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 福岡通信 02/11/01 (金) <前へ次へindexへ>

 激戦を制したのは鹿屋体育大学。5年ぶり7回目の優勝。 〜第17回九州大学サッカーリーグ


 文/中倉一志
 約2ヶ月間に渡って開催された九州大学サッカーリーグも、いよいよ最終節を迎えた。先週のコラムでもお知らせしたように、今大会は開幕前の予想通り大接戦が繰り広げられ、勝ち点1差の間に5チームがひしめき合うという大混戦。どのチームも優勝の可能性を残しており否が応でも気合が入る。しかしその一方で、既に4位以内が確定している鹿屋体育大学(以下、鹿体大)と九州産業大学(以下、九産大)以外は、敗れれば優勝どころかインカレ出場権さえ失ってしまう。天国と地獄とは、まさにこのことだ。



 さて、最終節第1日目、まずは福岡教育大学(以下、福教大)と日本文理大学(以下、文理大)が対戦した。立ち上がり、攻勢に出たのは文理大。大一番での先制点は試合の流れを大きく左右するもの、一気呵成に攻め立てて主導権を握るつもりのようだ。対する福教大は慌てずにしっかりと守りを固めている。そして、いつものように木下にボールを預けてからサイドへ展開。カウンター気味の攻撃でゴールを目指す。

 押しつ押されつ主導権争いが続く20分、先制点が福教大に生まれた。ゴール前の混戦から大前が右足を一閃。そのボールがゴールネットを揺らしたのだ。そして、このゴールを機に福教大が一気にペースを握った。ショートパスをつないで中へ中へと入ってくる文理大を素早いプレスで潰すと、得意のサイド攻撃から決定的なチャンスを何度も作り出す。いつもは守備にやや難点を見せる中盤だが、この日のバランスは抜群。前半は文理大に2本しかシュートを許さなかった。

 この両チーム、足元の巧みな技術と、ショートパスをつないで組み立てるという意味では似たもの同士。しかし、ボールの動く範囲に大きな差があった。文理大は執拗に中央へ向かってアタックを仕掛け、両サイドへは全くといっていいほどボールが出て行かない。対する福教大の得意とするのはサイドアタック。ボールが両サイドへ大きく広がる。この差が試合の流れを福教大のものにした。自ら中へ入ってプレスの餌食にあう文理大と、プレスをかわしてサイドを駆け上がる福教大。福教大がペースを握ったのは当然の流れだった。

 さらに福教大では、1年生ながら前線でボールの起点を作る木下の動きが、この日も目を引いた。巧みなポジション取り、スペースを見つけてスルスルと入り込むタイミング、確実なポストプレー、その存在が福教大の攻撃に大きく貢献していた。そして78分、その木下がDFと競り合いながらボールを蹴り出すと、前へ出ていたGKの頭上を越えてそのままゴールイン。これで勝負は決まった。「相手がうまかった。早いブレスにてこずってパスが回せなかった」とは文理大の郡部長。文理大初優勝の夢は来シーズンへと持ち越された。



 翌2日目の第1試合、唯一自力優勝の可能性を持つ鹿体大が博多の森球技場に姿を現した。対戦相手は第一経済大学(以下、一経大)。縦へのスピードが持ち味のチームだが、攻撃のバリエーションに物足りなさが残ることや、既に6位が確定していることもあって、鹿体大にとっては、それほど難しい相手とは思えなかった。しかし、立ち上がりにペースを握ったのは一経大。優勝を意識したのか、どこかピリッとしない鹿体大は押し込まれる時間帯が続く。

 中盤を省略して大きく開く両サイドへボールを供給する一経大。その出所を抑えようと鹿体大はプレスに行くのだが、その鼻先で一経大にボールを振られ思うようにボールが奪えない。出足の早さも一経大のほうが鋭いようだ。そして一経大は、鹿体大の中盤をひきつけておいて、右サイドに開く桑原にロングボールを集める。鋭いドリブルで右サイドを駆け上がる桑原。鹿体大はこの桑原を中々止められなかった。

 しかし12分、鹿体大はショートコーナーから安藤が上げたクロスボールを西村がヘッドで合わせてゴールを奪うと、いつものリズムを取り戻す。スペースへボールを送ると、更に空いたスペースに他の選手が飛び出してボールをつなぐ。ミドルレンジのパスをダイレクトで強く確実につなぎ、ボールがよく動くサッカーが蘇った。そしてボランチを務める田中にボールが集まるようになると、田中が前後左右にボールを配給。ペースは完全に鹿体大のものに成った。

