topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 福岡通信 03/04/11 (金) <前へ次へindexへ>

 滝川第二が初優勝。王者「国見」を決勝戦で下す。
 第10回FBS杯全国高校サッカーチャンピオン大会

 文/中倉一志・写真/星智徳
 高校サッカー界の春の風物詩「FBS杯高校チャンピオン大会」が、去る4月4日から3日間の日程で行われた。今年で10回目を数えるこの大会は、FBS福岡放送局の開局25周年事業としてスタートしたもの。海外、および国内から強豪校を招待し、九州サッカー界のレベルアップを図ることを目的として開催されている。高校の春休みにあたるこの時期には各地区で招待大会が開催されているが、その中でも最もレベルの高い大会として知られている。

 今年招待された国内チームは、室蘭大谷(北海道)、市立船橋(千葉)、帝京(東京)、桐蔭学園(神奈川)、星陵(石川)、清水商業(静岡)、滝川第二(兵庫)、多々良学園(山口)の8チーム。高校サッカーファンならずとも誰もが知っている強豪が顔をそろえた。迎え撃つ九州勢は、東海第五(福岡)、東福岡(福岡)、国見(長崎)、大津(熊本)。ルーテル学院(熊本)、鵬翔(宮崎)、鹿児島実業(鹿児島)の7チーム。そして韓国からは安東高校を招待した。

 大会は4チーム4パートによる予選リンクが行われ、各パートの上位2チーム、計8チームによるトーナメントで優勝校を決定する。大会の主たる目的が互いのレベルアップを図ることにあるため、準決勝で敗れたチームには3位決定戦が、ベスト4に進出できなかったチームには研修試合が組まれ、各チームとも必ず4試合を戦うことになる。3日間というハードスケジュールを考慮し、試合時間は60分。3位決定戦と決勝戦だけが70分で行われる。

 決勝戦に駒を進めてきたのは、国見高校と滝川第二。国見高校は言わずと知れた全国屈指の強豪校。鹿児島実業とともに第1回大会から連続出場を続けている。しかし、その国見も不思議なことにこの大会での優勝経験はない。昨年のレギュラー5人を擁し初優勝を狙う。対する滝川第二は昨年度の高校サッカー選手権ベスト4の強豪。予選リンクでは国見の前に0−1で敗れたが、その雪辱なるかに注目が集まっている。



 試合は国見のキックオフで始まった。国見のシステムは3−5−2。フィジカルを生かしたオールコートマンマークは、すっかりお馴染み。いつものようにロングボールを早めに前線にあて、後方から素早く押し上げて厚みのある攻撃を展開する。中盤のプレッシングは激しく、相手よりも一歩も、二歩も早い寄せで中盤を支配した。フィジカルの強さは相変わらずで1対1では負けることはないが、勝負どころでは必ず数的優位を保って滝川第二にチャンスを与えない。

 対する滝川第二は4−3−2−1のシステム。ボランチの位置からボールを配ってビルドアップを狙う。しかし、立ち上がりは国見の前に持ち味が生かせない。ボールを持つと素早く寄せられて余裕を持ってプレーできず、パスコースを探して躊躇すれば、あっという間に2〜3人に囲まれる。しかたなくボールを前方のスペースへ蹴りだすだけになってしまっては自分たちの特長が生かせない。試合のペースは早々と国見に握られた。

 試合展開通り、先制点は国見に生まれた。時間は9分。ボランチ中島選手のふわりとした浮き球のパスに反応した兵頭選手がスピードを生かしてDFラインの裏へ飛び出してGKと1対1に。最後はGKの動きを見切ってゴール右隅に流し込んだ。さらに11分、滝川第二がDFラインで国見の突進を食い止めたが、こぼれたボールがオフサイドの位置に残っていた渡邉選手の足元に。ラッキーなチャンスを渡邉選手が確実に決めて国見は早々と2得点を挙げた。

 ここまでの展開から見て試合は一方的な国見のペースになるかと思われた。しかし、14分、ゴール前の混戦から川本選手がゴールを決めて滝川第二が1点を返すと、少しずつ試合の流れが変わり始める。ポイントは滝川第二の選手交代にあった。左SBに山上選手を投入。柏木選手左SBからボランチへ、ボランチの中杉選手を右のOHの位置へシフトすると、山上選手のカバーリングのよさと、柏木選手の配給が滝川第二に落ち着きを取り戻させたのだ。



