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 福岡通信 02/05/10 (金) <前へ次へindexへ>

 たった1つの枠を巡る戦い。ユースチーム、ただいま奮闘中。


 文/中倉一志
 去る4月21日から第13回九州クラブユースサッカー選手権大会が行われている。参加チームはアビスパ福岡、大分トリニータ、サガン鳥栖の各ユースチームと、春日イーグルス、わかばFC、ブレイズ熊本、ランザ熊本の7チーム。1回戦総当りのリーグ戦を行って、8月に行われる日本クラブユースサッカー選手権への出場チームを決定する。九州地区に割り当てられた出場枠は1。狭き門を目指して連日熱い戦いが繰り広げられている。

 ところで、高校サッカー界では強豪として知られている九州も、クラブユースチームとなると、残念ながらその実力は高いとは言えない。1昨年、昨年と3チームが全国大会に駒を進めたが、いずれもグループリーグで敗退している。各県に全国的な強豪チームが存在しているため、高校サッカー選手権を夢見る有望選手たちが強豪校への進学を選んでしまうためで、そのため、ユース年代(U−18)のチームの維持が難しいクラブさえある。

 実際のところ、中学年代では福岡県内だけでも30を越えるクラブチームが存在しているのだが、U−18の大会に参加しているのは上記の通り7チームだけ。昨年参加していた志免FCは今大会には出場していない。一時は参加チームも多く2部制を採用していた時期もあり、そのため3チームの出場枠が割り当てられていたのだが、参加チームの減少により、今年から全国大会への出場枠は僅かに1つになってしまった。

 しかし、参加チームはそれぞれに伝統のあるクラブ。クラブチームらしいテクニックと戦術を有し、なかなか見ていて楽しいサッカーを展開してくれる。一発勝負のトーナメント戦ではなく、年間を通してリーグ戦を行っていること、勝負至上主義ではないこと等がその理由だが、高校生のチームと比べても遜色のないプレーを展開している。むしろ、戦術やテクニック、身体の使い方などはさすがと思わせる場面もある。サッカーフリークにとっては見逃せない試合も多い。



 さて、私の今シーズンユース初観戦は第3節。5月3日に行われたサガン鳥栖ユースvs.大分トリニータユースの試合となった。この試合はJ2第13節に鳥栖スタジアムで行われたサガン鳥栖vs.大分トリニータの試合の後に行われたもので、トップチームとユースチームが同一日に戦うという心憎い演出も手伝って多くの観衆が見守る中で行われた。激しい雨と、時折雷が鳴るという厳しい天候ではあったが、選手たちは若者らしいはつらつとしたプレーを見せてくれた。

 試合は大分が終始鳥栖を圧倒。中々ボールを持たせてもらえない鳥栖は相手陣内へ進入することさえかなわない状況が続く。それでも鳥栖は必死の守備を見せてゴールを死守していたが、前半の23分に直接FKのチャンスに大分がヘディングシュートを決めて先制。そして、後半28分に追加点を挙げた大分が2−0で鳥栖を順当に下した。鳥栖は後半の8分にGKと1対1のシーンから放ったシュートが決まらなかったのが悔やまれた。

 とにかく大分の実力の高さが目立った試合だった。今大会の優勝候補に数えられるだけのことはあるチームだ。基本的な布陣はダブルボランチを配した4−4−2。ゲームを作るのはボランチで、必ずここを経由してボールが左右のMFへと配給されていく。高い位置に大きく開く左右のMFは、このボールを受けて左右からクロスボールを折り返す。ワンタッチでのボール回しが徹底されており、悪コンディションの中でも小気味良くボールを回していた。

 強さの秘密はCB、ボランチ、FWの縦のラインにしっかりとした技術を持った選手を配していること。この縦のラインがしっかりしているため攻守に渡ってバランスのいいサッカーを展開している。また後半は、途中から3−5−2の布陣を取ったり、選手のポジションを入れ替えたりしていたが、どの選手もそつなくこなしているのにも驚いた。それだけ技術や戦術眼が優れているということなのだろう。エースFWとしてチームの攻撃を引っ張る温選手の動きも光っていた。



 翌日に行われた第4節では優勝候補大本命のアビスパ福岡が登場。こちらはブレイズ熊本と対戦したが、前半の8分に早々と先制点をゲットすると、後はゴールラッシュ。9分、19分、39分と立て続けに得点を奪って前半だけで勝負を決めてしまった。更に攻撃の手を緩めない福岡は後半の3分にも追加点をゲット。そして、その後もゴールを奪いつづけて、結局8−0の大差でブレイズ熊本を下した。さすがは優勝候補筆。その実力を遺憾なく発揮した。

