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 福岡通信 03/07/25 (金) <前へ次へindexへ>

 お楽しみはこれからだ


 文/中倉一志
 年間44試合の長丁場を戦うJリーグ・ディビジョン2。2週間のインターバルをはさんで、いよいよ後半戦が始まった。一気に走り抜けたいチームにとっては長く、立て直しを図りたいチームにとっては短く感じられたであろう14日間。いずれにせよ、今シーズン最後のインターバルを有効に過ごしたチームが最後に笑うことになる。暑い夏場をはさんで22試合を走り抜けるための大事な初戦。各チームにとって開幕戦と同じ重みがある。

 さて、前半戦を5勝5分12敗という散々な成績で終えた福岡にとっては、仕切り直しという意味で開幕戦以上の意味がある試合。ようやく見えてきたチームの形が、果たして本物なのか。上位陣と遜色ない戦いが出来る目処が立ったとされているが、具体的に「勝ち」という結果を収めることが出来るのか。それを証明するためにも何が何でも勝ち点3を奪わなければいけない。内容はもちろん、結果を出してこそ、この試合の意味がある。

 残念ながら、甲府まで取材に出向けなかった私は、鳥栖スタジアムでの取材を終えて、他会場の公式記録を確認しながら結果をチェックする。スコアは0−0。引き分けスタートをまずまずとするか、それとも勝てなかったことを悔やむべきか、非常に微妙なところだ。シュート数だけなら甲府の8本に対して15本。数字の上では押していたようにも思える。翌日の新聞も「内容は相手を上回っていた」と好意的。ネット上の情報も楽観的なものが目立つ。

 しかし、取材活動を通じて染み付いてしまった「自分の目で見ない限り信用できない」というひねくれた根性はいまさら変わらない。本音を言えば、いい試合をしたことを信じたいのだが、心の隅で「そんなにうまく行くはずはない」とささやく自分がいる。複雑な思いでスカパーにチャンネルを合わせる。サッカーの試合は生で見るのと、画面を通して見るのとでは印象が違うことが多いが、まあ参考程度にはなるだろう。取材ノートとストップウォッチを用意して放送開始を待つ。



 どんよりとした画面は、いかにも蒸し暑そうでコンディションの厳しさが分かる。しかし、画面の右隅に映るサポーターの横断幕が心強い。昨年は博多の森でいろいろと物議をかもしたサポーターも、アウェイでの応援は天下一品。人数は少ないが、彼らの応援は必ず福岡イレブンを奮い立たせてくれるはずだ。やがてキックオフを告げるホイッスルが鳴る。福岡の布陣はいつもの4−4−2。宮本の戦線離脱で心配されたSBには川島とアレックスが入っている。

 対する甲府の布陣も4−4−2。しかし、攻め上がるときは左SBの奈須が極端に高い位置へ出てくる。また、小倉はかなり自由に動いて低い位置まで戻ることが多く、その小倉と2トップを組む藤田も実質的にはトップ下の選手。したがって攻めに出るときは3−6−1のような形になることが多い。福岡もベンチーニョが下がってボールを捌くのはいつものパターン。互いに中盤のスペースに選手がひしめき合い、激しくプレスを掛け合う展開が続く。

 どちらかというと試合は甲府のリズムで進んでいく。甲府の狙いは、ワイドに開く奈須と水越を使って両サイドから攻めようというもの。全体のバランスの良さはいつもの通り。ダイレクトパスを多用してゴールを目指す。ただ、決定的なチャンスを奪うには至らない。前線で張る選手がいない甲府は2列目からの飛び出しがポイントになるのだが、暑さのせいか前線へ飛び出してくる選手がいない。まるでMFだけで試合をやっているような展開だ。

 一方、アビスパは守備の面では安定したところを見せるが、厚い甲府の中盤が突破できない。速い寄せに苦労し、どことなくボールがつかない感じが見受けられる。ベンチーニョを中心にMFが縦へ、横へとポジションチェンジをする連携の良さは見せるものの、相手を崩すには至らない。結局前半は互いに1度ずつの決定機を作るだけにとどまり、0−0のままで折り返した。プレスを掛け合い、互いの特徴を消しあうような前半だった。