 リズムの変化は後半開始早々の滝川第二のゴールで決定的になる。時間は37分、中盤でボールを受けた中杉選手が前を向くと、なぜかぽっかりと大きなスペースが広がる。国見はパスコースを消してはいたものの、いつものように襲い掛かるようなプレスをかけるものがいない。このチャンスに中杉選手が右足を一閃。するとドライブのかかったミドルシュートがゴールマウス手前で鋭く落ちてゴールネットを見事に捉えた。GK関選手が反応することさえ出来ないビューティフルゴールだった。

 この1点がもたらしたショックなのか、春先から続く連戦の疲れが出たのか、国見にいつものような元気が見られない。誰の目にも明らかに運動量が落ちた。そして、試合の流れは滝川第二に傾いていく。国見のプレスがゆるくなったことで中盤の自由を得た滝川第二は、ボールを左右に配給する柏木選手と中杉選手。攻撃の核として切れのある動きを見せる新井選手。滝川第二のパスをつないでビルドアップする攻撃が機能し始めた。

 そして48分、滝川第二に決勝戦が生まれた。ボールをつないで左サイドに起点を作った滝川第二は新井選手がドリブルで中に切れ込んでから瀧原選手にパス。滝川選手がボールを受けるや否や素早くシュートを放つと、鋭い弾道を描いたボールがゴールマウスに吸い込まれた。このあとも滝川第二の猛攻は続く。同点を目指す国見はロングボールを返して反撃に移りたいところだが、クリアボールを大きく蹴りだすことが出来ず、追い込まれる展開が続く。

 こんなに動けない国見は珍しい。記者席では高校サッカー関係者から「午前中にどこかで1試合やってきたんじゃないの」などという冗談が飛び出した。しかし、それが冗談に聞こえないほど国見の動きが鈍い。いくら強いといっても同じ高校生。国見にだってこういうときがあるということなのだろう。終盤にはサイド攻撃からゴールを目指したが、余裕の生まれた滝川第二は集中力を切らすことなく危なげなく逃げ切って、FBS杯初優勝を遂げた。



 準決勝では市立船橋を、そして決勝戦では国見と、昨年度の高校選手権の決勝進出チームを破っての優勝に、選手たちもチームスタッフも大喜び。「市立船橋は選手たちにとって特別な思いのあるチーム。市立船橋には選手権の借りを返せて、国見にも今までの分を返せた。これ1回で返せたとは言えないが大きな自信になったんじゃないか」とは小森コーチ。「山上選手を投入して大正解。後に対するカバーリングが良かった」と語った。

「国見以上の頑張りを見せないと勝てない」と選手たちを叱咤激励して送り出した小森コーチ。そしてそれに選手たちが応えた。選手交代が流れを変えたとはいえ、立ち上がりの展開からは一方的に敗れる危険性もあった試合。劣勢に追い込まれながらも集中力を切らさず反撃の機会を狙っていた姿勢がもたらした勝利といえるだろう。中杉選手の同点ゴールは「後半は積極的にシュートを打っていけ」という指示を忠実に守った結果だった。

 高校選手権を終えたあとの新人戦で新チームを立ち上げた各校は、春休みに行われる各フェスティバルでチームの骨格をまとめ、プリンスリーグや練習試合を通じてチームを作り上げていく。最大の目標は全国高校サッカー選手権。その道のりはまだ始まったばかり。市立船橋、国見と全国の強豪校を連破した滝川第二も「自信にはなったけれど、これからどうなっていくか。まだまだ修正点はある」(小森コーチ)と気を引き締める。

 また敗れた国見も、この敗戦をバネにさらに強いチームを作り上げてくることだろう。フィジカルばかりが話題にされることの多い国見だが、ボールを奪うときの身体の入れ方や、ロングフィードのボールの質が高まっていることが随所に見られ、強い国見は、まだまだ強くなる、そんな予感も感じさせてくれた。しかし、そんな国見を破ってこそ高校サッカーのレベルは一段上にいけることも確か。滝川第二が見せたような頑張りを多くの高校が見せてくれることを期待したい。



※このレポートは「fantasista online magazine 2002CLUB」に掲載されたものです。
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送