topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 福岡通信 02/09/22 (日) <前へ次へindexへ>

 混戦を制すのはどこだ? 〜第17回九州大学サッカーリーグ


 文/中倉一志
 去る8月20日、九州大学サッカーリーグが開幕した。今年で17回目(前身の九州大学サッカーから数えて33回目)を迎えるリーグ戦のキャッチフレーズは「世界への躍進」。10月27日までの約2ヶ月間に渡って1部10校、2部8校が熱戦を繰り広げる。全国的に見れば、決してトップレベルといえるリーグではないが、近年では、黒部(福岡大−京都)、坪井(福岡大−浦和)、太田(福岡大−福岡)、有村(福教大−大分)、森田(福教大−鳥栖)、戸田(福教大−湘南)らのJリーガーを輩出しており、毎年、確実にレベルアップを果たしている。

 過去の九州の大学サッカー界は福岡大学(以下、福大)を中心に動いてきた。32回戦った秋のリーグ戦で16回の優勝、春の大学サッカー選手権では26回中19回優勝という成績が示すように、その強さは圧倒的だ。しかし、ここ数年、他の大学のレベルアップが顕著で、それが九州大学サッカーリーグ全体のレベルアップにつながっている。昨年のリーグ戦は福大が制したが、2位の九州産業大学(以下、九産大)は勝ち星で福大を1つ上回り、3位から6位までのチームは全て5勝を挙げ、福大との勝ち星の差は1つでしかなかった。

 今年の春に行なわれた九州大学サッカー選手権では準々決勝で九産大が福大を破り、天皇杯福岡県予選では第一経済大学(以下、一経大)が同じく準々決勝で福大を退けた。そして、8月27日に行われた九州大学リーグ第2節では、接戦の末、日本文理大(以下、文理大)が福大を2−1で下した。これらの結果が示すように、各大学間のレベルは更に拮抗してきており、今年の秋のリーグ戦は、例年にない大接戦になることが予想されている。

 優勝争いに名を連ねるのは、昨年のリーグ戦上位6校。筆頭は福岡教育大学(以下、福教大)で、今年は春の選手権に続き、天皇杯福岡県予選でも優勝を果たし好調を維持している。それに続くのが福大と鹿屋体育大(鹿体大)。そして、九産大、一経大、文理大が横一線で追いかける。しかし、前述の通り、その実力差は紙一重で、どのチームにも等しく優勝のチャンスがあるといった方が正しいだろう。



 さて、リーグ戦第3節が行なわれた9月15日、その熱戦の模様を観戦に博多の森陸上競技場に足を運んだ。第1試合に登場したのは初優勝を狙う一経大と、昨年度に1部リーグ昇格を果たした沖縄国際大学(以下、沖国大)。前年度の成績は3位と7位。しかも、2試合を終えて無得点5失点の沖国大にとって、一経大はまったく歯が立たない相手と思われた。しかし蓋を開けて見ると、立ち上がりは沖国大の健闘が光る試合となった。

 沖国大のシステムは4−5−1。1トップの新崎の下に吉直が控え、その後に2人のOHとダブルボランチが構える。ロングボールを蹴ることは滅多になく、低い位置からでもボールをつないでビルドアップを図るのが持ち味だ。攻撃の中心は吉直。ここへボールをいれて起点を作ると、両サイドのMFとボランチの座安がポジションチェンジを繰り返してボールを運ぶ。そしてチャンスには吉直が1.5列目から飛び出してゴールを狙う。

 対する一経大は縦へのスピードが特徴のチーム。中盤では手間をかけず、徹底して相手DFの裏側にボールを出し、そこへFW高田が飛び出すのが攻撃パターンだ。組織的な攻撃という観点から見れば沖国大には劣るものの、出足の速さと縦へのスピードでこれをカバーしている。24分にはFW田尻がDFを振り切って作ったチャンスを、最後は高田が決めて先制した。しかし、試合のペースを掴むまでには至らず互角の試合を強いられた。

 しかし、後半に入るとペースは一経大のものになる。しつこく前に出てくるスピードと、中盤での出足の早さに沖国大が対応できなくなったためだ。そして後は一方的な一経大のペース。終わってみれば4−0のスコアで一経大が順当に勝利をものにした。沖国大の求めるサッカーの質は高く、前半だけなら十分互角に戦っていたのだが、45分間だけしか自分たちのサッカーが出来ないのが、このスコアに表れた。90分間戦えるフィジカルと精神力。これを備えれば沖国大は面白い存在と言える。もっとも、それが一番難しいのだが・・・。



