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 福岡通信 02/10/26 (土) <前へ次へindexへ>

 大混戦の九州大学リーグ。栄冠はどこに?


 文/中倉一志
 いよいよ大詰めを迎えた九州大学サッカーリーグ。しかし、リーグチャンピオンの行方は依然として混沌としている。6強のうち、第一経済大(以下、一経大)は3敗を喫し優勝争いから脱落したが、その他の5チームは戦前の予想通り、激しいサバイバル合戦を繰り広げている。第7節を終えて首位を走るのは福岡大(以下、福大)と九州産業大学(以下、九産大)。鹿屋体育大学(以下、鹿体大)が勝ち点1差で、日本文理大(以下、文理大)と、福岡教育大学(以下、福教大)が勝ち点3差で続き、どのチームにも優勝の可能性が残されている。



 さて迎えた第8節1日目、首位の九産大は一経大と対戦した。九産大は中盤での激しいプレッシングから一気に仕掛けるカウンターが持ち味。落ち着いたポストプレーを見せる高橋と、中盤を自由に動き回ってゲームを作る萩原が攻撃の中心だ。対する一経大は、両サイドへ大きく開くMFへロングボールをフィード、そこから縦へ突破してクロスボールを放り込む。

 先制点は12分、九産大に生まれた。左からのクロスボールをFW高橋が頭で落とすと、MF中島が右足を一閃、見事なミドルシュートがゴールネットを揺らした。そして、両サイドへロングボールをフィードする以外に攻め手を持たない一経大に対し、しっかりと守ってカウンター攻撃を仕掛けるという定石通りの戦いを展開する。しかし32分、一経大DF中尾のアーリークロスがピンポイントでFWの高田へ。これを高田が豪快なボレーシュートを放ち一経大は同点に追いついた。

 前半を1−1の同点で折り返したこの試合、しかし流れは九産大が握っていた。ともに縦へのスピードが持ち味の似たもの同士だが、ボールのつなぎ、攻撃のバリエーションでは明らかに九産大が上。攻撃パターンの少ない一経大は攻めあぐねが続いていた。ところが48分、ゴール前の混戦からDF高原が押し込んで一経大はリードを奪うと、更に69分、右サイドから谷本が放ったFKを二アに飛び込んだ桑原が見事に合わせて3点目をゲット。試合を決めたかに見えた。

 しかし、ここから九産大の猛攻撃が始まる。最初のうちは、前がかりになる九産大に対してカウンター攻撃で抵抗していた一経大も、ジリジリとラインが下がっていく。やがて、九産大が一方的に攻め込むようになる。そして81分、必死で守る一経大のゴールを井出田が破って1点差。更にロスタイムに突入してから2分後、寺戸がオーバーヘッド気味にゴール前へ送ったボールを、攻めあがっていたDF高畑が押し込んで遂に同点。そして試合終了のホイッスルがなり、九産大はギリギリのところで勝ち点1を拾った。



 この日の第2試合には九産大と首位に並ぶ福大が登場。目の前で九産大が引き分けただけに、最終節を前に2位以下を引き離すチャンスが巡ってきた。しかし、対戦相手は強敵福教大。福教大は既に2敗を喫しているものの、この試合に勝てば再び優勝のチャンスが巡ってくる。両チームの実力差はなく、福大にとっては嫌な相手だ。互いに負けることは許されないこの試合、立ち上がりは慎重なゲーム運びで進んでいく。

 福大のフォーメーションは4−4−2。ただし、田代を1トップ気味に置き、もうひとりのFW高橋が左サイドに張っている。ゲームを作るのは2列目中央に構える小井出、右サイドのMFの奈良崎が2列目から鋭い飛び出しを見せてゴールを狙う。そして、先制点は22分、その奈良崎の飛び出しから生まれた。後方からのロングフィードにタイミングよく飛び出した奈良崎がペナルティエリアの右側深くまで切れ込んでループボールを折り返す。そのボールはGKの頭上を越え、中央へつめてきた田代が頭で押し込んだ。

 対する福教大は高い個人技を生かした中盤でのパス回しから両サイドへ展開するのが得意のパターン。2トップとMFの4人で作る攻撃は洗練されたイメージを与えてくれる。ただし、この試合では中盤でボールを持つものの、両サイドのスペースを福大に徹底して消され、中々チャンスを掴むことが出来なかった。互いに失点を喫したくないという意識が高く、試合が守備的なこともあって、その華麗な攻撃が影を潜めてしまっていた。

