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 福岡通信 03/03/02 (日) <前へ次へindexへ>

 いよいよJリーグ


 文/中倉一志
 早いもので、あと2週間でJリーグディビジョン2の2003年シーズンが始まる。昨年はアビスパのあまりにも不甲斐ない戦い振りを見せられて、スタジアムに通うことさえ辛く感じたことも多かったが、それでも新しいシーズンが始まると聞けば気分は高揚してくる。少しずつではあるがフロント改革が進んでいること、新チームが順調な調整を続けていること等がその理由だが、一番の理由は博多の森でまたサッカーが見られるということ。例えどんなことがあろうと、「サッカーがある」という喜びはなにものにも変え難い。



 それにしても、今年のJ2ほど大混戦が予想されるシーズンは過去になかったのではないか。特にJ1昇格レースはJリーグが始まって以来、最も激しいものになることが予想されている。J1昇格を今シーズンの具体的な目標としているチームは札幌、新潟、大宮、川崎、湘南、広島、福岡の7チーム。そのチームの多さだけでもJリーグ史上最多だが、それぞれのチームとも補強に余念がなく、その力は確実にアップしていることが窺えるからだ。

 ややリードしていると思われるのは広島と札幌、そして川崎か。広島は、久保、藤本が抜けたが、J2で戦うのなら、なおその実力は高い。森崎兄弟らの若い選手たちと、それを支えるベテラン選手とのバランスもいい。そして、柏から移籍してきたサンパイオの存在がチームに大きな変化を加える。ボランチに絶対的な存在を持つことがチームに安定した戦いを約束することは昨年の大分でも実証済みだ。五輪予選のために主力選手が抜ける時期が鍵になるかもしれない。

 札幌は、かつて札幌に所属したウィルを再加入させて巻き返しを図る。昨年は最後に集中力をきらして失点すると言うパターンが目立ったが、得点力が上がれば守備の集中力も上がるもの。昨年の大分のように、守りを固めて少ないチャンスを確実に生かすという戦術を徹底できれば1年での復帰も見えてくる。しかし、チームの力はフロント、職員、スタッフ・選手の総力。問題点を整理してクラブが一丸となって戦う必要があるだろう。

 川崎も不気味な存在だ。昨シーズンの主力であったブラジル選手4人を放出。代わりにバルテス、アウグスト、ジュニーニョを獲得した。その狙いの裏には、高すぎた外国籍選手への依存度を解消し、組織的に戦おうという姿勢が見えてくる。采配に定評がある石崎監督の手腕も注目される。ただし、相手の特徴を消すのが得意なら、自分たちの戦い方で相手をねじ伏せられないのも事実。相手に関係なく自分たちのサッカーを押し通せるかどうかが大きなポイントになるだろう。



 そして、昨年の終盤に失速してJ1昇格を逃した新潟が続く。攻守に渡って文字通りチームの中心選手だった寺川の放出は気になるところだが、得点王のマルクスは健在。元日本代表の山口をはじめ、ベテラン選手の補強はチームに厚みを加えている。石崎監督(川崎F)と並んでJ2で名将と呼ばれる反町監督のこと、昨年以上の力を持ったチームに仕上げてくることは間違いない。昨年の悔しい気持ちをいい教訓にして戦ってくるはずだ。

 これらのチームに大宮、湘南、福岡の3チームが絡む。バルデスを放出し監督も代えた大宮。選手の半数以上を入れ替えた湘南と福岡。この3チームは新しい体制で03年シーズンに挑む。これまでの問題点を解消し、あるいは積み上げたベースをもとにしてレベルアップを図る3チームの力は十分にJ1昇格を狙うだけの力はある。この3チームの課題は、チーム改革の理由と目的を見失わずに戦うということだろう。それさえ明確なら、一気にJ1昇格もありうる。

 もちろん、山形、水戸、甲府、横浜FC、鳥栖も黙ってみてはいないだろう。経営規模や、選手層では7チームにかなわないものの、5シーズン目を迎えるJ2は以前のように上位チームとの間の差は大きくなくなっている。特に互いに4回戦わなければならないJ2は、3順目以降の戦いで下位チームが上位チームを破ることが多くなるのは実証済み。昇格を狙うチームにとっては、プレッシャーのかかる後半戦での戦いは決して楽なものではないはずだ。

