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 福岡通信 02/11/15 (金) <前へ次へindexへ>

 激突!ベスト4。全国大会への切符は誰の手に?
 第81回全国高校サッカー選手権大会 福岡大会準決勝

 文/中倉一志
 サッカーを愛する者なら誰もが憧れる国立霞ヶ丘競技場。ワールドカップを迎えて幾つもの近代的なスタジアムが作られ、欧州のスタジアムと比べても見劣りしないサッカー専用スタジアムができても、威厳という点においては国立競技場にはかなわない。観客席の前にはトラックが広がり、近代設備には乏しい。それでもなお多くのプレイヤーが国立競技場に憧れるのは、日本サッカー界の数々の名勝負を見守り続けてきた伝統に他ならない。

 その国立競技場の青い芝でプレーすることを夢見て、全国各地で第81回全国高校サッカー選手権の予選が行われている。全国大会の切符を手に入れられるのは各都道府県代表の48校、さらに国立競技場の芝生を踏めるのは僅か5チームでしかない。そのわずかな権利を手にする厳しい戦いもいよいよ佳境。10月14日には室蘭大谷(北海道・3年ぶり26回目)が全国大会への一番乗りを果たし、その後続々と代表校が決定。11月17日には48校がすべて顔を揃えることになる。

 第一次予選が7月23日に開幕した福岡県でも、およそ3ヵ月半をかけて、いよいよ大会はクライマックスを迎えている。福岡県大会への参加校は142校。そのうち、一次予選を免除されている東福岡、東海大五、福岡第一高校、築陽学園のシード校を除いた138校が12のブロックに分かれてトーナメント戦を行い、各ブロックの優勝校とシード校で福岡県代表の座をかけて争う。そして9日に行われた準決勝には東福岡、豊国学園、東海大五、福岡第一高校の4校が勝ち残った。



 準決勝の第1試合は東福岡と豊国学園の対戦。小郡陸上競技場で11:00にキックオフされた。東福岡は4−5−1のシステム。中盤はボランチを1枚おいてトップ下は2人、左右のMFはサイドラインに大きく開いて、いわゆるウイング的な役割を担っている。東福岡は伝統的にトップ下に優れたゲームメーカーを擁し、そこからの繰り出される巧みな配給と、両サイドを一直線に駆け抜けて折り返すクロスボールを武器とするチームだが、その伝統は今年も継承されているようだ。

 対する豊国学園は一次予選から準決勝に勝ち進んできた唯一のチーム。システムは東福岡と同じ4−5−1。配置も東福岡と変わらない。違いといえば、東福岡がトップ下に2人を並べているのに対し、豊国学園はトップ下の2人が縦の関係にある点ぐらいだろう。ただ、東福岡の両サイドが高い位置から仕掛けてくるのに対し、豊国学園はこれを止めるので精一杯。両サイドは低い位置まで押し下げられ、効果的な攻撃参加が見られなかった。

 同じシステム、同じ配置で戦えば、対峙する個々の選手同士の力量の差がそのまま試合に現れる。そして、試合は立ち上がりから東福岡のペースで進んでいく。攻撃の主体は左サイド。ボールを奪うと、必ずといっていいほど左サイドに展開して、しつこく、しつこくサイド突破を狙う。例年は中盤での洗練されたパスワークから相手を崩していくのだが、今年は中盤で手をかけずにシンプルにサイドへボールを運んでいるようだ。トップ下に卓越した選手がいないせいかもしれない。

 そんな攻撃が実を結んだのが37分、豊国学園が攻めあがった裏のスペースをうまく利用して左サイドからのクロスボールを金子選手が鮮やかに決めた。ここまでよく守っていた豊国学園だったが、この先制点で東福岡は完全にペースをつかんだ。後半に入ってやや前へ出てきた豊国学園に押し込まれることもなく、後半の12分、35分に着実に追加点を挙げて試合を決めると、ロスタイムには何本もボールをつないで豊国学園の守備組織を完全に崩して4点目をゲット。順当に決勝戦進出を果たした。



 さて、準決勝の第2試合では福岡第一と東海大五が対戦。両者一歩も引かない激しいプレーを展開した。ともにスクエアー型の中盤を構成するオーソドックスなスタイルで戦う両チームだが、戦い方には大きな差があった。東海大五は伝統の「激しく前へ出る」スタイルを押し通す。とにかくボールを持つと最短距離でゴールを目指す。その前へ出る迫力は「ゴリゴリ」という表現がぴったりだ。また、ボールを持つと、まずは個人で突破しようとするのも東海大五の伝統のスタイルだ。