 しかし29分、河上が送った左サイドからのアーリークロスを木下がピタリと足元へとラップ。見事なボールコントロールから素早く振りぬいた右足がゴールを捉えた。同点後も互いに慎重なゲーム運びは変わらず、試合は1−1のまま時間が経過。残り時間10分を切り引き分けかと思われた。しかし、引き分けでは優勝の可能性がなくなる福教大が82分、再び木下が逆転ゴールをゲット。強豪福大との大一番を制して優勝戦線に踏みとどまった。



 翌2日目には鹿体大が登場。第6節の福大との対戦を0−1で落としたが、今大会では最も安定しているチームだ。しかし、実力的に差があると思われた宮崎産業大学との対戦を引き分けたことで優勝レースから抜け出せていない。ある意味では、この引き分けがリーグ戦の優勝争いを混沌とさせているといってもいい。しかし、実力は折紙つき。この日も長崎大を寄せ付けず、着実に勝ち点3を重ねて勝ち点19で首位に立った。

 鹿体大のフォーメーションは4−4−2。1トップ気味の百瀬の周りを徐が衛星のように動き回ってシュートを放つ。基本的な攻撃パターンは、1トップにボールを当てて徐が飛び出すか、そこから両サイドへ展開して攻め上がるというもの。パス回し、テクニック、スピードと、どれもレベルは高い。対戦相手の長崎大は、前半45分だけなら鋭いプレスで上位陣相手に互角の戦いをしてきたが、その長崎大のプレスを難なくかわして攻撃を組み立てている。

 とにかくボールがよく動く。22分に挙げた先制点も、必死に追いかける長崎大をボールを動かして右に左に振り回し、DFに穴が空いたところを確実に決めたものだった。続く25分に安藤が直接FKを決めると後はゴールラッシュ。実力通り6点を奪って勝ち点3を奪った。実力的に差があるチームとの試合だったが、決して集中力を欠かさずに、しっかりとボールを動かすのが印象的だった。決定機に徐が再三シュートを外していたのが気になるが、最終節にはしっかりと調整してくることだろう。

 サバイバルレースを繰り広げる5チームのうち、この日最も苦戦したのが文理大だった。相手はここまで2勝の鹿児島国際大学(以下、鹿国大)。総得点は僅かに5しか挙げていない。しかし、その鹿国大に苦しめられた。29分、鹿国大に先制点を許すと、34分、44分に松園がゴールを決めて逆転したものの、46分、48分に立て続けに失点して再びリードを奪われる苦しい展開。しかし、82分に寺田のゴールを追いつくと、終了間際の84分に松園がハットトリックとなるゴールを決めて辛くも逃げ切った。冷や汗ものの勝利だったが、最終節に優勝の望みをつないだ。



 第8節を終えて、首位は勝ち点19で鹿体大と九産大。それを勝ち点1差で福大、福教大、文理大が追う。最終節では福教大と文理大、福大と九産大の直接対決が残されており、さらに九州大学リーグでは、勝ち点が並んだ場合、当事者間同士の勝ち点が多い方を上位とするというレギュレーションがあるため、全てのチームに優勝の可能性が残された。自力優勝の道が残されているのは鹿体大のみ。他の4チームは勝っても他の結果待ちということになる。

 どこが勝つのか全く分からなくなった今年の九州大学サッカーリーグ。比較的有利な立場にたったのは鹿体大だろう。最終節の相手は一経大だが、勝ち点13の一経大は最終節の結果を待たずに6位が確定しており、インカレ出場の望みも破れ、モチベーション的にはそれほど高くはない。また、多彩な攻撃を持つ鹿体大に対し、一経大の攻撃パターンは少なく、実力的にも鹿体大が一歩リードしていることは間違いない。

 一方、かなり厳しい状況に追い込まれたのが福大。最終戦に勝利しても、鹿体大が敗れ、文理大と福教大が引き分けない限り優勝の可能性がない。文理大と福教大の試合は26日に行なわれるが、この2チームは勝てば優勝の可能性もあるかわりに、敗れればインカレ出場枠を獲得できない危険性もある。互いに勝つしかない試合は激しい戦いになることが予想され、引き分けという結果は余り現実的ではない。

 いずれにせよ、白熱した試合が予想される最終節。ご近所の方には是非、観戦されることをお勧めしたい。「大学サッカーか」などというなかれ。皆さんが想像している以上に九州大学サッカーのレベルは高く、楽しめることは間違いない。


第8節終了時の順位表と最終節の組み合わせはこちらから



※このレポートは「online magazine fantasista 2002CLUB」に掲載されたものです。
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