 いずれにせよ、J1昇格を狙う7チームの実力は紙一重。44試合の最後の最後まで激しく戦いあうことは間違いない。勝ち抜くポイントは怪我や累積警告で出場停止の選手を出さないことと、連敗をしないこと。また、休むことなく続くスケジュールの中ではチームをシーズン途中で修正している十分な時間はなく、バックアップを勤める選手を含めて、チーム戦術の基礎をきちんと固めてシーズンを迎えられるかどうかも大きな鍵を握るだろう。



 ところで、順調な調整ぶりを見せ、着々とチーム改革が進む福岡だが、もちろん、それなりの課題もある。そのひとつがボランチ。シーズン前からサポーターの間ではボランチに誰を使うのか、それと関連して宮原をどこで使うのかという話題で持ちきりだった。トレーニングでは、原田−篠田、増川−宮原、米田−岩本と、それぞれ相棒を固定してプレーさせることがほとんどだが、原田−篠田、増川−宮原のどちらのコンビを開幕先発で使うかについては、まだ流動的だ。

 安定感という点から言えば原田−篠田。22日に行われたベガルタ仙台とのトレーニングマッチで先発した2人は、前からプレッシャーをかけてくる仙台に対して無難に対処。原田が積極的にボールを捌き、仙台のプレッシャーをかいくぐった。しかし、平均点のプレーを確実にこなす反面、意外性とか展開力という点では物足りなさも残る。よくボールを触っていた原田だったが、パスの出しどころは横や後方への安全なものが多かった。

 展開力、意外性では増川−宮原に分がある。仙台戦の後半に原田に代わって出場した宮原は、58分に縦へ絶妙なパスを送り江口がGKと1対1になる決定的な場面を作り出した。69分からは増川とコンビを組んだが、81分にはボールを奪った増川から宮原→ベンチーニョとつないでゴールを決めた。ただ、後半の立ち上がりは仙台のスピードに守備が機能しなくなる場面もあり、宮原を使う場合には安定感・守備力という点で物足りなさもある。急成長を見せる増川がボランチに定着できるかが大きな鍵になるかもしれない。

 また仙台戦では、守備面で相手のスピードに対処しきれない場面がみられたが、これはDFラインだけではなく全体のコンビネーションの問題。前からのチェイシング、ボランチの守備等が安定すればおのずと解決するだろう。そういう意味では、やはりポイントはボランチにあるといえる。攻撃面で気になるのは久永のプレー振り。自由に動くアレックスに対してバランスをよくとっているが、どこか物足りなさが残る。早くチームにフィットして欲しいものだ。



 しかし、福岡が順調すぎるくらいに調整が進んでいるのは事実。若干の課題を抱えているのは当然のことで、それも予想の範囲を超えるものではない。各ポジションのバックアップメンバーにも目処が立ち、このままけが人さえ出なければ、いいスタートが切れる準備は整ったと言える。あとは本番で自分たちの力をフルに発揮することだけ。そのためには、あくまでも挑戦者であることを忘れてはいけない。謙虚さと自信、それがキーワードだ。

 そして、目先の問題に一喜一憂せずに歩んでいくことが最も大切だ。長年の課題となっていた様々な問題の解決に向けてクラブ改革を行う福岡だが、山ほどある問題を解決し、名実ともにJ1で戦うにふさわしいクラブになることは一朝一夕で成し遂げられることではない。シーズン中に、そういった問題点が顔を出すこともあるだろう。そんな時、問題に正面から向き合って解決していくこと。急がないで地道に歩んでいくこと。それがJ1昇格への近道であることも忘れてはいけない。

 チーム改革を推し進めながら、なおかつJ1昇格争いの中心になること。福岡はかつてない困難な道のりをスタートさせる。その実現のためには、クラブフロント、現場スタッフ、選手だけではなく、メディア、サポーター等々、福岡にかかわる全ての人たちが一丸となって戦わなければならない。戦犯探しや、批判だけの批判は意味がない。自分たちのクラブをどうやって支えていけるのか、問題をどう解決するのかを考えながら戦うシーズンになる。そのスタートまであと2週間。いよいよ、戦いの日々が戻ってくる。



※このレポートは「fantasista online magazine 2002CLUB」に掲載されたものです。
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