 続く第2試合は福大と長崎大の対戦。長崎大の昨年度のリーグ戦の成績は9位と振るわず、福大の優位は動かないものと見られたが、第2試合でも、実力的には下位の長崎大が大健闘を見せた。試合は福大がボールの支配率で圧倒的に上回る展開。しかし、肝心のポストにボールが入らず、サイドから攻撃を仕掛けてもフィニッシュのボールに精度を欠きチャンスらしいチャンスを作れないままに時間が経過していく。

 そんな福大に対し、長崎大は淡々と、そして実直なまでに中盤でボールを追いかけて堅い守りを披露する。そしてボールを奪うと反対サイドへ大きくサイドチェンジ、そこから縦へ突破してアーリークロスを入れるというパターンでチャンスを作る。相手の攻撃を堅実に抑え、ボールを大きく左右に府って攻めるというパターンに福大はてこずっている様子が見える。そして43分、MF拝崎が中盤から右サイドへクロスボールを送ると、それを受けた稲田がそのまま縦へ突破。最後はGKとの1対1を冷静に決めて先制点を奪った。

 ボール支配率では福大、一見すると多くの時間を長崎陣内で費やすという試合展開だったが、内容は長崎大の狙い通り。先制点もこれ以上ないいい時間帯で生まれた。その狙い通りの展開に、「もしかするとビッグキリングか」と思われたが、そこは福大。後半に入るとしっかりと修正をしてきた。後半開始から先発FW2人を下げて、田代、高橋の2人を前線に投入。この2人の働きが、試合を全く別のものにしてしまった。

 前線で質の高い動きを見せる2人のFWにボールを集める福大。ボールが高い位置でキープ出来るようになったことで攻撃に迫力が生まれた。そして、長崎大の3バックの両側に広がるスペースを徹底的についていく。そのスペースで起点を作ってDFを引き付けると、そこから再び反対サイドへボールを展開。この動きに長崎大がついていけなくなり、DFのバランスが崩れた。いたるところにフリーの選手が生まれる福大は、後はゴールを重ねるだけ。53分に同点に追いつくと、あっという間に4点を奪って長崎大を一蹴した。

 第2試合も、第1試合同様、前半が終わった時点では両チームの差はなく互角の勝負に見えたのだが、長崎大も沖国大同様45分間だけしか自分たちのサッカーができなかった。そして、悪い流れを選手交代と戦術の徹底で変えた福大と、自分たちのサッカーができなくなったときに修正の手をもたない長崎大の差が、後半になって顕著に表れた試合だった。長崎大も前半はいいサッカーをしていた。しかし、サッカーは「90分間戦ってナンボ」のスポーツ。そういう意味では、両チームの間にはスコア通りの差が存在した。



 第3節を終えての順位は下記の通り。九産大、鹿体大、福教大が全勝を守り、この3チームに勝ち点3差で福大、一経大、文理大が続く。7位以下の4チームは全敗で、しかも大量失点を喫していること等、序盤戦を終えた段階で、既に上位チームと下位チームの実力差が浮き彫りになった。これから上位チーム同士の対戦がはじまるが、この中盤の3試合の結果次第では、ある程度優勝争いが絞られることになる。しかし、どこかが抜け出すことは考えにくく、下位チーム相手に大量点を重ねることも必要になってくるだろう。

 ところで、この日の博多の森陸上競技場のスタンドはさびしい以外の何ものでもなかった。第1試合が始まる直前まで、スタンドにいたのは試合をする大学のサッカー部員だけ。キックオフ直前には、サッカー部員以外の観客もちらほらと集まってきたが、そのほとんどは選手の家族らしい人たちばかり。純粋な観客は数十人もいなかったのではないか。比較的観客が集まる福大の試合も似たようなものだった。もちろん、取材は私1人だけだった。

 ある特定のスポーツを除き、大学スポーツは、どんな種目も似たり寄ったりなのだろう。高校生のような純粋というイメージはないし(決して大学が純粋ではないとは思わないが)、プロと比較すれば実力差は明らか。ともすれば中途半端に思われがちな状況が観客を惹き付けないのかもしれない。アマチュアであるのだから観客数など問題ではないとも思うが、それにしても、もう少し多くの人たちに見てもらいたいと思うのは私だけだろうか。九州大学サッカーリーグの日程は下記の通り。興味を持った方は、是非、覗いてみて欲しい。



第17回九州大学サッカーリーグ日程表(第4節以降)は、こちらから



※このレポートは「online magazine fantasista 2002CLUB」に掲載されたものです。
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送