時、みんなで心をひとつにした激励会のことを思い出して欲しい。

 合言葉は「Just In One」。今こそ、ひとつにだ。苦しい時、困難にぶつかった時、それを跳ね返すのは全員の力をひとつにすることしかない。全員が同じベクトルを持って、気持ちをひとつにして戦うことなくしては、困難を乗り越える術はない。フロントも、職員も、チームも、そしてサポーターも、同じ目標を見つめなければ夢は実現しないのだ。J1では、資金不足と選手層の薄さに泣かされたが、J2で戦うための資金、選手は十分に揃っている。あとは、どれだけ気持ちをひとつにできるかだけに全てがかかっている。

 激励会も終了し、ふと上空を見上げるとビルの谷間から青い空が見えた。すると頭の中に、メキシコワールドカップ予選の韓国戦で、NHKの名物アナウンサーである山本浩氏が語った「この空はメキシコの青い空につながっているような気がします」というフレーズが蘇った。あの時、国立競技場の空はメキシコにつながらなかったけれど、この福岡の空は、きっとJ1の舞台につながっているはずだと言い聞かせて会場を後にした。



※このレポートは「online magazine yahoo 2002CLUB」、ならびに「online magazine ISIZE 2002CLUB」に掲載されたものです。
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