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 福岡通信 02/09/27 (金) <前へ次へindexへ>

 前へ!前へ!九産大が見せた勝利への執念。 〜第17回九州大学サッカーリーグ第4節


 文/中倉一志
 九州大学サッカーリーグの第4節が、9月21、22、23日に九州各地で行なわれた。初日の21日には、ともに初優勝を狙う日本文理大(以下、文理大)と第一経済大(以下、一経大)が対戦。上位チーム同士の対戦は前半を0−0で折り返したが、後半開始直後の49分に樋口が挙げた1点を守りきった文理大が勝利を挙げた。敗れた一経大は、文理大、福教大と上位チームとの対戦で2敗を喫したばかりか、さらに上位チームとの対戦を3つも残しており、早くも1敗も出来ない状況に追い込まれた。

 また、21日の対戦では、ちょっとした番狂わせ(?)も起こっている。鹿屋体育大(以下、鹿体大)と宮崎産業経営大(宮産経大)の対戦で、宮産経大が引き分けるという健闘を見せたのだ。試合は予想通り、鹿体大が28分に大久保の先制点でリードを奪ったが、宮産経大は37分に山下のゴールで追いつき、そのまま引き分けに持ち込んだ。宮産経大は今年から1部リーグに昇格したばかりのチーム。ここまで2得点12失点で3連敗と元気がなかったが、実力上位の鹿体大と堂々と渡り合った。

 翌22日には、福岡大(以下、福大)が沖縄国際大(以下、沖国大)と対戦。この試合では3年生MF小井手が大活躍を見せた。まず開始早々の6分に先制ゴールを挙げると、21分、30分にもゴールを奪って前半だけでハットトリックを達成。これで試合を決めてしまった。続く36分にも奈良崎のゴールで4点のリードを奪った福大は、沖国大の反撃を38分の1点(オウンゴール)だけに抑えて難なく沖国大を下した。福大は第6節から最終節まで上位チームとの対戦が続くが、それに備えて着々と勝ち点を伸ばしている。

 さて、第4節の注目のカードは最終日の23日、博多の森陸上競技場に併設されている補助競技場で行われた。対戦したのは九州産業大(以下、九産大)と福岡教育大(以下、福教大)。両チームは、今年の福岡県サッカー選手権大会(天皇杯予選)決勝で顔を合わせ、1−0で福教大が勝利を収めているが、その実力に差はない。ここまでともに3戦全勝。九産大は10得点1失点、福教大は9得点2失点と好調を維持している。今後の戦いを有利に進めるためにも、決して負けられない一戦だ。



 まず先手を取ったのは福教大だった。開始直後の3分、ペナルティエリアのすぐ外、右側の位置で福教大がFKのチャンスを得た。キッカーはMF河上。狙い済まして左足を振りぬくと、5人の壁を超えたボールは右ポストにあたって鋭くゴールマウスの中へはね返った。しかし、余りにも早い得点が幸いしたのか、九産大は慌てない。残り時間はまだ十分にある。そして、両チームとも持ち味を発揮した互角の展開で試合は進んでいく。

 両チームの戦い方は非常に対照的だ。福教大は全体をコンパクトに保ってショートパスを駆使して中盤をつないでくるチーム。この日は大前と日高をダブルボランチ気味に置いていたが、この2人が積極的に押し上げてパスを供給し、前線では盛田が構え、2トップのコンビを組む木下がサイドへ流れて起点を作る。そして両サイドからは河上と江藤が積極的にオーバーラップをかけて攻撃に厚みを加えている。個人技も高く、洗練された印象を与えてくれるチームだ。

 一方の九産大は豊富な運動量を武器に縦に速いサッカーを展開する。ショートパスをつなごうとする福教大の中盤に激しくプレッシャーをかけ、奪ったボールは手間をかけずに両サイドのスペースか、相手DFの裏へ送り込む。そこへ両サイドのMFが走りこんでサイドを突破するか、DFの裏へ飛び出すFWがゴールへ向かって最短距離で走りこむ。奪ってからゴール前までは2、3本のパスでたどり着いてしまう。とにかく縦に向かう意識の強いチームだ。

 そんな展開の中、最初にペースを握ったのは福教大だった。立ち上がりは九産大の激しいプレッシャーにてこずっていた素振りも見せていたが、15分を過ぎた辺りからは巧みなショートパスがつながるようになり、ピッチの両幅を広く使った攻撃で九産大のプレスをかいくぐり始めた。ボールに的を絞りきれない九産大は守勢に立たされる。たまにロングボールを放り込んでスピードで勝負をかけるが、その攻撃は単調な印象を拭い去れなかった。