 福岡のフォーメーションは4−4−2。この日はワンボランチの前に3人のMFを並べる布陣で臨んでいた。福岡の特徴は一言で言えば非常にバランスに気を配っているチームだということ。特定の誰かが目立っているわけではなく、全員がピッチに広く、そして程よい距離を保ってポジションを取り、これが最後まで崩れない。だからといって自分のポジションにとらわれているわけではなく、移動をすれば誰かがそのスペースを埋め、そして他の誰かが、新たに出来たスペースを埋めていく。

 これが実にスムーズに繰り返されている。それもフォローの意識が徹底されているからなのだろう。そして陣形が乱れたらバックラインへボールを戻し、そこから必ずワンボランチに預け、個々を起点にボールを広く動かしていく。特定のストライカーやパッサーは存在せず、全員で連動してボールを運んでいくさまは、まるでピッチの上に幾何学模様を描いていくようにも見える。得意のパターンは右サイドかにの崩し。ここをMF、SB、そしてボランチが何度もオーバーラップしていた。

 これまでユースのタイトルを独り占めしてきた福岡。その実力は今年も変わらない。組織としての完成度は大分とともに、今大会参加チームの中では群を抜いているといっていいだろう。大分との違いがあるとすれば、大分がエースFW温を中心に組み立て要るのに対し、福岡は全員でボールを動かしていること。チーム全体のバランスの良さなら福岡に部がありそうだ。しかし、両チームの戦いは一歩も譲らぬ好ゲームになることは間違いないだろう。



 今年の九州クラブユースサッカー選手権大会は、優勝候補筆頭の福岡と、それを追う大分の一騎打ち。それにイーグルス、サガン鳥栖と続く展開になりそうだ。イーグルスは質の高いパスサッカーを展開するユースチームらしいチーム。どれだけ2強に迫れるかが注目のチームだ。同じ福岡勢では、名門「わかばFC」の元気のなさが気になるところだが、新人戦でも試合が進むに連れてチームが出来上がっていったように、今大会でも今後の巻き返しに期待したいところだ。

 ところで、いつもユースの試合を観戦していて思うのは、観衆の数が非常に少ないことだ。もっとも、観客がいようがいまいがサッカーには変わりなく、サッカーの魅力は観衆の多さに関係なく見る者の心を捉えるものであるが、やはり、観客が多いに越したことはない。現状では、スタジアムに訪れているのは選手の家族の方がほとんど。トップチームにあれほどの声援を送るサポーターたちも、ユースの試合も見るという人たちは少ない。

 確かに彼らはアマチュア選手。Jリーグや日本代表の試合のような興奮と感動を我々に与えてくれるわけではない。しかし、育ち盛りの選手たちが試合を重ねるたびに成長していく姿や、必死になって11人でボールを追う姿は、そういった感動とは別の感動を私たちに覚えさせてくれるものだ。そんな彼らをもっと多くの人たちに応援して欲しいと思う。スタンドから彼らの姿を見守るだけで十分励みになるはず。是非、機会を見つけてスタジアムに足を運んで欲しい。

 ただ、現状ではユースチームの情報が殆ど手に入れられないのも事実。もっと情報の開示が必要であるのだが、手弁当で大会を運営しているユース連盟や、町のクラブチームでは広報活動に力を入れることは難しい。だからこそ、Jリーグ加盟のチームに、是非ユースチームの情報を積極的に流してもらいたい。マッチデープログラムや公式HPに、せめてスケジュールを載せてくれれば、もっと多くの人たちの関心を持つはずだ。

 さて、第6節以降のスケジュールは下記の通り。時間に余裕のある方は、是非覗いてみて欲しい。

第6節 5月12日(日)
春日イーグルスvs.ランザ熊本   鳥栖北部グラウンド  13:00
サガン鳥栖vs.ブレイズ熊本   鳥栖北部グラウンド  15:00
アビスパ福岡vs.わかばFC   雁ノ巣リクレーションセンター  13:00
第7節 5月19日(日)
アビスパ福岡vs.サガン鳥栖   唐津市陸上競技場  15:00
ブレイズ熊本vs.ランザ熊本   雁ノ巣リクレーションセンター  13:00
大分トリニータvs.春日イーグルス 同上  15:00
第8節 5月26日(日)
春日イーグルスvs.サガン鳥栖   大分(開場未定)  11:00
わかばFCvs.ブレイズ熊本 同上  13:00
アビスパ福岡vs.大分トリニータ 同上  15:00
第9節 6月2日(日)
アビスパ福岡vs.春日イーグルス   鳥栖北部グラウンド  11:00
わかばFCvs.ランザ熊本 同上  13:00

※大会会場につきましては都合により変更される場合があります。観戦に行かれる方は、事前に各チーム、ならびにスタジアムにお問い合わせされることをお勧めします。



※このレポートは「online magazine fantasista 2002CLUB」に掲載されたものです。
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