 対する福岡第一は前線のスピードを生かした戦い方が特長のチーム。2トップは常に東海大五の最終ラインの裏側のスペースを狙って飛び出し、右サイドからは竹本選手が鋭い突破を見せる。中盤では手数をかけず、長目のボールを両サイドのスペース、そして最終ラインの裏へどんどん蹴りこんでくる。個々の技術、スピードという点では東海大五を上回っているようだ。九州新人大会ベスト8、インターハイ県予選3位の実績はだてじゃない。

 さて、試合の内容だけなら福岡第一に分があった。それは両チームの戦い方から来るもの。東海大五も福岡第一も中盤ではそれほど手間をかけず、早めに前線にボールを運ぶところまでは同じなのだが、その方法がまるで違っていたからだ。東海大五は、縦へ真っ直ぐに蹴りこむか、前の選手の足元へつないでそのまま縦へ「ゴリゴリ」と進む。両サイドへはほとんどボールを出さず、武器といえば激しいあたりくらいしか見当たらない。

 しかし、福岡第一は同じロングボールでも縦へ単純に蹴りこむことはしない。ボール保持者から見て必ずクロス方向のスペースか、最終ラインの裏側を狙う。しかも両サイドを使おうとする意識が強く、必ずサイドへボールを預けている。そして、縦が詰まればクロス方向へ大きく振って反対サイドから攻撃を組み立てなおす。ただ蹴っているように見えても、ただの蹴って走るサッカーではない。1人で打開できる山野選手の存在も大きい。



 立ち上がり、福岡第一は東海大五の激しいあたりに戸惑いを見せていたものの、やがて慣れてくると、スペースを有効に使った攻撃で主導権を握り決定機を何度も演出した。足りないものがあるとすれば、それはゴールという結果だけ。しかし、それにしてもいずれゴールが生まれるという予感は十分にあった。しかし、東海大五が再び激しく前へ出るサッカーで、力ずくで主導権を奪い返す。ここからは試合は完全にシーソーゲーム。東海大五は福岡第一の技術と戦術を激しい闘志で押さえ込んだ。サッカーとは分からないものだ。

 特筆すべきは、やはり東海大五の気迫だろう。失礼を覚悟で言えば、試合内容は明らかに福岡第一が上なのだ。どの攻撃パターンひとつとっても東海大五が相手を上回るところはない。しかし、そんなことはものともしない東海大五イレブンの気迫は怖くなるほど。いまどき根性論を持ち出す気はさらさらないが、気持ちひとつでここまで対等に戦えるのかと驚かされた。しかし、福岡第一の集中力も見事。そんな東海大五の気迫に決して押されることはなかった。

 ともにチャンスが交互にやってくる激しい試合は80分では決着がつかずに10分ハーフの延長戦に。そして延長前半の8分、福岡第一のシュートがペナルティエリア内にこぼれたところへ、持田選手が東海大五DFともつれ込むようにして押し込んで待望の先制点を奪う。残り時間は12分、勝負はあったかに思われたが、試合はさらにヒートアップしていく。いつゴールが生まれてもおかしくない決定機が交互に生まれ、その都度必死の守備で跳ね返す両チーム。攻めも攻めたり、守りも守ったり。一時たりとも目が離せない。

 結局、試合はこのまま1−0で福岡第一が競り勝ったのだが、どちらが勝ってもおかしくない試合だった。また激しく攻めあった試合だったが、その裏には堅固な守備があったこともお伝えしたい。特に決定的なピンチをファインセーブを連発してゴールを死守した両GKはすばらしかった。そして、試合を通して最後まで制空権を渡さず、見事なカバーリングでゴール前のピンチをしのいだ福岡第一の最終ラインのバランスは準決勝に残った4チームの中では群を抜いていたように思う。

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 さて、決勝戦では順当に駒を進めてきた東福岡と、激しい試合を競り勝ってきた福岡第一が対戦する。東福岡が勝てば2年連続10回目の、福岡第一が勝てば初出場が決まる。ポイントは東福岡から見て左サイドの攻防になるだろう。このサイドでは東福岡の攻撃を支える池本選手と、福岡第一のサイド攻撃の要である竹本選手が対峙する。ここでどちらが主導権をとるかで試合の流れは大きく変わる。そして、スピードある山野選手を東福岡のDFラインがどうやって止めるか、安定感抜群の福岡第一の最終ラインを東福岡がどう崩すのかもポイントの一つになるだろう。
 注目の決勝戦は11月17日、博多の森球戯場で12:00にキックオフされる。



※このレポートは「online magazine fantasista 2002CLUB」に掲載されたものです。
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