 しかし26分、九産大はワンチャンスをものにして同点に追いついた。ボールを奪った九産大は一気に左のスペースへボールを供給。そこから更にゴール前中央に素早くボールを入れる。そしてゴール中央でヒールパスを出したところへ、萩原が目にも止まらないスピードで飛び込んで右足を合わせた。一瞬の隙をついた、あっという間の同点弾。そして、この1点が試合の流れを変えた。それまで高い位置を保っていた福教大が次第に下がり始めたのだ。

 得点こそ開始早々のFKによる1点だけだったが、試合をコントロールしていたのは福教大であったことは間違いなかった。フィニッシュまで持ち込むことは出来なかったが、福教大は明らかに余裕すら感じさせていた。しかし、しつこく、しつこくスペースへ放り込んで、跳ね返されても、跳ね返されても前へ出てくる九産大の攻撃の前に、ジリジリと下がり始めたのだ。それまで高い集中力でラインを高く保っていたが、ゴールを割られたという事実が弱気にさせたのかもしれない。

 その傾向は後半に入っても変わらなかった。最終ラインが下がることはラインが間延びすることを意味する。加えて、立ち上がりの激しい攻防で体力も消耗してくる時間帯だ。やがて、福教大の選手同士の距離が広がり始める。こうなってしまっては、得意のショートパスの交換もままならない。前半、洗練されたサッカーを見せていた福教大の姿はピッチの上にはなかった。そして、出来たスペースを使って、九産大が持ち味であるスペースを使うサッカーを面白いように展開し始めた。

 もはや試合の流れは九産大の支配下にあった。中でも、先制点を挙げた萩原が大活躍。再三左サイドを突破しては福教大のDFを切り裂いてチャンスを作り出した。九産大の逆転ゴールが生まれるのは時間の問題だった。そして70分、その萩原が蹴った左からのCKに桑名が二アで合わせて、遂に九産大がリードを奪う。完全に運動量が落ちてしまった福教大は、ロングボールを放り込んでゴールを目指したが、九産大のゴールを脅かすことができなかった。



 どちらにも勝機はあった。特に前半途中まで試合をコントロールしていた福教大に追加点が生まれていれば、試合は全く別なものになっていただろう。やはり、決めるべきときに決めなければ、こういう結果が待っているというべきか。敢えて福教大の課題を挙げれば、中盤での守備が思うように機能していなかったということ。ボランチからのパスの配給と攻撃参加は見事であったが、それと比較すると、守備面で物足りなさが残ったのも事実だった。

 一方の九産大の疲れを知らぬ運動量も、また見事だった。そして、徹底してスペースにボールを送りつづけ、そこへスピードを生かして飛び込みつづけた姿勢が試合の流れを奪い返した。前半は歯が立たないのではないかと思われるほど福教大に試合をコントロールされていた時間帯もあったのだが、ひるまずに自分たちのサッカーを追求しつづけた結果の勝利だったといえるだろう。上位チームとの対戦は、この日が初めての九産大は、まだ4試合も上位チームとの対戦を残しているが、この勝利で勢いがついたことは間違いない。

 さて、第4節が終了した時点で4戦全勝の九産大が首位。2位には3勝1分の鹿体大が続き、それを勝ち点9で福大、福教大、文理大が追う。戦前の予想通り、リーグ戦は混沌とした様相を呈している。折り返し地点となる第5節からは、上位チーム同士の対戦が本格化することになるが、一進一退の激しいプレーが展開されることだけは間違いない。時節の注目カードは鹿体大vs.福教大と、九産大vs.文理大の2試合。お近くの方は、是非、観戦することホお勧めしたい。

 対戦カードの関係では、上位チームとの試合消化数が多く、終盤は下位チームとの戦いが中心になる文理大が有利な点も見逃せない。次節の九産大で勝ち点3を奪うことが出来れば、一気に優勝候補の最右翼に踊り出る可能性もある。しかし、いずれにせよ、どこかのチームがひとり勝ちする可能性は低く、優勝の決定は最終節の試合の結果に左右されることになる公算が高い。残り試合は後5試合。熱く激しい戦いはまだまだ続く。


順位表(第4節終了時点)と、5節以降のスケジュール



※このレポートは「online magazine fantasista 2002CLUB」に掲載されたものです。
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