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 福岡通信 02/07/26 (金) <前へ次へindexへ>

 どこへ行く、アビスパ福岡


 文/中倉一志
 目の前には信じられない光景が広がっていた。第20節の対C大阪戦、相手は同じプロのチームなのに、同じJ1を目指しているチームなのに、まるで大人と子供のようにあしらわれている福岡の姿がそこにはあった。下手とか、上手いとか、そういう問題ではない。そんなことを論ずる前に、サッカーが成り立っていないのだ。まだリードしているのに下を向く選手たち。まだ同点なのにあきらめる選手たち。そして逆転負け。何も手を打たなかった指揮官は、試合が終わると同時にさっさとロッカールームに引き上げていった。

 とうとう来るべきときが来てしまったようだ。こうなる予想がついていなかったわけではない。おそらく、アビスパ福岡を愛する人のほとんどが、そんな予感を抱きながら今シーズンの戦い振りを観ていたはずだ。それでも、ボールを追いかける選手たちを信じ、自分たちの夢を信じ、精一杯努力することを選択して、力の限り福岡を応援してきた。いろんな問題が起こった。それでもなお、なんとか良くしよう、そんな気持ちで必死で応援を続けてきた。

 原因はハッキリしている。「フロントがプロじゃない」「誰も責任をとろうとしない」誰もが同じ事を口にする。声高に抗議をする者。そんな思いを封印して精一杯選手たちに声援を送る者。フロントと会合を開いて直接話をする者。そのスタイルは様々だが、みんな必死になって自分たちの思いを伝え、問題点を指摘しつづけてきた。それもチームを愛するが故、アビスパ福岡を少しでも良くしようと思うが故の行動だった。

 試合に負けるのは、もちろん選手たちにも問題がある。すべてがフロントと監督のせいではない。しかし、持てる力をフルに発揮できるように環境を整えるのがフロントの仕事。チームのモチベーションを上げ、不測の事態に対応する適切な処置を施すのが監督の仕事だ。今のチームの状態は、フロントや監督の問題がのっぴきならないところまで来ていることを象徴しているに過ぎない。問題の大半はフロントと監督にあるのは明白だ。



 しかし、いくら伝えてもその声は届かない。いくら伝えても誰も問題解決に行動を起こしてくれない。聞こえてくるのは、サポーターの思いを逆なでするようなコメントばかりだった。それでも、言葉がどうであれ、問題解決に努力してくれれば、それでかまわなかった。チームが少しでもいい方向へ行くのならば、多少のことは我慢してもよかった。しかし、問題は放置されたまま。自浄作用は働かず、外部の声には耳を貸さず、とうとう、来るべきところまで来た。

 そもそも、フロントは何を目標に今年の経営に取り組んだのだろうか。くどいようだが「1年でJ1」ではなかったか。そのために必要なことは何か。現状と目標とのギャップはどれほどあるのか。そのギャップを埋めるためには何が必要なのか。そのためにはどんな手を打てばいいのか。それを具体化するためにはどうすればいいのか。フロントは、これらのことについて明確に答えることができるのだろうか。まさか、どこからか監督を連れてきて「1年でJ1」とでも伝えれば、それで目標が叶うと思ったわけではないだろう。

 誰が見たところで、選手層はJ1を狙えるだけの戦力はある。それでは何故、あんな試合にしかならないのか。答えは簡単だ。努力する方向が間違っているからだ。それは、選手もサポーターもわかっているはずだ。それなのに方向を変えなければ、モチベーションは上がるどころか下がるだけだ。そしてチームは悪循環に陥っていく。目指した方向が違うことが分かったなら、即刻手を打つ。それは当たり前のことではないのか。もっとも、間違っているという認識さえないのかもしれないが。

 だが、いまの現状を見て、このままでも良くなるなどと思っているのなら、もはやこれまでだ。また、良くならないと認識していても、何も手を打たないのであれば同じことだ。なにをしていいのか分からないなどというのならフロントとして問題外。追求されるのが嫌ならクラブを去るしかない。自らが公言したことは守るのが当たり前。それを条件に支援してくれた人たちに対して責任を取るのは当たり前。その当たり前のことが出来ないのなら、当たり前の人間にバトンタッチするしかない。