 それでも一経大は粘りを見せた。後半に入ると前に出ようという気持ちを前面に押し出してボールを追う。その出足に押された鹿体大は、とにかく縦へ出てくる一経大に対し、自らも縦へ突進するリズムに巻き込まれた。試合は一進一退の攻防を繰り返す。しかし85分、一経大DFのクリアボールが目の前にいた田中の足元へ。そのままドリブルで前進した田中はGKとの1対1から見事なループシュートを決めて一経大に引導を渡す。そして2分間のロスタイムを終えて試合終了のホイッスル。鹿体大が5シーズンぶりの優勝を決めた瞬間だった。



 今シーズンの最終試合となった第2試合では福岡大学(以下、福大)と九産大が対戦。既に優勝は決まってしまったが、福大にとっては何が何でも負けられない大切な試合だった。敗れると勝ち点18の文理大と並ぶことになるのだが、直接対決で文理大に敗れているため5位が確定、インカレ出場権を失うからだ。しかし、こういう大切な試合を確実に勝つのは、やはり伝統の力だろうか。10分に小井手のゴールで先制点を奪うと、44分には川田が追加点。そして九産大の攻撃を0点に抑えて3位の座を確保した。

 さて、そのほかのチームは、最終節を迎えて勝ち点6の鹿児島国際大学(以下、鹿国大)が7位。以下、宮崎産業経済大学(以下、宮産経大)が勝ち点4、沖縄国際大学(以下、沖国大)が勝ち点3、そしてまだ1勝が遠い長崎大学と続く。既に鹿国大の1部残留と、長崎大の2部降格が決まっているが、沖国大と宮産経大にとっては残留のかかる大一番。こちらも優勝争い同様、互いに気合の入る最後の試合。沖国大は鹿国大と、宮産経大は長崎大と、それぞれ最終戦を戦った。

 結果は、沖国大がオウンゴールで得た1点を守りきって勝ち点を6に伸ばしたのに対し、宮産経大は長崎大に0−2で敗れて勝ち点は4のまま。残念ながら宮産経大は1部で1シーズンを過ごしただけで2部降格が決まった。第7節では圧倒的に不利と思われた鹿体大戦を1−1で引き分け貴重な勝ち点を挙げるという検討も見せたのだが、残念な結果に終わってしまった。そして、2部からは九州共立大学(以下、九共大)と鹿児島大学の昇格が決まった。九共大は1年で、鹿児島大は5シーズン振りの1部復帰になる。



 九州大学サッカーを観戦するようになってから今年で4シーズン目。初めて観戦したときは、チーム関係者以外にほとんど観客がいないスタンドに驚き、決してレベルが高いとは言えない状況に残念な想いを抱いたものだが、この4年間で、そのレベルは順調に底上げがされているようだ。4年前も福岡教育大学、九州産業大学、福岡大学の3チームが最終節まで優勝の可能性を残すという接戦だったように記憶しているが、同じ接戦でも内容は今シーズンの方が明らかに上だった。

 全体的な底上げがされた原因は、かつてリーグ戦で6連覇を果たした鹿体大が復活を遂げたことと、ブラジル人指導者による質の高い指導と恵まれた環境を生かして着々と実力をつけてきた文理大の存在が大きいことは明らか。ライバルチームが増え、その結果、厳しい戦いが増えたことがレベルの向上につながっている。しかし、その一方で、福大の全盛期のように、他を圧倒するチームの存在がなくなったことも確かだ。

 その結果、九州大学サッカー界は全体のレベルは上がったが、全国大会では勝てなくなっている。4年前、インカレで福岡大学が決勝戦に進出し、総理大臣杯では福教大がベスト4に進出したのを最後に全国大会ではこれといった成績を納められていない。個々の選手を見れば、全日本選抜に選ばれたり、Jリーグでも活躍する選手を輩出するようになっているのだが、チーム力の向上につながっていないのが現状だ。

 そんな九州大学サッカー界が、もう1つ上のレベルへ抜け出すためにはやはり厳しい環境の中での戦いを増やすことが急務だろう。その1つの方法として試合数を増やすために2年前から1部リーグを10チームにしたのだが、現状では上位6チームと、その他のチームとのレベルが違いすぎて大きな効果は出ていない。今後、1部リーグ参加チームの見直しを含めた、春夏のリーグ戦の開催や、ホーム&アウェイ方式の導入等によって、強豪チーム同士の対戦数を増加させることが必要だろう。そして、そんな中から、黒部や坪井のようにJリーグで活躍する選手が出てくることを期待したいものだ


最終結果と表彰選手はこちら



※このレポートは「online magazine fantasista 2002CLUB」に掲載されたものです。
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