 後半に入ると試合が動く。甲府の選手の動きが目に見えて落ちたのだ。中盤での自由を得た福岡は、セカンドボールをことごとく奪取。ベンチーニョにボールを預けると、4人のMFがベンチーニョを中心にポジションチェンジを繰り返しながらボールを追い越していく。前線には福島が張り、両サイドからはアレックス、川島が積極的にオーバーラップを仕掛ける。そして58分、宮崎から左サイドへ開く福島へ。福島のシュートはGKにはじかれたが決定的なシーンを作り出した。

 ほぼ一方的に攻め込む福岡に対し、甲府は60分に倉貫に代えて山本を投入して中盤の活性化を図り、66分には水越の代わりにジョルジーニョを入れて前線に起点を作る。この選手交代で甲府はじわじわとペースを奪いにかかる。それとともにさすがに福岡の運動量も落ちてくる。そして、福岡の悪い癖が顔を出す。前半戦で何度も見せたように、肝心なところで集中力を欠くプレーが連発したのだ。

 68分、ジョルジーニョの苦し紛れのクロスはころころと転がるだけだったのだが、緩慢に処理しようとしたところをつめられてピンチを招く。73分には最終ラインの集中力を欠いた動きでジョルジーニョにオフサイドラインを破られ、あわやという場面を作られた。そして終了間際の88分には、なんのプレッシャーもかかっていない場面で後方へのパスをミス。これをさらわれてピンチを招いた。集中力を欠くプレーを続ける福岡は60分以降、甲府に押し込まれる場面が続く。

 いい流れで試合を進めながら、集中を欠くプレーで形勢を逆転される。前半戦で何度も見せられたいつもの悪いパターン。救いだったのは、甲府がゴール前での精度に欠けたこと。3分のロスタイムも甲府に押し込まれっぱなしだったが、最後まで決定力に欠く甲府に救われる形で試合は終わった。福岡にとっては複雑な内容だった。連携のよさも、攻撃のパターンが固まりつつあることも見せたが、集中が90分間続かないという相変わらずの姿も見せた。



 TV画面を見る限りでは、新聞に書かれていたほど好意的な内容ではなかった。甲府を上回る内容を見せた時間帯もあったが、同じように押し込まれる時間帯もあった。内容的には五分というのが正直な感想だった。どちらにも勝機はあったし、また敗れる危険性もあった。互いにゴール前での精度や、工夫のなさが目立った試合。ほんの少しのきっかけがあれば試合は大きく動いたはず。そのきっかけをどうやって掴むかが、これからの課題だ。

 福岡の内容が良くなっているのは確かだ。しかし、結果に結びつけられなければ同じことを繰り返すことになる。勝負どころで集中を欠くというのはいただけないが、それもチャンスの時間帯にゴールという結果を出せないために生まれるもの。自分たちの流れの時間で結果を出せれば、おのずとこの癖は解消されるはずだ。そのためには、もう少し大きなプレーが欲しい。チャンスになればなるほどプレーが細かくなるのでは、チャンスをものには出来ない。

 福岡は次節はアウェイで新潟と対戦する。知将・反町監督の戦略と、相対する11人のプレーヤーに加え、オレンジ色に染まるスタジアムをも敵に回して戦う試合は容易ではない。さらに、攻撃の起点となるベンチーニョ、米田とともに全体のバランスを取りながら中盤の底から最前線まで動き回る篠田、CBを勤めるセルジオの3人が累積警告のために出場停止。福岡にとっては厳しい条件ばかりが並ぶ。

 しかし、それでも勝って帰って来いと伝えたい。連携が高まったことで、どことやっても互角に戦える手応えはあっても、それは勝ちという結果を伴ってこそ本当に自分たちの力になる。それも、簡単に勝てる相手の勝利ではなく、厳しい戦いの中で勝利でなければならない。その瞬間を待ち続けてサポーターたちは23試合を過ごした。そろそろ、そんな期待にこたえる時期だ。それさえ出来れば上位への浮上の道も見えてくる。さあ、お楽しみはこれからだ。
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