 監督も同じことだ。「1年でJ1」に昇格させることを仕事として引き受けたのだ。ならば、それを実行するだけのこと。誰にでも分かる当然の理屈だ。しかも、J2で戦うことを前提とするのなら十分な戦力がある。現在の成績は指導内容に問題があることは明白だ。それなのに、何故方法を変えないのか。何故「だんだん良くなっている」などという言葉を繰り返すのか。普通にやれば勝てる戦力はある。普通に戦えないのは誰の責任だというのだろう。

 以前、この時期に監督を代えても、よりよくなることはないだろうと書いた。それは今も変らない。だからこそ、監督に自らを変えることを望んだ。それが現在の監督としての責任のとり方だからだ。しかし、それも無理だったようだ。大分戦、C大阪戦を見る限り、結局のところ何も変っていない。もっとも、多少なりともチームに変化が見えないわけではない。しかし、監督に求められているのは、多少良くなることではない。劇的に変ることなのだ。

 選手起用にも疑問は山ほどある。C大阪戦では形勢が不利になっても何もしないで静観を決め込みチームをさらし者にしたが、選手を代えるなり、守り方を変えるなり、手の打ちようはあったはずだ。なるほど、ベンチには流れを変える選手がいなかったことは確かだが、ベンチ入りの選手を選んだのも監督だ。もう負けが許されない現状にあって、総力戦を想定したベンチ入りメンバーを組まないなどということ自体が信じられないことだ。

 求められているときに、求められていることを行動に移さない指揮官ならば、これから先、悪くなることはあっても、良くなることはあり得ない。事実、中断前に7だった3位との勝ち点差は、20節を終えて12にまで広がっている。この現状を見て、まさか自分がやりつづけた方がいい結果になると思っているわけもないだろう。劇的に変ることが出来ないのなら答えはひとつしかない。例えどんな監督が来ようとも、選手たちの危機感が増すという効果はあるはずだ。もはや監督の手の内に残っている最善のカードはそれしかない。



 それでも、1年でのJ1復帰が出来ないだけなら、まだ救いようはある。Jリーグがある限りチャレンジしつづけることが出来るからだ。スポンサー収入は間違いなく減るだろう。観客数も激減することは間違いない。しかし、地道に正しい努力を続けていけば、必ず努力が実るときが来る。クラブがそうした努力を絶え間なく続けてくれるのならば、チームを愛する本当のサポーターは、どこまでもチームを応援しつづけてくれることだろう。

 しかし、現状の問題はJ1昇格を逃すことだけに留まらない。現在、アビスパ福岡が直面している危機とはチーム存続の危機に他ならないのだ。結果だけを見れば、現在のアビスパ福岡は、行政や支援企業からやってくる人間のための単なる肩書きに成り下がっている。そんな企業を税金で支えていくことを誰も支持するわけはない。この状態が続くようならば、近いうちにクラブ不要論が噴出する。それは、決して遠い未来の話ではない。そうなったら誰にも止められない。

 何故、福岡の地にプロサッカーチームが必要なのか。そうした視点が、フロントの中から、いつの間にかなくなってしまっていないか。少なくとも、やっていることにJリーグの理念が感じられることはない。何もしないで任期を終えて親企業や役所に帰る、あるいは定年を迎える。それと、Jの理念がどう結びつくのか、私には皆目検討がつかない。そんなクラブには、優秀な選手も、優秀なフロントも来るはずはない。そして、そんなクラブには、誰も夢や誇りを持つことはない。

 サポーターが感じている本当の危機とは、おそらくはそういうことだ。だからこそ、愛するチームを支えるために、愛するチームを何時までも存続させるために必死になって活動しているのだ。しかし、残念ながら、サポーターが経営責任を取れるはずもなく、危機感も問題意識ももっていながら、結局はクラブが変ることを待つしかないのだ。そんなサポーターたちをフロントや監督はどう見ているのだろうか。遅いかもしれないが、いまがラストチャンスだ。クラブには何らかの行動を起こして欲しい。



※このレポートは「online magazine fantasista 2002CLUB」に掲載されたものです。
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